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芸能人の相次ぐ薬物使用による逮捕と映画「真っ白の闇」が語りかける薬物依存症の世界

映画「真っ白の闇」が大阪と横浜で公開中!!

現在全国各地で公開中の衝撃的なタイトルの映画がある。

「真っ白の闇」という映画だ。真っ白いものはもちろん覚醒剤、いわゆるヤクである。

覚醒剤を使用するとどうなってしまうのか、家族はどのようになるのか、そこからどのような人生を歩むのか…。

僕たちが普段知ることが少ない世界のことを見事に表現してくれている。

予約編の動画もご覧いただきたい。

さらに、何が衝撃的かと言えば、この映画は薬物依存症者の監督が自分自身の体験をもとに製作したことだ。

薬物に手を出したら人生が終わりだと思っている人もいないだろうか。

そもそも監督自身が人生が終わりではなく、映画を通じて素晴らしい表現活動もできるということを体現してくれている。

そのことにも勇気づけられる。

映画製作をした監督の内谷正文さんは、自分が薬物依存症者であり、弟も薬物依存症者であることを告白している。

「自分たちが薬物依存症という病気と向き合い、仲間に支えられて回復するなかで、どのようなことを考えてきたのか表現したかった」と内谷監督が2019年3月31日の舞台挨拶(横浜)で語っている。

監督の言葉通りに、映画は主人公が興味本位からヤクに手を出し、いわゆるヤク中に陥っていく経緯やその後の回復についてリアリティをもって映してくれている。

違法薬物は使用したら人間が終わるのではなく、そこから回復への闘いが始まることを意味し、その過程も鮮やかに描き出す。

暗く重たいテーマを扱いながら、希望や展望が映し出される点は、監督の回復経験、刑罰よりも前向きな治療やケアの重要性を背景としたものだからだろう。

これ以上、映画の感想を語ることは野暮なので、関心がある方はぜひ映画館で鑑賞いただきたい。

今月5日までは横浜のシネマ ジャック&ベティや大阪のシネマセブンで公開中だ。

監督や俳優とのトークイベントも企画されており、薬物依存症の問題をクリアに理解できる絶好の機会といえる。

回復中の当事者が映画を通じて、社会に訴えた衝撃的な映画をぜひ多くの方に鑑賞いただきたい。

多くの人たちの薬物依存症者への理解が薬物依存症の回復を早める

映画「真っ白の闇」の内谷正文監督は、僕への映画招待状のなかで「一人でも多くの人に観て頂き、少しでも薬物依存症の現実を知って頂きたい 病気であり、刑罰だけでなく、キチンとした治療が必要であることも広がって欲しい!!と思っております!!」(原文ママ)と書いてくださっている。

内谷正文監督からの招待状の一部

これには同感であり、僕たちも相談支援現場で薬物依存症者への理解が当事者の回復に不可欠だと思っている。

薬物依存症は刑罰や制裁ではなく、治療すべき対象であり、その治療やケアをしてくれる病院や関係機関・団体につながることが第一歩である。

薬物使用を告白して相談することが難しい社会状況では、早期に治療やケアには結び付きにくい。

あるいは厳罰を科されたり、偏見や差別に苦しめられるのでは、告白することをためらう当事者、家族も多いだろう。

また、薬物使用や逮捕、服役の過去があれば、どれだけ回復していても、働く場所を含めて差別に苦しみ、社会での居場所を失ってしまうだろう。薬物依存症の回復を早めるためには、社会における居場所や働く場所、承認が必要だ。

そのためにも、社会における当事者理解や受け入れが大切なのである。

僕自身、薬物依存症に苦しんだ過去を持つ人々への支援やダルクを含む関係者と多くの交流を持ってきた。

今では回復して母親になっている当事者、親子関係を修復している当事者、会社経営をしている当事者、福祉専門職として相談対応する当事者などもいる。

彼らが回復のなかで重要性を語るのは必ず、薬物に手を出さないでいられる居場所の必要性であった。

薬物に手を出さないでいることを支える仲間や社会の居場所なのである。それが再犯防止にもつながってくる。

一方で、日本では相変わらず、芸能人が覚醒剤や違法薬物の使用を理由に逮捕される事件、居場所を喪失させる事件が起きている。

そのたびに、僕たちは「とんでもないことだ」「信じていたのに裏切られた」「どうしてそんなことをしてしまうのか」と暗い気持ちになる。

そして、違法薬物に手を出した芸能人や有名人を極悪人のように叩き、過去の仕事や業績も消滅させるような状態が当たり前のようになっている。

それらの言動は居場所や働く場所を奪い、再起のための道のりをより険しく厳しいものにする。

例えば、少し前にも本人が出演した映画やドラマが配信中止になったり、代役を置くような決定がされることも珍しくない。

テレビなどワイドショーでも、芸能人の生活やその家族について興味本位で取り上げられることがある。

家族は関係ないにもかかわらず、あたかも薬物依存症者を作り出したのは、家族関係だというような取り上げ方もある。

家族も自分たちを責めたり、自分たちで支えなければならないと思い込む共依存の関係性に陥っていく構造が作り出されている。

要するに、既存メディアでは多くの場合、薬物依存症に対して、適正な報道が少なかった。むしろ、薬物依存症者を追い詰めていくような場面ばかりが強調されている。

そして、ここまで薬物依存症者、いわゆる病者を徹底して排除する光景は異常に思えてならない。

それゆえに、僕たちも薬物依存症者への無理解や非難の感情に溢れてしまっているのではないだろうか。

そのようななか、映画「真っ白の闇」は、覚醒剤から逃れるために毎日を必死に仲間と生きていくドラマである。

当事者目線で現場を知り尽くした監督が表現した世界観は圧巻であり、鑑賞者の既成概念、思い込みを根底から塗り替えてくれることだろう。

ありがたいことに当事者たちは映画を通じて雄弁に語り続けている。

その生活に焦点が当てられ、薬物依存症者の現実を知ることができる貴重な映画資料ともいえる。

そういう意味で、薬物依存症を知るためには映画「真っ白の闇」は必見である。

公開中に映画館へ家族や友人などと足を運んでみてはいかがだろうか。

※Yahoo!ニュースからの転載

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