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高知東生氏が自分を語る意義

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トップ写真:高知東生氏と松本俊彦先生 出典:Japan In-depth編集部

田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)

【まとめ】

・依存症有名人の発信はリスクが大きいが、回復を目指す人の大きな希望になる。

・依存症患者の多くは「我慢強さが度を越してしまっている」人。

・「治療.・回復・社会復帰」という国際的風潮に逆行する日本。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイト(https://japan-indepth.jp/?p=44833)でお読み下さい。】

3/20PM8:00~配信されたJapan-In-depthのニコ生に、高知東生氏に出演して頂いた。

ご存知の通り、高知氏は2016年に覚せい剤取締法違反で逮捕されているが、あれからおよそ2年の月日が流れ、奇しくも現在ピエール瀧氏の麻薬取締法違反の件が世間をにぎわせているタイミングに何故ご出演願ったのか、我々依存症者当事者とその家族の思い、そして薬物問題からの回復プロセス、さらにメディアのあり方についてお伝えしたい。

まず、高知氏にご出演を願ったのは私の思いから始まったことで、この時は、まだピエール瀧氏の事件は顕在化していなかった。

高知氏がTwitterをなさっていることを偶然発見し、早速フォローした所すぐにフォローを返して下さったので驚いてしまった。のちに分かったことだが、実は高知氏は、以前私が書いた記事「高知東生氏は回復できる気がする理由」を偶然目にされていたのだ。

そしてこの記事を読まれ、嬉しく思って下さっていたそうなのだ。こうしてTwitterをご縁にお目にかかる機会を頂き、今回のご出演に至った。

では、何故私は高知氏にご自身の体験を語って頂きたかったのか?それは、同じ問題で悩んでいる我々当事者や家族を救って欲しいからである。

高知氏のような知名度のある方が、表立って発言されることは非常に勇気がいることだと容易に想像できる。私のような無名の一市民ですら依存症に理解のない人達からいわれなきバッシングをうけることはしょっちゅうである。ましてや現在、ピエール瀧氏の問題で社会が騒然とする中、高知氏が表に出てこられて発言されるということはそのリスクも大きい。けれども有名人である高知氏が発信されることで、回復の物語を知り励まされる人達も多いことは間違いない。それは私たちが発信するよりも大きな影響力があることであり、是非ともその一翼を担って頂きたいと思ったからだ。

また、回復の過程で自分の物語を話すということは、依存症の回復プログラムそのもので、私は高知氏の回復にもお役に立てると確信している。というのも世間では誤解されているが、依存症者は「甘え」ているわけでなく、むしろ「我慢強さが度を越してしまっている」人がいるのだ。度を越した我慢強さというのは「弱音を吐けない」「我慢の上にも我慢」「自分の心に蓋をする」ということが習慣化していくことで、それらを自分の中に押し込むためにアルコールや薬物、ギャンブルがますます必要になり乱用者や依存症になってしまう。

ところがこういったタイプは、自分の中では「我慢し、感情を殺し、自分の中に押し込める」ことが幼い頃から「当たり前」だと思っているので、自分がそういう度を越した我慢強さをもったタイプと知らずに生きてきている。その上、アルコール、薬物、ギャンブルでなんとかその限界を突破しているのだが、その正体を知りつくしているのも自分だけなので、ますます自分を責め「まだ我慢が足りない」「もっと努力が必要だ」「自分はダメな奴だ」と責めているのである。つまり努力の向きが全く逆なのである。

私が推測するに、有名人やスポーツ選手で、アルコール・薬物・ギャンブルといった依存症で問題を起こす人は、こういったタイプが多いのではないかと思う。元プロ野球選手の清原氏なども考えて頂ければお分かり頂けるかと思うが、このタイプだと推察され、小学生のころから注目され練習一筋で来ているわけで、我々の小学校時代とは全く違うのである。

高知氏も世間的には「チャラ男」のイメージがあるかもしれないが、実は、本当に苦労人で普通の人なら、とっくに潰れていた所を生き抜いてこられた方である。私としてはいずれ自叙伝でも書いて頂きたい位に思っている。

今回の番組にご一緒に出演して下さった、薬物依存症問題の第一人者である国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長で精神科医でもある、松本俊彦先生も番組の中で高知氏に語って頂くことについてこうコメントされている。

写真)松本俊彦先生(右)出典)Japan Indepth編集部

「高知氏に回復して貰って、みんなの希望になって貰いたいと思いました。話すことで整理がつくことってあると思うんですよ。アルコールや薬物の依存症の方って、本当はうんざりするようなこととか、くさくさすることが沢山あるんですけれど、割とみんな我慢強くって、心に蓋をしているんですよね。」「特に薬物の方は、法に触れるわけですから自然的に話せないことが多くなる。その嘘自体が薬物の使用を多くさせてしまうのです。」「だから正直に話すこと、誰か信頼できる人に胸の内を打ち明けるといったこと自体に、治療的な意味があるのではないかなと思っています。」

実は、この番組の中で、高知氏自身でおっしゃっているが、高知氏の主治医はこの松本俊彦先生である。では、誰が高知氏を松本先生に繋いでくれたのか?私も不思議だったのだが実はこれ麻取(麻薬取締官)なのである。正直TVに出まくっている元麻取の方は、大して有益な情報もおっしゃられないし、「薬物依存症」を「薬物中毒」などとおっしゃっていて一昔前の方という印象否めない。もちろんそれを起用しまくっている制作者側に問題があるのだが、麻取も回復を願う方もいるのだな!と驚いた次第である。番組がニコ生だったので、この場面にコメントが集中し「ま、マトリに!」「いいマトリもいるんだ!?」「回復を麻取りに相談!?」「マトリgood job」「マトリやったな!」などと入ってきて面白かった。麻取にもこういった側面もあるのに、現在のワイドショーでは、取り締まりや薬物をあおった話ししか出てこないのも問題である。

またこの対談の中で、松本先生がお話しされた情報はことさら興味深かった。なんでも国連では「薬物問題は司法的な問題としてあるいは刑罰の対象とするのではなく、健康問題として支援の対象とするべき」という決議があるとのことなのだ。となるとその国連決議に批准していないのは日本の方であり、さらにそこに乗っかって国際社会の流れとは逆行しているのが今のマスコミの姿なのである。

これは昨年の11月に私が招聘された、バチカンの国際会議でもヒシヒシと感じたことで、ローマ法王も「薬物依存症者に対し、神の子として大切に扱うように」とおっしゃっておられ、世界各国からの報告でも、「治療」と「回復」「社会復帰」にフォーカスが当てられていた。日本の芸能界のように、人格を貶め、復帰させないなどという吊るし上げなど行われていない。是非、この記事も再読して頂きたい。

写真)法王に謁見する田中紀子氏 ©田中紀子

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