■急増する児童虐待
保護者がいない、あるいは児童虐待を受けているなどで社会的な養護を受けている子どもは全国で約4万5000人となっている。社会的養護を行っている施設の内訳は図のとおりだが、そのうち児童擁護施設が約2万5000人と最も多い。国内で保護が必要な児童数は、平成2年の約4万4000人から緩やかな増減が続き、平成23年に約4万6000人のピークとなったがその後は微減となり平成29年で約4万4000人となっている。
30年近くで考えると大きくは変わっていないのだが、驚くのは、児童虐待が急増していることだ(下図の左)。
相談件数で見ると、平成2年に1001件だったのが、平成29年には13万3778件と約11.5倍となってしまっている。
相談を受けた13万3778件のうち、一時保護になったのは2万1268件。さらに施設入所などとなったのは4579件。施設入所の内訳は、児童養護施設が2369件、乳児院が800件、里親が593件、その他の施設が790件となっている。ここでも児童養護施設の重要性がわかる。
そして、里親に委託された子どもの約3割、児童養護施設に入所した子どもの約6割が虐待を受けていることも分かっている(上図右)。
児童相談所の機能強化が求められているが、相談した後の体制の充実も同時に必要となっていることは言うまでもない。ここまでも視野に入れた体制強化が必要だ。
■障がいのある子どもが増えている
さらに驚かされるのは、障がいなどのある子どもが増えていることだ。平成4年に児童擁護施設に入所している子どものうち障がいなどのある子どもは9.5%だったが、平成25年には28.5%と急増している。養護を必要としている子どもの数は大きく変わってはいないが、必要としている子どもの背景が大きく変わっていることが、これらのことか分かってくる。
平成28年に児童福祉法が改正され、国と地方公共団体(都道府県・市町村)が家庭と同様の環境における養育を推進する責務があると明記された。
子どもが家庭で養育されるように保護者を支援することが第一となっているが、不適当な家庭の場合には「家庭における養育環境と同様の養育環境」で子どもが養育されるように必要な措置をとることも求められている。
具体的には、図のように左から右へとの流れ、施設⇒小規模な施設⇒家庭と同様な環境⇒家庭が望ましいとしているが、なかなか難しいのが実情だろう。やはり、児童擁護施設が要であることはこのことでも理解できる。
児童養護施設に入る理由で最も多いのは親からの虐待であること。入所する子どもには障がいを持っていることが多いことがこれらのことから分かる
児童擁護施設というと、親と死別した子どもが入所する場所と思いがちだが、現在では様相が変わっていること理解しておかなくてはならない。
■職員配置
保育園や学童クラブでの職員配置に関心が高まっているが、児童養護施設にも決まりがある。この配置基準は、2012年に32年ぶりとなる改正が行われ、小学生以上の子ども6人に対して1名から5.5人に対して1名と改善されている。
とはいえ、保育園や学童のように日中だけでなく24時間対応となるため、一勤務を8時間で計算すれば、実際にはこの3倍程度の配置基準になってしまう。
つまり、1日は、8時間の勤務の職員が3名必要となり、1人で最大18人弱の子どもの生活を見守ることになる。学校行事に親代わりとして出席することもあるそうなので、その時間のやりくりも大変そうだ。もっと本来は増やさないとならないのだろう。
他にも課題は多いと考えているが、実際のところはどうなのか。会派でのぞみの家を訪れ聞いてみた。