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現場主義の憲法改正論議

 去る1月28日に始まった通常国会も2ヶ月を経過した。衆議院憲法審査会も店開きしようとしているが、昨年春自民党としてまとめた改憲案が、未だに審査会で他党に説明できていない。本来は審議促進を目論んでまとめた案だが、残念ながら促進剤とはなっていない。

 私はかつてこの審査会で、与党筆頭幹事を務めていたが、審査会長だった中山太郎先生の薫陶を受けながら「現場主義」に徹し、各党間の自由討議の中から、改憲の共通テーマを拾い上げた。緊急事態条項、環境権をはじめとする新しい権利、そして財政規律条項の3つである。2015年春の国会だった。

 各党参加のもとでいよいよ中身の議論に移ろうかという時、当時与野党が厳しく対立していた平和安全法を巡り、自民党推薦の参考人が「違憲の疑いがある」と陳述する事態が発生した。その後長期にわたり審議がストップしたことは、今も忸怩たる思いであり、反省しきりである。

 しかし憲法改正により、憲法を国民の手に戻すという大仕事への情熱は、今も薄れてはいない。今後の審査会のあり方について、交渉役から離れた立場でとやかく言うべきではないが、敢えて言わせてもらえば、もう一度「現場主義」に戻ってはどうかということだ。

 自民党が苦労して決めた改憲4項目を一旦脇に置いて、各党の考えを虚心坦懐に聞き、新たな共通テーマを探し出すことは可能ではないか。他党とのこれまでの話し合いを踏まえれば、自民案のうち教育無償化と参議院合区解消、さらに現実とは明らかに乖離している79条・89条の修正などは共有できるテーマである。

もう一つの課題は国民投票法のリニューアルである。既に審査会では投票環境改善のための改正公選法を、国民投票法に反映すべく準備しているが、テレビCMの扱いが新たなテーマとして浮上した。私はこれまで、憲法改正に関する国民投票運動は人や政党を選ぶのではなく、基本政策を選ぶのだから原則自由であるべきで、テレビCMについても投票2週間前だけ禁止すればよいと考えていた。

 しかし国民投票というのは、「ブレグジット」を決めたイギリスの例や、政権崩壊に結びついたイタリアの例に見るごとく、時々の世論を鋭く切り取るばかりか、後々の政治を強く拘束する怖さがある。テレビCMが感情に訴えて国民の冷静な判断に影響を与えかねないのであれば、放送事業者やその団体に自主ルールを作らせるか、さもなくば法的規制が必要ではないか。

 いまの憲法審査会は改憲の中身の議論をする環境にはなく、まずは国民投票法改正の議論を丁寧に行い、与野党間の信頼醸成が出来てから、徐々に中身の議論に入っていけばいいのではないか。「急がば回れ」の気持ちが憲法改正の議論には不可欠である。

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