- 2019年03月26日 18:19
名ばかり「CT・MRI大国」ニッポンを救う「遠隔画像診断」「AI」融合の可能性 - フォーサイト編集部
2/2スマホで電子カルテ
現状、エムネスが遠隔画像診断を請け負っているのは医療機関からの依頼のみ。ゆくゆくは患者個人が直接、依頼できるような仕組みにしたいというが、まだ実現していない。
その代わり、北村医師はセンターと同じビルで画像検査専門の「霞クリニック」を運営している。ここでCTやMRIなどの画像検査を受けると、センターの画像診断専門医が見てくれるというわけだ。
霞クリニックでは、すべてのカルテをデジタルデータ化している。いわゆる「電子カルテ」だ。それをクラウド上で保存しているのだが、

「今年2月からクリニックで新しい試みを始めたのです」
と、北村医師がスマートフォンの画面を見せてくれた。何とその電子カルテが端末に表示されている(写真右)。
「患者さんに、(12字削除)検査結果と診断報告書をデータで提供するサービスを始めました。これは私自身が実際に受けた検査の画像と報告書です。グーグルアカウントで管理しているので、スマートフォンでもPCでも、どこからでもアクセスできる。患者さんがこれまでに受けてきた医療記録をすべて一元管理する『PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)構想』というのがありますが、このように検査の結果をデータで保存していれば、過去との比較や経過観察が簡単になる。これはある意味で患者さんの“財産”と言えるでしょう」
誰もが釈然としない思いで診察室を後にした経験があるのではないだろうか。限られた時間の中で症状を伝え、診断を聞き、説明を理解し、それでも残る疑問や不安を解消するのは、ほとんど不可能に近い。
「そんな時、自分の電子カルテがあれば、いつでも検査結果と診断を読み返すことができますし、セカンドオピニオンを受けるに当たっても疑問点が明確になる。近い将来、このようなシステムを導入する医療機関が増えればいいなと思います」
AIの正解率は80~90%
北村医師がPHRの普及とあわせて挑戦していることが、AIの活用である。東京大学発のベンチャー企業「エルピクセル」と協力し、AIに脳動脈瘤を発見させるアルゴリズムの開発を行っている。
「脳動脈瘤は血管のこぶで、通常の血流とは違う膨らみができます。その膨らみを見つけるには、MRI画像をいろいろな角度から見て行く必要がある。そこで、クラウド上に保存されたMRIデータの中から、ここに脳動脈瘤があるというピンポイントなデータを300例ほど厳選し、AIに学習させました。すると、80~90%の確率で脳動脈瘤を発見できるようになった。200枚近くあるMRI画像の中から脳動脈瘤の可能性がある場所を5つまで挙げていいという指示を出すと、この確率で正解するのです」
さらに臨床研究としてAIに補助的なチェックを行わせたところ、驚きの結果が出たという。
「脳MRIの画像を、最初にほかの医師が、次に私が、最後にAIがチェックをして脳動脈瘤を見つけ出すのですが、2人の医師が見つけられなかった脳動脈瘤をAIが見つけたという例が、すでに10例を超えています。私自身、脳動脈瘤を見つける能力は標準以上と自負していたのですが、完全に打ちのめされました。人間の医師には、ふと意識が飛んだり、他のことを考えたりしてしまう瞬間がどうしてもある。常に医師3人でチェックできればいいですが、そもそも放射線診断専門医は足りていないとなると、AIに頼るしかない。今後はより優秀な放射線診断専門医の知見を集め、AIの精度を高めていく予定です」
1万7500円で脳ドック
このAIによる補助的なチェックを導入しているエムネスの提携医療機関に、2017年12月に東京・銀座にオープンした脳ドック専門クリニック「メディカル・チェック・スタジオ」がある。
「早い・安い・正確」が売りで、1回30分以内、1万7500円(税抜き)で医師2人プラスAIの脳ドックが受けられる。
「霞クリニックと同様、検査結果と診断レポートをデータで患者さんにお渡ししていて、予約から検査結果までをスマートフォンで管理できます」
このクリニックでも画像をクラウド上にアップするので、世界中どこからでも医師が診断できる。
「現在、常勤の医師は11名ですが、ご協力いただいている非常勤の医師もあわせれば84名いる。脳神経外科では遠隔画像診断がまだまだ浸透していませんが、放射線診断医に限らず医師不足と言われる中で、このシステムが医師を補う1つの方法になることは確かでしょう。今後は画像が絡まない診療科にもクラウドを活用した遠隔診断を広げていきたいなと思っています」
早期発見・早期治療の未来を拓くか。



