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インドの新興ホテルが日本で「賃貸住宅事業」に参入する狙い

孫正義氏も出資する「IT賃貸業」の可能性は?

 インドで成長著しいホテルベンチャーの「OYO(オヨ)」が日本へ進出。だが、ホテル業ではなく、ヤフー株式会社と合弁会社を設立して賃貸住宅事業に本格参入することで話題になっている。彼らの狙いは何か──。ホテル評論家の瀧澤信秋氏がレポートする。

 * * *

 OYOとは、2013年にインドで創業したホテルベンチャーでインド最大級のホテルチェーン。インド国内で10万以上、中国でも8.7万以上の客室を展開するなど急成長が注目されている。

 経営者はまだ20代半ばの若手というから驚く。社長のリテシュ・アガルワル氏は大学を中退し、わずかなお金でインド各地を巡る中、宿泊施設のクオリティの均一感がないことを実感しOYOを設立。旅の安心感を充足できるようオンラインサービスの提供をスタートさせた。

 ビジネスモデルとしては、ホテルオーナーと契約しOYOのマニュアルに沿って既存の客室をリニューアルする。水回りやリネン類からサービスまでOYOの基準を満たした部屋を提供、リニューアルの期間はわずか2週間余りという。こうしたホテルはOYOのサイトへ掲載、集客される。

 急成長する新サービスということもあり業界ではハレーションも起きているようであるが、前述の中国に加えマレーシアやネパール、イギリスでもホテル事業を展開、世界的規模へ成長を遂げている。

 そんなOYOが“黒船襲来”とばかりに日本に進出。しかし、展開するのは、意外にもホテル業ではなく、賃貸住宅事業だ。

 新会社「OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(OYO LIFE)」が特徴的なのは、スマートフォンひとつで物件探しから入居、退去までができる賃貸サービスを提供すること。数日間の試し住みも可能だという。

 通常、日本で賃貸物件に住もうとする場合は、まず賃貸情報サイトで物件を探し不動産屋を訪れるのが一般的。さらに連帯保証人をつけ公的書類も揃えるなど多くの書類へサイン、契約の際は敷金、礼金、仲介手数料、保険料などを支払う。保証会社との契約が必要なケースもある。

 だが、OYO LIFEでは、入居前の清掃費のみ発生するが、敷金・礼金・仲介手数料がかからず、家具・家電付き、Wi-Fi通信費等の料金も込み。何よりスマホひとつで入居契約・退去まで可能で、書面での通知も不要だ。さらに3日間の“住み試し”が可能。実際に住んでから契約の検討ができるというのも斬新。「ホテルのように部屋を選ぶだけ」を謳う。

 通常の不動産賃貸借契約では資格者と対面し重要事項説明を受ける必要があるが、なぜOYOのようなスマホを使った契約スタイルが可能かというと、サブリース物件、すなわち“転貸”物件だからだ。OYO LIFEは仲介業者ではなく貸主ということで、法律のハードルをクリアしている。

 この“サブリース”というワードには敏感な方もいるだろう。瑕疵ある物件でニュースとなった「賃貸アパート経営」の問題でもサブリースというシステムが報道された。物件オーナーへの「家賃保証」を謳いながら契約を反故してきた実態も問題になった。

 そこで、OYO LIFEもこれからは物件オーナーへの管理システム提供といった収支や入居率などをスマホ一つで確認できるようなサービスが重要になってくるだろうし、機会損失が少なくなるような高い技術力も期待される。

 OYO LIFEは東京23区を中心にサービス提供を開始するというが、ネックは料金が賃貸住宅相場と比較して割高なこと。OYO LIFEには3つの部屋タイプがあるが、マンションタイプで10万~15万円、戸建タイプで 25万~45万円、シェアハウスタイプで4万~6万円。ただし、通常の賃貸借契約で負担する初期費用から勘案すると、1年半までの入居であれば割安になる目安で賃料設定をしているという。

 こうしてホテルと賃貸住宅の中間的なOYO LIFEの新しいビジネスモデル。そもそも、なぜOYOの日本進出がホテルではないのかという点を考えてみると、“民泊”を取り巻く昨今の環境変化が思い当たる。OYOそのものは民泊への進出を否定するが、違法民泊問題再燃、営業日数規制など新たなフェーズにある民泊の囲い込みという狙いも想定できる。

 とにかく、これまでになかった新たなサービスがスタートされるだけに、様々な懸念が囁かれているのは事実だ。サブリースゆえの賃貸人たることが前提であることを前述したが、不動産会社が仲介するような一般の不動産賃貸借の現場は、アナログゆえに成り立っている面もある。

 筆者も経験があるが、隣人とのちょっとしたトラブルがあった際に、双方に面識のある不動産管理会社の担当者が間に入って解決してくれたことがあった。このようにトラブル回避・解決、近隣との問題解決、未払い賃料の催促などは、管理会社の担当者と賃借人の個別の人間関係で解決されるケースが多い。また、仲介業者に課せられた義務(事故物件の告知など)なども気になる点だ。

 ITを駆使した最先端のシステムが可能にしたOYO LIFE。今後のサービスは住居の安心・安全の担保といった点からも注視していきたい。

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