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「君は何をしてくれるの?」~ポジティブな中卒。彼女ら彼らを「クライエント」から解き放とう!(田中俊英)

■ポジティブな中卒

最近朝日新聞にもとりあげられた(あなたの話、しっかり聞かせて)、大阪で「中学での居場所カフェ」を推し進めるNPO主催による「ポジティブな中卒~中学生サバイバー」というフォーラムが昨日開催され、僕も参加してきた。

現在、高校の中退者数は年間5万人程度、そのなかでも大阪は東京ほかを抑えて首位を走る。大阪で「高校内居場所カフェ」が行政予算のもと10数校が展開できているのも、このデータが背景にある。

高校内居場所カフェは神奈川県の10数校も含め全国で30校程度にゆっくりと拡大していくなど、一定の支持を得始めている。

が、高校中退の「予防支援」をさらに推し進めるものとして、上の記事にもあるような中学での居場所(不登校児限定のものではない)支援が、中学段階での子どもたちの危機をリアルタイムに受け止めるものになりうるとして期待されているようだ。

イベントの後半ではフロアの人々も参加してのディスカッションとなり、さまざまな意見が飛び交った。

僕が不思議だったのは、「中学生」や「居場所」を考える集まりだったはずなのに、そこには盛んに「地域」という言葉が飛び交ったことだ。

■高校生との違い

地域は子どもたちにどう関わるか、地域は何ができるか、地域コミュニティの再生とはなにか、そうした「地域」を含んだ言葉たちが、「中学生」や「子どもたち」ということばとなんら違和感なく連結され、展開された。

これは「高校生サバイバー」というフォーラムを5年間主催してきた僕から見ても不思議なことだった(であうことをつづけること~「高校生サバイバー」最終回、高校内居場所カフェの真髄)。

高校生サバイバーでは、「文化の伝達」や「個別ソーシャルワーク」や「虐待の発見」といった言葉がガンガン飛び交うが、なかなか「地域」という言葉は出てこない。高校は広域対象のシステムだからといってしまえばその通りなのだが、「ハイティーン」になると子ども時代のラストであり、それぞれの仕方で社会に飛び出て行こうとしていることも大きいと思う。

高校生は、「地域」よりも、「文化」に代表されるようなより広い概念、「社会」に開いた概念のほうが親和性があるようだ。

対して、まだあどけなさが残る中学生には、家庭や地域といったより身近な資源、ドメスティックな領域が似合っている。そうしたある種の閉ざされた空間のなかで子どもたちをどう守り、どう支援していくか。そして、「中卒」をしたらしたらで、それをどうポジティブに捉え直していくか。

■「F級」大学も「中卒」も変わらない

僕は司会をしていて途中で気づいたことがあった。

それは、中学生が演者や参加者にとってあくまで「支援を受ける人=クライエント」であり続けている、ということだった。地域として、私達は彼女ら彼らに何ができるか、地域にその力はあるのか。

年齢がミドルティーンだからだろうか、あくまで中学生はサービスの受け手であり、被支援者であり、クライエントなのだ。そこには、彼女ら彼らから主体的に「何かをする」という発想が抜け落ちている気がした。

だから僕は、終盤になってこう聞いてみた。

「クライエントとしての中学生ではなく、別の視点はないでしょうか。その別の視点こそが、ポジティブな中卒という言葉につながるような気がするんです」と。

そうすると、参加者からこんな言葉が飛び出た。

「私は、子どもたちに、

『君は何をしてくれるの?』

と聞くようにしています。私の活動はとても私だけでできるものではなく、子どもたちの手助けもあって成り立っている。だから私はいつも、『あなたは私に何をしてくれるの?』と聞いています」

受動性から能動性へ。近代的「自己」から、共同主観的「自己と他者」へ。哲学においては古くからある問題系が、なんと昨日のフォーラムで突然出現し、その発想が実は、子どもたちをより「自由」にし、中卒をポジティブに捉え直すものだった。

現実として、「『F級』大学(大学進学率を下げよう!~「Fの悲劇」をなくすために)」も「中卒」も、社会人になると非正規雇用として働くのが今世紀の若者のあり方だから、実は学歴社会はだいぶ昔に崩壊している。

また、不登校体験をして中卒ではあるが社会人として長らく働くが、資格や昇進に必要になったとして定時制高校や通信制高校を利用する人々を僕はこれまでフツーに見てきた。

そしてそれらの高校ではフツーに通うと単位はとれ、40才手前で高卒をゲットできたりする生き方も珍しくはない。現在は、必要になった時にとればいいもの、それが「学歴」だったりする。

■子どもたちに、より「自由」を

つまりは、学歴社会を維持し続けているのは、この社会を構成する中心メンバーである多くの大人たち自身なのだ。

また、不登校の子どもや中退者のハイティーンを、不登校や中退者としていつまでも位置づけているのも、大人たち、つまりはこの社会そのものなのだ、とも言える。

「君は何をしてくれるの?」

このひとことは、子どもたちを「クライエント」から引きずり出し、より自由にさせる。主体的な個とさせ、周辺の他者たちと相互コミュニケーションを図り、時には「ボランティア」や「アルバイト」として社会活動に関わる機会さえそこには待ち受けている。

そのことばは子どもたちを、決して、受動的存在に押し止めない。

この発想が、我々の社会の根っこにもっと広がれば、おそらく「中退」はポジティブになる。10代なかばでできることは、大人が想像するよりも実はたくさんたくさん、ある(たとえば日本の世界的スポーツ選手は10代が中心)。

ポジティブな中卒とは、崩壊した学歴社会への直視であり、10代との意義あるコミュニケーションであり、若者の「自由」と直結することばだった。

子どもたちに、より「自由」を。

※Yahoo!ニュースからの転載

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