- 2019年03月23日 20:00
テクノロジー発展はアダルト産業から? 仮想通貨決済へ移行する風俗業界
2/2仮想通貨へ移行することで、クリエイティヴな面でも自由が手に入る。例えば、クレジット決済に対応している人気の動画チャットサイトManyVidsは、あらゆる種類のフェチ行為、カメラの前での居眠りなどを利用規約の中で禁じている。出演者のアップロード規定には、「生理」などのNGワードリストが掲載されている。チャットレディのザディ・グレイいわく、仮想通貨を使えばこうした制限も完全に排除されるという。「基本的になんでも好きなことを発信できるわよ」
IT業界の外部の人間には、ブロックチェーン技術の基本的な機能はいまだ分からないことだらけだが、ギャビーも指摘しているように、「セックスワーカーの中にはもう何年もビットコインを使っている人もいる」という。Strip 4 BitやXotica、Tits For Bitcoin、NSFW RedditのグループGirls Gone Bitcoinなどは、ビットコイン決済に対応しており、2015年から仮想通貨の実験場として活用されてきた。
ベイエリアを拠点に活動するセックスワーカー、マキシン・ドーガンは、活動家であると同時に風俗産業従事者組合の創設者。彼女はBackpage.comが閉鎖された後、サイトへの広告支払いをするためにビットコインの使い方や取引方法を独学で学び、スタートしたばかりの仮想通貨の取引市場を一人で開拓していった。
クレジット会社や金融機関はアダルト産業に制限をかけているため、ドーガンは小切手でサービスの対価を受け取ることも、クレジットカードでインターネット広告の支払いをすることもできなかった。広告なしでは仕事も得られない。ドーガンが広告掲載を維持するために仮想通貨を利用したのは、必ずしも選択肢があったからではなく、むしろ生き残るためにやむを得ず取り入れざるを得なかったのだ。そのために無駄な時間を費やした。セックスワーカーにとっては時は金なりなのだ。「何時間も何時間も、タダ働き同然で仮想通貨とやらを勉強したの。いろいろリサーチしたり、会計処理のメカニズムを理解しようしたりね」
アダルト産業に端を発し、のちに男性の独壇場となったテクノロジーは仮想通貨が初めてではない。「インターネットの誕生だって、先陣を切っていたのは間違いなくアダルト産業です」というのはリー・キャロン・バトラー氏。アダルト産業に特化した決済トークンIntimateの情報主任を務めている。「webストリーミングを後押ししたのも、アダルトコンテンツや、アダルトコンテンツへのアクセス需要なんです」 最近でいえば、バーチャルリアリティが最初のブームを迎えたのも、セックスワーカーの仕事に発想を得、彼女たちの協力によって開発されたVRポルノからだった。「どういうわけか、IT業界の紳士方は私たちにこの手の手柄を与えるのが嫌みたいね」とグレイも言う。「男たちは、ああいうのを世に送り込んだのは自分たちなんだと、手柄を横取りして独り占めするのよ」
仮想通貨やブロックチェーン技術の専門容疑にも精通するギャビーやグレイのようなチャットレディたちは、仮想通貨の普及に大きな影響力を持っている。「仮想通貨なんて聞いたことないというお客に、仮想通貨を始めてみたら、と勧めれば、かなりの人数になると思うわよ」とグレイ。だが、アダルト産業を成功事例として認めつつも、IT企業は仮想空間からセックスワーカーたちを締め出そうとしている。
2017年、Intimateは毎年開催される世界的なテクノロジーの見本市Web Summitに出展を申し込んだ。同社はアダルトサービスやチャットレディをオンデマンドで予約できるオンラインプラットフォームRendevuを発表したかったのだが、Web Summit側が出展を認めなかった。Webs Summitの代表者によれば、Web Summitのハラスメント禁止ポリシーは出展者、販売者、登壇者が会場内で性的な発言や性的画像を使用、または性的行為を言及するのを禁じているという。キャロン・バトラー氏はこのポリシーを、セックスを貶める行為だと考えている。「ようするに、『ここではセックスの話題はご法度』と言っているわけです。『風俗なんていかがわしい、ここは男の世界だ、ハードコアポルノの類は恥ずべきことんだ』と言っているにすぎません」
IT業界における性差別や風俗に対する風当たりのせいで、セックスワーカーたちは蚊帳の外。技術やプラットフォームの発展に手を貸してきた当人たちが締め出しを食っている、とグレイは言う。「SnapchatもTumblrも、みんな最初はヌード写真を掲載していたのよ。彼らがこれだけ広まったのも、ヌードのおかげ。それが何百万ドル規模の企業に成長したとたん、私たちは(利用するのは)ダメだっていうのよ」 ドーガンはこうした現象を、風俗産業が味わってきた長い歴史の通過点だとみている。つまり、新興企業がセックスワーカーたちを被験者にし、金づるとして利用するといういつものパターンなのだと。「世間での私たちの待遇に関して、大きな議論が起きている。その下地がようやくできてきたところよ」
SpankchainやIntimateといった決済サイトがますます成長を続ける中、一部のチャットレディたちは、財政面とキャリアのさらなる自立へ新たな希望を模索している。「Spankchainは先を行ってると思うわ」とギャビーは言う。「だって、業界にはびこる問題を解決しようとしているもの」 ギャビーにとって、Spankchainと出会ったことがキャリアの「転換点」となった。自分がSpankchainと関わることで、セックスワーカーによるIT業界への貢献がもっと認知されれば、と願っている。「私たちの力になりたいという人たちもいるの。世間が見向きもしないところに価値を見出す人がいるのよ」
訂正:この記事の初稿では、RendevuがWeb Summitへの出展を認められたと記載していたが、正しくは、出展申し込みをしたもののの出展は認められなかった。
- Rolling Stone Japan
- 音楽カルチャーマガジン米Rolling Stone誌の日本版



