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杜撰な応急措置で歯周病進行、顎が溶け治療費300万円の例も

応急措置のせいで治療費300万円?

 歯が少しグラグラする──そんな歯周病の症状が放置されると、深刻な事態を招く。

【図解】歯周病治療費の費用

 X線画像に写っていたのは、実に奇妙なカットだった。本来、下顎の骨に埋まっているはずの歯根が、完全に宙に浮いている。一体なぜ? 歯周病治療の指導者である、弘岡秀明氏(スウェーデン・デンタルセンター院長)は、その答えを明かしてくれた。

「この患者さんは、他院で歯の揺れを止めてほしいと伝えたところ、揺れる歯を全部連結ブリッジのように接着されたそうです。数年間、この状態で放置されたため、歯周病がどんどん進行してしまい、下顎の骨が溶けて、画像では宙に浮いて見えるようになりました」

 下顎の歯は最終的に抜歯となり、7本をインプラント、歯槽骨再生療法(エムドゲイン)などの治療を弘岡氏が行なった。治療費の総額は、約300万円前後だったという。

 軽度の歯周病で治療を開始していれば、保険診療の範囲内でも十分に完治した可能性がある。

 歯石やプラークを取り除き、歯根部分を滑らかにする「SRP」や歯肉を開いて歯石を取る「フラップ手術」などは、いずれも保険適用だ。抜歯が必要になってしまった場合との金額差は大きい。

◆治療途中で治療費が払えなくなる

 歯周病治療の隠れたトラブルが、治療費をめぐる問題だ。インプラント手術であれば、治療前に見積書の提示が可能だが、歯周病の場合は治療経過によって大きく変わってくるので、見積もりが難しい。

 保険診療の範囲であれば、一定の目処が立つが、抜歯して自由診療のインプラントなどを行なうとなると、大きな金額になる。

 中には、費用を払えずに、途中で治療を断念するケースもあるという。トラブルを回避するには、治療方針が変更になる際、必ず費用を確認していくことだろう。

◆治療に通っても、症状が良くならない

 慢性の歯周病治療は、とてもシンプルだ。バイオフィルム(*注)の除去が基本となる。にもかかわらず、治りづらいというイメージが強い。

【*注/歯の表面に強固に付着しているネバネバした虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊。プラークとも呼ぶ】

 これは歯周病治療を巡る大きな誤解が関係していると、弘岡氏は指摘する。

「歯肉の下側のバイオフィルムは、プロでなければ除去できないので、歯科医と歯科衛生士の責任です。一方、歯肉から上の部分は、患者さん自身が歯磨きで努力する必要があります。これを患者だけでなく、歯科医も理解していません」

 定期的にクリーニングを受けてさえすれば、歯周病を予防できる、という勘違いをしている患者も少なくないという。

 歯周病の治療は、患者と、歯科医・歯科衛生士が正しい理解をもとに進める共同作業なのだ。それを理解しないと“通い続けても治らず、悪化した”というトラブルになる。

●レポート/ジャーナリスト・岩澤倫彦(『やってはいけない歯科治療』著者)

※週刊ポスト2019年4月5日号

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