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会計監査人への高額賠償請求で憂鬱になるのは社外役員かもしれない

3月25日の読売新聞朝刊(関西版・社会面)に「東芝監査法人に1兆円請求 105億から増額・・・巨額損失で株主訴訟」なる見出しの記事が掲載されています。個人株主の方が、東芝の不正会計を見抜けなかったとして金融庁から課徴金処分を受けた監査法人に対して、これまで105億円の株主代表訴訟による賠償請求を行っていました。しかし、その後に米国の原子力子会社問題が発覚し、東芝が1兆円以上の損失を計上したことから、原告株主は「東芝の早期公表を促さなかった監査法人も損失の責任あり」として請求額の増額を行ったそうです。

記事で紹介されている上村早大教授のコメントのとおり、会社で発生した損失には多くの要因があり、1兆円の請求額には根拠が乏しいと思います。おそらく、東芝と当該監査法人の間で責任限定契約が締結されていなかったので、このような超高額賠償請求となったものと思います。ただ、(本件とは関係ないかもしれませんが)他の役員が、これを他人事として傍観しているわけにはいかないはずです。仮に数億円といった金額で監査法人の損害賠償責任が認められた場合には、責任限定契約を締結している社外取締役、社外監査役にも火の粉が飛んでくる可能性は否めません。

このブログを立ち上げた2006年当時にも、こちらのエントリーにおきまして、弥永教授の月刊会計監査の座談会記事を引用しながら話題にしましたが、たとえば社外取締役や社外監査役も株主代表訴訟で提訴されて善管注意義務違反(任務懈怠)が認められた場合、高額請求を受けた会計監査人とは会社に対して連帯債務を負うことになります。そして資産を保有している監査法人が高額賠償金を全額支払った場合、他の連帯債務者に対して求償債権を行使することができます。そして監査法人さんからの求償債権の行使に対しては、会社に対する責任限定の抗弁を主張できない、ということになる可能性があります。

私は当時、「そんなバカなことはないだろう。それだったら誰も怖くて社外役員なんか引き受けないのではないか」とブログで述べました。そのような理由で求償権行使に対して、社外役員は(会社に対する責任減免の絶対効を主張して)拒絶できる、とする有力説(たとえば江頭教授)もあるのですが、どうも通説は拒絶できない、ということのようです。とりわけ債権法改正による新しい民法445条が、「連帯債務者のひとりについて免除があった場合に、他の連帯債務者は免除を受けた連帯債務者に対して求償することができる」とされましたので、この民法改正の趣旨からすれば、とりあえず会計監査人と社外役員は不真正連帯債務の関係に立つとして負担相当額の支払いを拒むことはできないということになりそうです。

このあたりは学説上も争いもあると思いますが、いくら責任限定契約を締結していたとしても、自らの責任が認められてしまえば「おそろしいことになる」かもしれず、保険加入と誠実な職務執行を改めて心がける必要があると考えております。

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