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日本のレーダーは北朝鮮のロケットを捉えたか?

北朝鮮のロケットは失敗に終わりました。

報道を見ると、イージス艦やFPS-5 などで感知はしなかったとのことです。発射地点は事前に分かっていますし、米軍から早期警戒衛星(SEW)情報を得た後はレーダーの照射方向も絞られたはずなのに、どうして感知できなかったのでしょうか?

ポイントは、「地球の丸み」です。

実は、今回の北朝鮮のロケット事案では地球の丸みがポイントになることもあるかな~と思っていたので、4/8の記事『ミサイル防衛の要:ネットワーク化されたリモートセンシング』で本稿のテーマになるようなことについて少し触れていました。
IRBMやICBMを迎撃する際にネックとなるのが、地球の丸さです。イージスBMDに搭載されたSPY-1レーダーでは、物理的に地平線の向こうの弾道ミサイルを捉えることができません

では、地球の丸さとレーダーの見通し距離について簡単に説明して見ます。

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(図1)

たとえば500kmの探知能力を持つレーダーは、レーダー地平線(Radar Horizon)を超えても500km先まで探知できます。しかし、地球は丸いので、レーダー地平線を超えたところにある地上目標や低空目標は地平線/水平線の下に隠れてしまい、見通すことができません(図1の赤い部分)。

レーダー地平線は、レーダーの設置高と目標の地上高度に応じて決定されます。たとえ500kmの探知能力を持っていても、設置高が10mの場合、レーダー地平線は12km。12km以遠の地平線下は死角(赤い部分)になるわけです。

つまり、レーダーの設置位置が低かったり、目標の高度が低ければ低いほど、レーダーの探知範囲は限定されてしまうんですね。これが、巡航ミサイルがシースキミングする理由です。

また、死角の地点からミサイルが発射され、レーダー地平線を超えずに墜落したりすれば、レーダーに感知されずじまい…ということもあるわけです(図2)。今回、日本のイージス艦やFPS-5などが銀河3号を感知できなかったのにはひょっとするとそういう理由があるのかもしれません。
 
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(図2)

こうしたレーダーの物理的弱点を補う上で有効なのが、前進基地にあるAN/TPY-2や精密追跡宇宙システム衛星(Precision Tracking Space System:PTSS)のようなリモートセンシングとのネットワーク化です。

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(図3 前線配備レーダーによって死角を補う)

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(図4 衛星によって死角を補う)

ミサイル防衛の肝は、前線配備レーダーやそのレーダーと各領域(陸・空・海・宇宙)のアセットとの有機的なデータリンクなのです。

◇ ◇ ◇

銀河3号は高度70km(120kmという説もあります)まで上昇し、空中分解、その後は複数の破片になったようですから、その高さまではレーダーがロケットとして認識できるものだったはずです。高度70km(120km)にあるロケットの地平線は約950km(高度120kmなら1,240km)。したがって、950(1,240)km以内にあるレーダーは、大気の屈折率などを考慮せずに数字だけで言うと、地上0mから感知可能なはずです(レーダー探知距離950(1,240)km以上あればですが)。

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(図6 高度70kmにある銀河3号の見通し距離)

そうすると、950km圏内にある鹿児島県下甑島分屯基地(標高450m)にあるFPS-5(通称:ガメラレーダー、探知距離:1,200km?)と佐賀県脊振山分屯基地(標高1,050m)のFPS-3 改(探知距離:600~1,000km?)はいずれも数字の上では探知可能だったと思われます。

「きりしま」と「ちょうかい」の2隻のイージス艦に搭載されたAN/SPY-1D レーダーは探知距離が約1,000km。レーダーパネルの位置を海上から約20mとすると、高度70kmのものを探知するには、963km以内にいる必要があります。

E-767 早期警戒管制機(AWACS)の探知能力は800km、E-2C(AEW)の探知距離は560km。探知時の上昇高度にもよりますが、E-767 とE-2C は今回は感知が難しかったかもしれません。

現時点では銀河3号が高度70(120)kmに達した際の座標も不明ですので、本稿がとてもざっくりとした考察だということはお含みおきください。レーダーの見通し距離の話をしたかっただけなので…。

そもそもレーダーの探知距離やイージス艦の正確な位置は機密事項ですしね。また、ロケットがほんの一瞬だけレーダーに捉えられたとしても、それをロケットだと認識できるほど長く感知できなかったという可能性もあります。

今後の情報更新を待ちたいと思います。

【追記 2012/4/15】

「レーダー地平線以遠の弾道ミサイル発射を確認できないなら、日本のミサイル防衛は無駄(不備があり過ぎ)」という意見をメールフォームにていくつか頂いたので、これについて短くお答えします。

* * *

本エントリでは、レーダー見通し距離の概説と、そのレーダー見通し距離という点を踏まえてFPS-5やイージス艦が銀河3号の発射を感知できたかどうかを考察したものです。

今回のように、地平線の向こうにある発射基地から打ち上げられたロケット(ミサイル)が十分な高度に達しなかった場合、FPS-5や海自のイージス艦がこれを感知できない理由と可能性については本エントリで説明したとおりですから、今回のケースで各レーダーの探知能力を貶すのは為にする議論でしかありません。

第一、地平線/水平線の向こうから発射される弾道ミサイルの探知は米軍の早期警戒衛星が担い、地平線/水平線を超えて我が国へ飛来する弾道ミサイルを追跡するのがFPS-5でありイージスBMDの役割です。FPS-5やイージスBMDの主要任務は、発射を探知することではありません。

だからこそ日米同盟は重要ですし、日頃から堅固なものにすべく努めなければいけません。ミサイル防衛システムにおいて、日米同盟というのは非常に大きな要素なのです。その点、今回も日本政府は米軍から早期警戒衛星の情報はしっかりと伝達されていますので、大きな問題はありませんでした。

レーダー地平線以遠からの発射を確認する手段を持つべき、という意見もあるようですが、個人的には、日本は一足飛びに高価な早期警戒衛星を持つよりも、AIRBOSSの能力を充実させた方が良いと思います。

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