近年、カトリックの聖職者による未成年者に対する性的虐待が世界中で相次いで発覚している。
カトリック教会は、ローマ教皇を首長に仰ぎ、全世界に12億人以上の信徒を有する最大の教派である。私はハンセン病制圧活動で3回、教皇に接見したことがある。
現在のフランシスコ教皇はアルゼンチン出身で、バチカンの歴史の中で初めての南米出身の教皇でいらっしゃる。バチカンの改革に積極的に取り組んでおられるようだが、長い伝統と密室主義の厚い壁に阻まれ、難航しているようだ。
その一つに、現在世界中で話題になってきた古くて新しい問題である幼気ない聖歌隊の子どもや信者の子ども達に対する「性的虐待」問題がある。
バチカンは2月4日、遅まきながら聖職者の未成年者への性的虐待をテーマに「世界司教会義議長会議(通称「アンチ性犯罪会議」)を開催したが、具体的な結論はなく、「聖職者の性犯罪予防」と「加害者(犯罪聖職者)への処罰の指針見直し」程度で会議を総括した。
最終文書も作成されず、率直に言って、聖職者にあるまじき「性的虐待」という忌まわしい事件に、世離れしたバチカンの対応に失望・落胆する。犠牲者団体からは、「教皇の演説は空言で失望した」との怒りの声が上がったという。信心深く未来を背負う子どもたちへの陰湿な事件の解決に、バチカンの自浄能力には期待できないことが明白になった。
未成年への性的虐待は、アイルランド教会、ドイツ教会、アメリカ教会、オーストラリア教会、ポーランド教会等々で、発覚した犯罪は数万件といわれるが、その多くは既に時効となっている。
しかし、アメリカ・ワシントン大司教区のテオドール・マカーリック前枢機卿は、性的虐待容疑が実証されたとして教会法で除名処分。フランス・カトリック教会の最高位の枢機卿フィリップ・バルバラン被告は、性的虐待の事実を隠蔽したとして禁固6カ月の判決。オーストラリアでは、バチカンの前最高幹部の一人で枢機卿のジョ−ジ・ペル被告に、未成年者に性的虐待をしたとして禁固6年の判決があったと報じられた。
何故バチカンを中心に、カトリック指導者たちによるこのような大事件に対する批判や真相究明の運動が世界的に拡大しないのか。私には不思議で仕方がない。
(記事の多くは『世界日報』を参考にしました。)