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【読書感想】わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方

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 もし、何らかの理由で批判されることがあっても、「自分は嘘をついたわけではないので、思い込んだ側の責任だ」と言い逃れることができるわけです。

 「わかりやすい言葉」には、こういう罠が仕掛けられていることも多いのです。

 僕もこのときに、小泉さんを支持した人間のひとりなので、全く偉そうなことは言えないんですけどね。

 正直、僕はあの選挙のとき、これまで力を持ってきた、既成勢力が「造反組」として落選していくのをみて、溜飲を下げていたのです。

 「あいつらが権力の座から滑り落ちていくのを見たい」というような気持ちが、自分の足元に落とし穴を掘ることにつながることもある。

 池上さんは、小泉劇場の際も、メディアでこういうことを指摘する人たちはちゃんと存在していたのだ、と指摘しています。

 ところが、あの熱狂のなかで、その指摘を聞く耳を持っていた人は、少なかったのです。

 池上さんは、情報収集のためのツールとして、紙のメディア、とくに「新聞を読むこと」を薦めておられます。

若い人にもっと新聞を読んでほしいと思っている私は、大学で行う授業でも、「ほら、同じニュースでも、新聞によって取り上げ方はいろいろでしょう」と学生たちに実際の紙面を例に説明します。

たとえば、2018年4月にアメリカ、イギリス、フランスが「アサド政権が反政府勢力への攻撃に化学兵器を使用した疑いがある」としてシリアに軍事攻撃を行ったとき、このニュースをどう取り上げたか、各紙の見出しかさまざまなことをうかがうことができました。

「朝日」「毎日」「読売」の三紙が「アメリカがシリアを攻撃」という事実を伝える見出しをつけたのに対し、「産経新聞」は「『攻撃は成功』米英仏、追加攻撃を警告」となっています。つまり「シリア攻撃に成功した」というアメリカの発表そのままの見出しで、アメリカ寄りの姿勢が非常に強く打ち出されたものでした。「他紙では、三ヶ国が発射したミサイルも相当撃ち落されていると書かれていたのに、アメリカの言い分そのままに『成功』と言ってはたしてよいものか」と話すと、「新聞なんて、みんな同じ」と言っていた学生たちも、身を乗り出してきました。

対照的に「東京新聞」は、この三ヶ国の攻撃は国連安全保障理事会の決議がないまま強行されている国際法違反だ、ということを強調する見出しでした。普段から両極端の姿勢をとる両紙の差異が鮮明に表れました。

おもしろいのは「日経新聞」朝刊では、他紙と異なり「攻撃」という言葉を使わずに、これにより「ロシアと対立 新局面」という、一歩引いた見出しになっています。最近の「日経新聞」は、紙の読者がネットやテレビで一報を知っていることを前提に編集しているからです。速報性で勝負できないので、解説で勝負しようとしている姿勢がわかります。これも、新聞を読み比べてはじめてわかることです。

 新聞そのものがあまり読まれなくなっている時代ではあるのですが、新聞にしても、雑誌にしても、ネットでの情報にしても、池上さんの情報収集のベースにあるのは、「何かひとつの価値観に依存せずに、なるべく多角的に物事をみる」ということなのだと感じます。

 ひとつひとつの情報は、中立・公正なものではありえなくても、多くの人の意見を総合すれば、ある程度、全体像がみえてくる、ということなのでしょう。

 あと、「ツイッターをやらないのか」とよく聞かれるそうなのですが、SNSをやる時間があったら、本を読んだり、自分で考えたりする時間に使いたい、と仰っています。

 スマートフォンのおかげで、人は退屈から解放されたけれど、そのおかげで、「自分で考える」時間を失くしてしまっているのです。
 
 これまで池上さんがさまざまな場所で「情報収集法」として語ってきたことを「わかりやすく」まとめた新書です。
 完全に真似することは難しいけれど、「わかりやすい」ものを目の当たりにしたときに「ちょっと待てよ……」と立ち止まって考えてみるきっかけになる本だと思います。

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