

1985年から1998年にかけて『ニュースステーション』(テレビ朝日)を久米宏氏とともに支えた小宮悦子さんは、その後の報道番組における「女性キャスター像」を作り上げたパイオニアである。変遷していく女子アナの役割と、現在の報道番組への思いを語った。(聞き手/岸川真=作家)
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平成の30年間を振り返ると、女子アナという職業がひとつの“ジャンル”になりましたよね。その肩書きを引っさげて芸能活動をされる方や、政界に進出される方もいます。“元女子アナ枠”とでもいうか。
私にも政界からオファーがなかったと言えば嘘になりますが、性格的にとても無理。やはり自らスポットライトに当たりに行くタイプではないみたいです。
とはいえ、女子アナという仕事の間口が広がっていくこと自体は、良いことだと思っています。最近はフリーに転身される方も多いですし、そこは応援する気持ちしかありません。
それよりも思うところがあるとすれば、報道番組に対してですね。
いまは国内外で重大ニュースが目白押しです。泥沼の中東情勢や揺れるEUに、トランプ政権、朝鮮半島情勢とロシアの領土問題。日本でも森友・加計学園問題から統計改ざん、ゴーン裁判と数えきれないほどあります。
それぞれツッコミどころが満載なのに、各局横並びで、問題の本質がいまいち分からない。全ての事象には原因と結果があります。誰がなぜ、どうやったのか。もっと掘り下げてほしい。
当時の『ニュースステーション』が厚労省の統計改ざん問題を報じたなら、数式を出して、どこをいじったのかを解説するでしょうね。
少なくとも私や久米さん、『ニュースステーション』のみんなは、強いものに抗っていくのも仕事のうち、そこに醍醐味があることを自覚していました。
政治家のデフォルメ人形をスタジオに用意したのもそう。橋本龍太郎さんの人形が後ろに倒れたら、久米さんが、「やっぱり橋本さん、ふんぞり返りすぎですね」なんて揶揄する。
ウィットに富んでいたし、創意工夫を凝らして、あらゆる問題を深く掘り下げようとしていました。いまはそういうのは難しいのかな……。「あれ、このニュースもう終わっちゃうの?」と思うことも少なくないです。
確かにメディアが多様化して、テレビでニュースをどう料理するか、難しい時代ではあります。それでも、もう少し“ニュースに執着する”姿勢があってもいいんじゃないかな。
『ニュースステーション』を通じてニュースに恋した小宮悦子として、これだけは言いたいです。
※週刊ポスト2019年3月29日号