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来年お披露目「空飛ぶバイク」開発秘話

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東京に「空飛ぶバイク」をつくっている会社がある。経営者はもともと外資系証券会社でトレーダーをしていたという。スター・ウォーズの世界を実現させようとする男の素顔とは――。

ジャーナリストの田原総一朗氏とA.L.I.TechnologiesCEO兼CTO 小松周平氏

■祖父の影響を受け、スター・ウォーズの世界へ

【田原】小松さんは小さいころから社会貢献をしたいと考えていたそうですね。

【小松】保育園のころ、ある映画を見ました。お金持ちの裕福な子どもが乗った飛行機がアフリカで不時着。その子はアフリカの現状を知り、いかに自分が恵まれていたのかを痛感するというストーリーです。その映画を見て、僕も自分が恵まれているなと。

【田原】ご両親は何をされていたんですか?

【小松】父も母も公務員です。

【田原】宇宙に興味があったそうですね。どなたの影響ですか?

【小松】じつは祖父が戦時中にパイロットでした。祖父は宇宙に憧れを持っていて、その話を聞くうちに僕も宇宙に関心を持つようになっていました。最初はスター・ウォーズの世界みたいに宇宙人っているのかなとか、どんな星があるのかなといった興味でしたが、だんだん宇宙がどうやって誕生したかとか、そもそも自分の存在って何だろうと考えるようになって、すっかりハマりましたね。

【田原】宇宙が好きなのに大学ではエネルギー工学を研究されていたそうですね。なぜエネルギーを?

【小松】研究していたのは宇宙で使うためのエネルギーです。太陽光発電の衛星を打ち上げて、宇宙でつくったエネルギーを無線で送電する研究をしていました。通信ロケットなど宇宙に関するいろいろな研究テーマがありましたが、やるからには新しいことをやろうと思っていました。

【田原】大学時代には、国境なき医師団のボランティアメンバーとしてシドニーに行かれたそうですね。

■エンジェル投資の失敗を糧に、ベンチャーに参画

【小松】はい、そうです。高校時代にも語学留学を兼ねてニュージーランドでボランティアをしたことがあって、大学に入ってからもまたやりたいなと。オーストラリアでは、町をきれいにする活動や、アボリジニーの支援団体の手伝いをしていました。そのとき気づいたのは、何事も自分でやったほうが早いということ。たとえば資金や物品を調達するときも、いちいち本部に申請が必要で、時間がかかる。それなら自分でお金を稼いで財団などを立ち上げたほうがいいと思っていました。

A.L.I.TechnologiesCEO兼CTO 小松周平氏

【田原】大学院を出られて、外資系の証券会社に入られる。どうして証券会社に?

【小松】当時は外資系金融機関に優秀な人材が集まっていました。そういう人たちとコミュニケーションすれば、自分の知らない世界に触れられるんじゃないかと思いまして。

【田原】オフィスは日本?

【小松】採用は日本支社です。ただ、1年目はニューヨークでトレーニングを受けていました。そのあとは日本に戻って日本橋に通勤していました。しばらくしてリーマンショックが起きて、2009年にシンガポールのファンドに転職しました。

【田原】ウォール街じゃなくてシンガポールのほうが魅力的だった?

【小松】当時のシンガポールは発展途上で、国と一緒に成長していける機会に自分をベットしようと思いまして。結局、向こうには5年半いたのかな。じつはシンガポールで、起業のきっかけとなる出会いもありました。楽天野球団の初代社長で、いまユーネクストで副社長をされている島田亨さんです。お会いしたときに、「起業するなら、考えていても仕方ない。いま動け」と背中を押していただきました。

【田原】起業するにしても、どうして空飛ぶバイクだったんですか?

【小松】空飛ぶバイクにすぐいきついたわけではありません。起業への思いはあるものの、一方で吹っ切れないところもあって、まずはエンジェル投資家としてスタートアップに投資するところから始めました。ただ、投資した会社が倒産したり、事業が頓挫して、ことごとく失敗。その原因を分析しているうちに、やっぱり自分で直接経営しようと。

【田原】自分でやったほうがいいと思って、A.L.I.テクノロジーズを創業するんですか?

【小松】いえ、すでに会社はありました。日本に帰国後、東大の先生に呼ばれてOBと学生の飲み会に行って、A.L.I.テクノロジーズを創業した後輩に出会いました。ドローンの開発をする会社でしたが、当時はあまりうまくいっていませんでした。その会社にエンジェル投資家として入られていた千葉功太郎さんの後押しもあって経営を引き継ぐことになったんです。

【田原】それまでも投資して失敗したのに、まだ会社を買うお金があったのですか?

【小松】物欲がないほうなので、ちゃんと貯めていました。

【田原】ファンドって儲かるんですね。でも、高給取りだったのに、辞めたわけですね。

【小松】お金をもらうより、新しいものをつくったほうがいいと思ったんです。

■ドローン操縦士を育成するスクールを開講

【田原】それで空飛ぶバイクを?

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【小松】僕は最終的に宇宙船をつくりたいんです。ただ、いきなり宇宙は難しい。そこで現実的には、空飛ぶバイクからスタートかなと。当時5人のスタッフにそう話したら、空飛ぶバイクでさえ「おもしろいけど、本当にできるのか」という反応でしたが(笑)。

【田原】僕もよくわからない。空飛ぶバイクは、どうやって地上から浮くんですか?

【小松】地面効果といって、プロペラを回して風を思い切り地面に吹きつけて浮く力をつくり出します。浮くこと自体は難しくないのですが、人が乗って進むとなると、いろいろな技術が必要になる。車体には強度が求められるし、姿勢制御もしなくてはいけません。そのあたりを計算して設計を行い、試作品をつくったら、人が乗った状態で10センチ浮きました。浮くことが確認できたので、そこから本格的に開発をスタートさせました。

【田原】設計や試作品の製作は小松さんが?

【小松】基本設計は僕です。試作品は下町の工場のおじちゃんたちと仲良くなってつくってもらいました。最初の実験は品川の倉庫で行い、次は山梨で。社長になって3カ月後の17年5月のことでした。

【田原】うまくいってなかったドローン事業のほうはやめたんですか?

【小松】いえ、続けています。じつは会社を買収する以前からドローンには関わっていて、ドローンの操縦士を育成するスクールをつくったりしていました。

【田原】操縦士?

【小松】15年4月に首相官邸にドローンが落下して問題になりましたよね。世間は、この事件のせいでドローンビジネスが委縮すると言っていましたが、僕はドローンが広く認知されて逆にチャンスになると思いました。具体的には、墜落させると危ないので操縦が免許制になって、操縦士の育成スクールが流行ると考えた。そこである専門学校に操縦士のコースをつくりました。この講座を始めて3~4カ月経ったころ、僕はA.L.I.参画の準備に取り掛かった。育成からは手を引きましたが、講座はまだ続いているようです。

【田原】そこでドローンと手を切って空飛ぶバイクに集中してもよかった。どうして会社としてもドローンを続けたのですか?

【小松】ドローンの制御技術やセンサーの使い方は、空飛ぶバイクにも有効です。ドローンの技術を突き詰めることが、空飛ぶバイクの開発にも役立ちますから。

【田原】でも、買収前はドローン事業がうまくいってなかったんですよね? 空飛ぶバイクの開発資金が必要なときに、赤字を垂れ流すわけにはいかなかったのでは。

【小松】うまくいかない原因はわかっていました。自分たちがつくったものはすごいだろうという姿勢で市場を無視する企業は少なくありません。A.L.I.も買収前はまさにそういう状態で、クライアントのニーズに合わせてつくるという発想が欠けていたのです。技術はいいものを持っていたので、お客様へのコンサルティングから入って開発につなげるというやり方に転換したらうまくいく確信はありました。実際、買収1年目から決算は黒字になっています。

【田原】具体的に聞きたい。コンサルティングって、何をしたのですか?

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