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古いものにこだわり続けた日本ー野口悠紀雄『平成はなぜ失敗したのか』を読む

先日、BS朝日の日曜夕刻の人気番組『クロスファイア』を見ていると、評論家の田原総一朗氏が早稲田大ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏らと出演。

野口さんの『平成はなぜ失敗したのか』を推奨していた。経済の観点から、平成を振り返ったもので、「失われた30年の分析」というサブタイトルに惹かれて読んでみた。失われた10年が20年になり、そして30年になったという見立てに残念ながら共感するだけに、それを最初から順次追うよりも、ではどうすればいいのかという最終章「日本が将来に向かってなすべきこと」から読んでみた。一読、いささか落胆せざるを得なかった

▼今後の日本経済の抱える問題として
❶労働力不足への対処
❷人口高齢化による社会保障支出増大への対処
❸中国の成長などの世界経済の構造変化への対処
❹AI(人工知能)などの新しい技術への対処ー
という4点を挙げた上で、既得権の打破が重要な課題だとしている。

これって、いかにも誰でも指摘する平凡な処方箋に見えるのではないか。だが、ちょっと待て。早飲み込みで思い込みの激しい私らしい勝手な解釈は思い止まろう、と考え直して、最初から読み始めた。いやはや、実に面白い。というか、この本、野口さんの個人的回顧録風、平成経済分析になっていて、ステーキのコース料理に、最初だけでなくその都度野菜が付け合わせになってるように中々食べやすいのである

▼平成が失敗した最大の理由は、世界の国々が次々と経済構造を変える試みをしているのに、日本はいつまで経っても、ものつくり、即ち、製造業に依拠することにこだわり続けたことにあるとする。

リーマンショック前の数年間の日本企業の業績回復を「長い不況からの回復」「新しい成長の始まり」「これからは日本の時代だ」と捉えたものが一気に崩れた。「アメリカの住宅価格バブルの崩壊によって、日本の製造業が壊滅的な影響を受けた」ことへの認識が極めて弱かったとの指摘は重い。要するに、日本人の多くが「輸出立国モデルが崩壊した」ことに無頓着で、結局は「日本経済の実体は古いままだった」ことでよしとしてきたというのである

▼ショックは他にも数多ある。例えば、アメリカでの日本人の留学生が少ないとの指摘だ。中国、韓国からの留学生がぐんぐん増える一方、日本人の留学生は減る一方、統計データの仕分けでは日本は今や「その他」に分類されているという。また、古いビジネスモデルに固執し続けた日本の企業実態についても。世界で「水平分業型」工場への移行が進んでいる頃に、「垂直統合型」のそれにこだわり続けた、と。

具体的例として、パナソニック大赤字の原因として姫路の新工場が挙げられているのは、我が地元だけに身につまされる。また、たまたま、地域おこしの実体験で25日から二日間徳島行きでご一緒した、神戸山手大学のY講師の弁が気にかかる。ヴェトナム人留学生と日本人学生を比較すると、圧倒的に前者が元気で全てに意欲的。日本人大学生は皆大人しくて内気だという。数だけでなく質的側面でも日本人の劣化が際立つ、と。こう見ると、やはり、将来展望は暗くならざるを得ない。さてどうするか。(2019-3-27)

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