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みずほFGが巨額減損処理よりも急ぐべきは、合併三行『完全対等』関係からの脱却

みずほFGはメガバンク三行の中で「周回遅れ」の状態

共同通信社

3メガバンクグループの一角みずほフィナンシャルグループ(以下みずほFG)が、2019年3月期の連結純利益について、従来予想の5700億円から800億円に引き下げると発表しました。固定資産の減損損失で約5000億円、有価証券売却損などで約1800億円の損失計上が、その大きな要因となっています。

固定資産減損5000億円の内訳は、店舗統廃合がらみで400億円、残り4600億円の大半は新システム移行絡みのソフトウエアおよびシステムの減損です。

店舗統廃合がらみの減損処理の中身は、銀行業務のデジタル化移行に伴うリアル店舗網の縮小等で、他の2メガバンクグループMUFG(三菱UFJグループ)、SMBC(三井住友グループ)は既に前年度に430億円、250億円を処理済みです。つまり、みずほFGはこの部分に関しては「周回遅れ」での処理というわけなのです。

「周回遅れ」となった要因と思しきは、まず収益面での対2メガ劣後です。昨年2018年3月のグループ決算を最終利益で比べてみると、MUFG9896億円、SMBC7343億円に対して、みずほFGは5765億円。MUFG、SMBCは店舗統廃合の減損処理込みの数字ですから、みずほは決算数字上で2グループに少しでも水を開けられまいと、これを先送りして利益を多く見せたかったのではないかというのは、無理のない推論でしょう。

もうひとつ考えられる要因は、組織としての決断の遅さ。店舗統廃合に関し2メガに比べた方針決定の出遅れです。都銀同士の統合、合併から早20年ほど。現在では、MUFGは旧三菱、SMBCは旧住友が実質的リーダーとして運営を引っ張っています。

一方、真っ先に統合したはずのみずほ銀行は、旧安田財閥の富士銀行と、古くは官業をルーツに持つ第一勧業(以下DKD)、さらに政策金融という特殊な役割の日本興業(以下興銀)という毛色の異なる三行による『完全対等』合併が、どこまでもネックになっているように思われます。

2000年の統合の段階で、銀行界のエリート的存在であった興銀をみずほコーポレート銀行として分離し温存したのが、そもそも間違いでした。2013年になってようやくその齟齬に気がつき、みずほ銀行とコーポレート銀行を統合。同時に証券、信託銀行も含めすべてを持株会社の下に収めて「ワンみずほ」を宣言し、三行たすき掛け人事の廃止も打ち出しました。

しかしそれから6年、表向きたすき掛け人事はなくなったと言いつつ組織内の左右に気を遣いながらの『完全対等』は変わることなく、依然として続く主導権不在があらゆる決断を遅らせ2メガから「周回遅れ」となる原因になっていると言わざるを得ないのです。

合併三行の”完全対等”が生んだ負の遺産

今回4000億円を超える新システム移行絡みの減損の遠因もまた同様です。銀行にとってシステムはある意味サービス提供における心臓部であり、その健全性、柔軟性は円滑に経営統合を進める上での最大のポイントでもあります。MUFGは統合と同時に基幹システムを旧三菱のIBM系に一本化、SMBCも同様に旧住友のNEC系に一本化したのです。

しかし、みずほFGはここでも『完全対等』の優柔不断さで、旧富士のIBM系、旧DKBの富士通系、旧興銀の日立系をすべて温存し、3つのシステムを機械的につなぐという最も非効率かつリスクの高いやり方を選んだのです。結果、2002年、2011年の2度にわたり、大規模なシステム障害を発生させ、金融庁から業務改善命令を受けるという大失態を演じました。

システム障害は利用者に直接影響が及ぶだけにそのイメージダウンは甚だしく、「統合がうまくいっていない銀行」の印象が強く植え付けられるに至り、二度目の大規模障害で行政指導を受けた12年、ようやく新システム構築に向け重い腰を上げました。しかしその開発は困難を極めます。

その理由は、またもやみずほFGを象徴する『完全対等』から旧三行のシステムベンダーが開発を分け合う形となり、開発が複雑の極みに至ったからです。

結果、当初16年完成を予定した新システムは2度の延期発表により「19年度中」に変更され、莫大な開発費が上乗せされました。延々繰り返された9回のオンラインサービス休止を経て、ようやくこの7月に新システム移行の運びとなり移行コストの着地が見えた、今回の処理はそのような状況下での決断なのです。

みずほFGサイドは、今回の5000億円に及ぶ思い切った固定資産償却処理は、あくまで前向きなものであると胸を張っています。当初新システム開発がらみの費用は、800億円づつ5年間での償却を予定したものを今回一括処理し、「反転攻勢への大きな取り組みである(坂井辰史社長)」と位置づけているのです。

確かに、これまでの『完全対等』組織運営のまずさが生んだ負の遺産を、これからの厳しい時代に5年間背負い続けていくのはマイナス以外の何者でもありません。2メガに遅れをとった店舗がらみの減損も含めここで一気に償却処理をするというのは、処理が可能であるという収益環境も含めて大いに評価できると思います。

「負け組メガバンク」回避にみずほFGがすべきこと

BLOGOS編集部

しかし残された課題は、組織運営における『完全対等』からの完全脱却です。2メガに比べて事ごとく遅れをとり、「一人負け」状態になりつつあるみずほFGの現状を打開するのは、他の2メガと同様の旧行『完全対等』からの脱却以外にないからです。新システムの構築でもなお、『完全対等』が足を引っ張ってしまった事実を、みずほFGはどのように受け止めているのでしょうか。

たすき掛け人事は廃止したと言いながらも、傍目に映る姿からは、みずほFGの社長に元興銀、みずほ銀行は会長が元富士、頭取が元DKBという、『完全対等』主義から抜けきれない体質が脈々と根付いていると確信されるところです。

みずほFGが2メガから離された完全な「負け組メガバンク」とならないためには、まずは新システムの安定稼動が最低条件。そして、三行統合から19年を経て統合後入社組が数の上では半数を超えるまでに至った、現在も脈々と息づく組織上部の『完全対等』三行体制下、あと10年で組織完全融合などと悠長なことはとても言っていられない激変の時代に、旧三行のどこが確固たるリーダーシップをとって先に進むのか。今後の決断の遅れは、まさしく命取りになるのです。

時代の主流がITにシフトしようとも、大手金融機関が健全に機能してこそ日本経済の安定成長が見込めるのです。目の瘤が取れる7月の新システム移行の後にみずほFGに何かが起きるに違いない、今はそんな期待感をもって見守りたいと思います。

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