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体調不良訴えるも搬送拒否、入管収容中のクルド人男性「人間として認めて」訴え

「なんのために仕事しているんですか!」

「命守る約束しているでしょ!」

 この叫びは、今月12日夜に東京入国管理局前で撮影された映像の一幕。施設の中に収容されているクルド人男性が体調不良を訴え、家族らが救急車を呼んだのだ。しかし、出てきたのは空のストレッチャー。

 説明を求めて支援者らが救急隊に詰め寄るが、それでも救急車は空のまま立ち去る。「私、15歳からこっちで命かけて仕事してるよ! 税金も払ってる。ちゃんとしてる。暴力も犯罪も何もしていない! なんで俺がいまその言い方で外国人みたいな目の付け方されないとけないのか」と抗議する仲間のクルド人男性。

 およそ3時間後、再び救急車が到着。期待を込めた拍手と指笛が周囲に鳴り響くが、またしても誰も乗せずに引き返して行った。

 体調不良を訴えたのはトルコ出身のクルド人、チョラク・メメットさん38歳。クルド人は、国を持たない世界最大の民族と呼ばれ、トルコ国内で弾圧や差別を受けている。メメットさんも、幼いころからクルド人であることで差別を受けてきた。

 クルド人の独立運動に参加する兄を持つメメットさんは、トルコ警察の監視など身の危険を感じて2004年に日本へ。2年後に妻や子どもも呼び寄せた。日本を選んだのは、トルコからの入国ビザが不要(一部条件あり)で、知り合いのいるクルド人コミュニティーもあるためだという。

 来日して以来、難民申請を4回続けているが、難民認定はされず日本での滞在は認められていない。認められたのは、働くことができないうえ、居住地などが制限される「仮放免」。定期的に入管での延長手続きが必要だ。

 しかし去年1月、仮放免の延長手続きのために入管を訪れた際、家族のうち父親のメメットさんだけが延長を認められず、そのまま施設に収容されたという。

 「(入管に収容されて)1年2カ月が経った。家族がバラバラで大変です。子どもが大変です」と語るのは、妻のヤセミンさん。今月12日の午前9時すぎに夫の面会に訪れたが、入管の職員から「体調が悪く起き上がれないので面会できない」と伝えられたという。

 「面会の部屋で待っていたら担当者か誰かが来て、『いま旦那さんが起き上がれていないみたいで面会できない』って。私ショックで、びっくりした。旦那さんどうなった?どういう状況?」

 1時間半後、面会が許されたが「旦那さん(の両脇を職員)2人が支えて面会室に入ってきた。『奥さん助けて、奥さん助けて…私死にそう。入管の人、信じてない』と言っていた」と、息苦しさや頭痛、手足のしびれを訴えたというメメットさん。その姿を見て、ヤセミンさんも病院での診察を入管職員に訴えた。しかし、入管職員は「嘱託の医師が来るので、その時に診察する」「薬を出した」と説明。ヤセミンさんは自宅に戻るが、収容されているメメットさんから電話が入る。

 「なんで帰る?私死にそうだ。なんで(入管の説明を)信じた?助けて」

 早く病院に連れて行って欲しいとメメットさんに言われ、急いで入管に引き返したヤセミンさん。弁護士らに相談したうえで、家族らは救急車を呼んだ。しかし、2回にわたって呼んだ救急車がメメットさんを搬送することはなかった。

 その後もメメットさんの容体は改善されず、翌日ようやく病院に運ばれ「脱水症状」と診断。MRIなどの検査を受けた。メメットさんによれば、体調不良を訴えてからおよそ30時間後のことだったという。

 AbemaTV『けやきヒルズ』は15日、メメットさん了承のもと面会に行くことができた。面会した辻歩リポーターによれば、メメットさんは車いすに乗っていたといい「とにかく辛そうで憔悴しきっていて、少し休憩をはさみながら我々と話すのが精いっぱいといった状況」だったという。

 「救急車の人とは全然会っていない」「看護師が(12日の)22時から24時までいて、薬を飲ませて帰った」と、家族が呼んだ救急隊員は自分に会うことなく帰ったと主張するメメットさん。「日本のこのやり方、世界に知らせてほしい。日本の難民の扱い、これを見てどう思いますか?人権がない。我々、人間として認めていない。お願いします。私たちには国がない。そのお願いだけしたい。人間倒れて、30時間後に病院に連れて行く。世界のどこにある」と訴えた。

 メメットさんの代理人を務める大橋毅弁護士は、入管の医療体制の問題点について次のように指摘する。

 「容体が悪くても、医者に会わせるのでなくて、単独室に入れて職員が容態を観察するというような扱いをしている。その職員が医療的な判断はできないし、してはいけないはず。それはよくないと思う」

 これに対し入管側は「職員が常に収容者の健康状態の把握に努めている。嘱託医師の診療を受けた結果、病院での診療の必要があると判断すれば、病院へ連れて行く」とコメント。また、2度に渡り家族らが呼んだ救急車については、事実を認めたうえで「この救急車というのは、被収容者の病状について正確に把握していない、医師でもない第三者が憶測に基づいて要請したもので、当局が要請したものではありません。入管として救急隊員と会わせないという判断をした。判断は適切であったと承知しています」としている。

 今なお、入管の施設に収容されているメメットさん。子どもたちは父の帰りを待ち続け、手紙を書き続けているという。妻のヤセミンさんは「日本は好き。日本の生活とか住んでいるのも好き。私が本当に望んでいるのはみんなで一緒に住むこと。日本は難民条約に加入していないほうがいい。難民条約にサインしているだけで(実際は)何もやっていない」と訴えた。

 日本は国連難民条約に1981年に加入した“難民受け入れ国”。しかし、2018年に難民として認定されたのは、申請者1万493人に対し42人。長期間収容される申請者の増加や人権侵害の疑いが指摘されるケース、入管施設での死亡事案は2007年以降で13件あったという。

 慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「難民の受け入れは想定できないことが多い。日本人の多くの真面目に仕事をする人たちの性質として、いいことはしたいけど想定できないことの幅を潰したい、全てマニュアル化してから取り組みたいという考えがあると思う。ただマニュアルは完成しない分野だと思っていて、個別の判断ができる社会になっていかないといけない。それが国際競争力だと思う」と指摘。

 また、個別の判断で悪い結果になっても攻めすぎないことが重要だとし、今回のメメットさんの事例については「ルールは完璧ではないけれどまあまあの結果になるもので、今回のケースも60点ぐらいの対応だったと思う。医療的判断ができない人が呼んだ救急車に乗せるべきかというと、マニュアル通りに対応したほうがいい気もするが、望ましい柔軟な判断はできていなかったと思う」と見解。さらに、「『日本の難民の扱い』という問いに対して、手続き的にOKだから人間的にOKとなるかは疑問。それこそ対峙する相手によってケースは異なり、答えが出ない生々しい問題とどう向き合っていくかが問われている」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

【映像】東京入国管理局前で救急隊に詰め寄る支援者ら(17:05~)

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