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吉野家 並盛2杯より高い「超特盛780円」の価格体系は歪



 牛丼チェーンは50年近くにわたってあの名キャッチコピーとともに庶民の味方であり続けた。しかし、そろそろ岐路にあるのかもしれない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *

 今月、吉野家が28年ぶりに牛丼の大きさに手を加えた。7日から販売を始めた「超特盛」と「小盛り」だ(※2013年のアタマの大盛導入は、裏メニューの公式メニュー化であり、事実上「大盛のご飯並盛」なので除外する)。超特盛は牛肉が大盛の2倍(推計220g)でご飯は大盛・特盛と同量(同320g)。小盛は並盛の約4分の3で、ご飯はおよそ茶碗一杯分だという。

 1970年代に吉野家が開発した「早い・うまい・安い」という名キャッチコピー。その後「うまい・早い・安い」「うまい・安い・早い」と時代に合わせて微妙に順番を入れ替えてきたが、牛丼チェーンにおいてこの3つのキーワードが柱であることに変わりはない。だがいまやこの名コピーが足かせになりかけている。

 上半期の決算で赤字に転落してしまうなど決して華やかな話題ばかりではない。実際、現社長の河村泰貴氏も「『早い』を求める客はもう吉野家には来ない」「味に特許は取れない。『旨い』も小型店に真似される」「『安い』も寡占化して価格決定権を持たない限り、規模の効率性ではもはや儲からない」と明言。今後は牛丼事業にも力を入れつつ「健康」や「テクノロジー」を柱に据えていくという(「週刊ダイヤモンド2018年11月17日号より抜粋)

 前出の巨大な「超特盛」見た目のインパクトもあって、ネットニュースなどで話題になったが、吉野家ファンは他にも見直すべき課題を指摘する。

「どちらかというと価格の問題は大きいです。現在の税込み価格で並盛は360円なのに、超特盛は780円と2倍以上の価格となっていますよね。普通は大きくなるほどオトクになるはずなのにそうはなっていない。超特盛を食べるような若い人たちにとって、2杯頼んだほうが安く上がる価格体系はどうなのかと……」(40代・IT・男性)

 並盛の価格を押さえたいがために、全体の価格体系が歪になってしまっているというのだ。

「健康推しというなら、血糖値の上昇を穏やかにする成分を配合したという『サラシア牛丼』に並盛しか用意されていないのも寂しい。ダイエット目的で糖質制限する人たちは糖質を制限するだけでなく、タンパク質を多く摂取したいはず。サラシア牛丼の全体販売量が少なく、オペレーションが通常の牛丼と違うとしても、『アタマの倍盛』のようなメニュー開発は可能なはず」(同前)

 ただし近年の吉野家は店頭販売以外の販売ルートを模索しているフシがある。公式通販ショップであ「温めるだけの簡単調理」と銘打って「牛丼の具」やサラシア牛丼の具のほか、「店舗の味を忠実に再現」したというお新香や紅生姜、唐辛子の瓶や詰替え唐辛子まで販売している。

 先の「健康」志向を反映した施策では介護施設向けに噛みやすく、飲み込みやすい商品を開発。牛丼と豚丼、うなぎの蒲焼きの3アイテムで、塩分量を通常の約半分(0.9グラム)まで抑えながら、それぞれ具材を小さく切りやわらかく煮込んだ「やわらか」か、舌ですりつぶせるまで刻んだ「きざみ」という2つの性状にわけている。食べ手の嚥下機能に応じて、ご飯も白米とおかゆの2種類から選ぶことができるようなアイテムを開発済みだ。

 吉野家だけではない。大手3チェーンともアイテムの開発や売り方に工夫を重ねている。松屋フーズはロシアに進出。4月にもモスクワに1号店をオープン予定で、今後5年間で約30店のオープンを目指すという。すき家も"出前"で先行する吉野家を追うように「ウーバーイーツ」に対応した宅配サービスをスタートさせた。

 世界展開に販路の拡大。各チェーンとも牛丼以外の飲食業態も手がけている。「うまい・安い・早い」からの脱却後、各牛丼はどのような成功モデルを描くのか。明治の頃から100年以上に渡り、親しまれてきた庶民食はどのように変わるのか。できることなら、庶民食としての「うまさ」だけは手放さないでいてほしい。

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