記事

高知東生氏が自分を語る意義

2/2

そしてこの国際的な流れ、オランダの非犯罪化、カナダの大麻解禁などについて「海外では薬物問題がどうにもならない位蔓延していたので仕方なく解禁した。」というデマを言っているエセ専門家がいるらしいが、そうではなくオランダやカナダもかつては日本と同じ厳罰主義だったのが、それでは上手くいかないというサイエンスに基づいて取り入れられた政策なのだそうだ。日本は今後、薬物問題に対し「サイエンス」を取り入れていくのか?それとも一部の影響力の大きいエセ専門家と化したタレントたちの「イデオロギー」でミスリードされたままになるのか?考えて頂きたい。

また「そもそも犯罪に手を染めたから全部ダメ」という「そもそも論」は、非犯罪化にし「治療対象の健康問題」ととらえれば全てが解消する。番組の中でも松本先生がおっしゃっていたが、昔は処罰の対象であった「姦通罪」は今では犯罪ではない。姦通罪を復活させて犯罪者を増やすことで、何か社会的メリットがあるだろうか?

その上、現在のように司法が裁くだけでなく、さらにメディアが私的リンチを加え、血祭りにあげ、薬物依存症者とその家族にはなにを言ってもやっても良い、憶測を取り上げなんでもゆるされるという「いじめ」の構図がまかり通っていく、こんな社会が果たして健康的と言えるのであろうか?これでは我々依存症者とその家族はますます居場所を失うばかりである。

さらに現在ピエール瀧氏の事件で、出演作品の自主回収や販売自粛、番組差し替えの問題などが大きく報道され、これら作品に対し影響力の大きいタレントらが、ニセモノ扱い、ドーピング作品などとまで言い出したことには心底驚いている。

正義感を振りかざして、かつて同じ芸能界で生きた仲間であっても、反論できない人に対しては、とことんまで「いじめ」ぬく、この位の根性がないと日本の芸能界では生き残れないのかとむしろ感心する。

しかも彼らは、「薬物を使えば飛躍的に能力が伸び、突然素晴らしい作品を生み出すことができるスーパーマンのような作用をもたらす。」と自分たちの無知から間違った知識を社会にばらまき、むしろ薬物の使用を青少年に煽っている害に気がついていない

少し考えれば誰でもお分かり頂けると思うが、万が一、私がコカインを吸引したとしても、決してピエール瀧氏のような名演技もできないし、Shangri-Laのような名曲は生み出せない。太宰や芥川のような作品も書けないし、ロートレックやユトリロにももちろんなれない。才能や努力そして作品の出来栄えと薬物問題など無関係である

むしろ薬物問題が進めば、パフォーマンスは落ち、すぐにイライラするようになるので、薬物を使って良い作品ができるなど有り得ない。

ちなみに海外セレブは、同業者が薬物依存症に陥ったからといって、急に手のひら返しで叩きまくるような醜いことはしない。例えば、大人気海外ドラマ「フレンズ。こちらは日本でも大ヒットしたのでご存知の方もいると思うが、このドラマの放映中に出演者の一人マシュー・ペリーが薬物依存症に陥ったが、撮影中2度もリハビリ施設に入寮しながら出演は継続された。のちにマシューはインタビューで「薬物のせいで、シーズン3~6ぐらいの間の記憶が一切ないんだ。」と答えており、「薬物のせいでドーピング」など勘違いも甚だしい発言であることがここでもわかる。そして、マシュー・ペリーはのちに依存症者の支援を積極的に行い、その功績が認められてオバマ大統領から表彰もされている。

写真)マシュー・ペリー 出典)Flickr; Policy Exchange

また、世界のトップモデルのモデルのケイト・モス。こちらもつきあっていた彼氏の影響でコカインを吸引し、それがすっぱ抜かれた。一時全ての仕事を失ったが、同業者のモデルや、雑誌編集長らから擁護があり仕事に復帰。特にわずか40歳で急逝した天才デザイナーのアレキサンダー・マックイーンはケイト・モスと熱い友情で結ばれており、スキャンダル直後にも関わらず「We Love You Kate」とプリントされたTシャツを着て、パリコレのランウェイに立ったことは有名な逸話である。

写真)ケイト・モス 出典)flickr : :Nicholas Andrew

 日本の芸能人の中にも、友情をもって悩み苦しむ友人に対し手を差し伸べ、逆境の時こそ自分のリスクも顧みずに再起を応援してくれるような、そんな姿が是非ともみたい。私たち依存症者に「もう一度人を信じてみよう。」と思わせてくれる、熱い有名人が現れてくれることを切に願う。それこそが真の再犯防止だと思っている。

この番組の中で高知氏が最後に話された言葉には非常に重みがあった。

「とにかく自分が今現在で言えることは僕の状況だけです。最初の1年位本当に人と会うのが怖かったけれども、そんな中でも食事を持ってきてくれたり、助けてくれた仲間達がいました。そのうち外にでろと言ってくれたが、外に出たら石を投げられんじゃないかと恐れていたけれども、意外にも『頑張って』と言ってくれる人達がいました。これはすごく意外だったし助けられました。」

「その反面、自分の家族や周りの人達に対して『本当は、あの人達もやってたんでしょ?』などと言ってくる人達もいました。こう言う言葉を投げられた時に、自分に言ってくる位だから、僕の周辺にいた人達もどんな辛い思いをしたんだろうと、自分が多くの人を傷つけたなと思いました。だからこそ絶対に回復して、もう一回再生してやるぞと思いました。」「今また、新たに出会って支えてくれてる人達をもう裏切りたくないし、それが今、こういったことに光を与えてくれる現状があって、だからこそ素直になれている自分の現状です。」とおっしゃった。こういう生身の声が、我々の回復に勇気と希望を与えてくれるのである。

写真)Japan In-depthのニコ生配信時 出典)Japan In-depth編集部

高知東生氏については出会った人全て、主治医の松本俊彦先生も、昨日のホストを勤めた、Japan In-depthの安倍宏行編集長もそしてもちろん私も、そのあまりの正直さとまっすぐさにむしろ面喰ってしまうほどだ。そして愛され、魅力的な人なんだなぁとすぐに理解できる。高知氏には我々のロールモデルとなって再起して頂くことを、心から願っている。どうか芸能界に生きる同業の方の中からも彼の応援団が現れ、復帰に向けて手を貸して頂けるようにと切に願っている。

番組を見逃した方はこちらからご視聴頂きたい。

あわせて読みたい

「薬物」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    NHK受信料「義務化」は時代錯誤

    大関暁夫

  2. 2

    菅首相に見る本読まない人の特徴

    山内康一

  3. 3

    パワハラ原因?オスカー崩壊危機

    渡邉裕二

  4. 4

    感染防ぐ日本人 生活習慣にカギ

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    伊藤容疑者 事務所破産の可能性

    SmartFLASH

  6. 6

    8割が遭遇する中年の危機に注意

    NEWSポストセブン

  7. 7

    公選法に抵触 毎日新聞の終わり

    青山まさゆき

  8. 8

    任命拒否めぐる菅首相の迷走ぶり

    大串博志

  9. 9

    菅首相を揶揄 無料のパンケーキ

    田中龍作

  10. 10

    即席ラーメン人気が再燃した背景

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。