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日本は「遅れてきた移民国家」望月優大氏が語る 複雑で多様なこの国の未来

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「最近、コンビニで働く外国人技能実習生をよく見かける」

この文章の間違いに気がつくだろうか?

現在、「技能実習」の在留資格を持つ外国人は小売業に従事することはできない。コンビニや居酒屋などのサービス業で働いているのは主に「留学」の在留資格を持つ外国人たちだ。

「在留外国人に関心がある人でも“わかっている風”になってしまっている人が多いように思います」

そう話すのは、日本で暮らす外国人たちを取材したインタビューを掲載するウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」(NPO法人 難民支援協会)の編集長を務める望月優大さんだ。

撮影:飯本貴子

「調べてみると日本の現実は複雑で多様です」

「いわゆる移民政策をとる考えはない。深刻な人手不足に対応するため、即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れるものだ」とする安倍晋三首相の発言に代表されるように、国は「日本に移民はいない」というスタンスを取っている。

「現実と違う建前論にちゃんとカウンターしないといけない」。望月さんは3月、在留外国人に関する統計やデータをまとめた著書『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)を上梓した。

著書に「日本は『遅れてきた移民国家』である」と綴った望月さん。その目に映る「日本の建前と現実」、そして「移民の時代に生きる私たちが考えるべきこと」とは何か、話を聞いた。【編集部・清水駿貴】

平成の間に移民国家となった日本

—「ニッポン複雑紀行」では日本で暮らすムスリムの方や難民2世の方など、海外にルーツを持つ人々の体験談や想いにフォーカスを当てていますが、今回の本では統計やデータに着目されています。あらためて在留外国人に関する数字と向き合い、どのような日本の姿が見えましたか?

統計を見ると平成元年に100万人に満たなかった在留外国人の数が、昨年6月末までに260万人以上に増えています。多くの人が『日本って単一民族国家だよね』と思っているうちに、大きな変化が起きていた。その変化がいつどのように起こったのか、今このタイミングで見つめ直さないといけないと思いました。

撮影:飯本貴子

でも、外国人に関する情報は「日系人が大量解雇された」とか「実習生が搾取されている」とかバラバラな形で報道されがちです。全体を把握したいと思った時に普通の人がぱっと手に取れる形にまとまっている本も少ないと思っていて。自分自身もかつてこのテーマを詳しく知らなかったという反省が、今回、本を執筆する原動力になりました。

—在留外国人に関する報道の数はここ数年で非常に増えたように感じます。

昨年末の臨時国会で出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正が決まったことをきっかけに議論がすごく盛り上がって、いろんな記事やニュースが流れたり、雑誌で特集が組まれたりしましたね。

※入管法改正とは

改正によって2019年4月から「就労」を目的とした新たな在留資格「特定技能(1号・2号)」での外国人受け入れが始まる。これまで政府が就労目的で外国人を受け入れてきたのは、大学教授や経営者、医者などの専門的・技術的分野のみだった。現在、事実上の単純労働を担っている「留学」や「技能実習」の在留資格は本来、勉学や技術習得のためのもの。

特定技能1号では介護や農業など14業種で働くことができ、滞在期限は5年で家族帯同は認められない。特定技能2号は技能試験などの合格が条件となり、建設・造船業が対象。家族を伴った長期就労が可能となる。特定技能1号の受け入れ見込み人数は最初の5年間で34万5150人とされる。

今回はかなり大きな改正だったので、『この国の移民政策の大転換』みたいな形でクローズアップされて、『移民の受け入れ元年』的な言い方もあったんですけど、それは半分間違っていると思っています。

撮影:飯本貴子

日本の外国人受け入れが始まった重要な時期の1つは1990年の前後。30年ぐらい前なんですよ。去年とか今年、いきなり増え始めたというわけではない。30年近い長さの、少なくとも(中国、ブラジル、フィリピンなどから来た)ニューカマーと呼ばれる人たちを受け入れてきた歴史があるんです。新しい在留資格で向こう5年間で最大34.5万人増えるというのも大きいですが、100万人以下だった人たちがこの平成の31年間で300万人近くに増えた歴史と背景を考えないといけません。

—現在、在留外国人の姿は身近になりつつありますが、これまで交流する機会があまりなかったため、日本でどのような変化が起きてきたかに気づかなかった人が多かったという印象を受けます。

89年に改正された入管法が90年に施行されて、受け入れ開始とともにブラジルやペルーを中心とした日系人がどっと増えました。彼らは自動車製造業などを中心に工場で働いていて、朝から晩まで長時間働いている人も多かった。都心部で生活していたらなかなか直接会う機会がありませんよね。

次に増えた技能実習生たちも漁業や農業などの第一次産業、あるいは製造業や建設業などの第二次産業が多い。都会で暮らす人とあんまり接点がない。数は増えましたが、なかなか実感しづらいところがありました。

ところが、ここ数年でコンビニなどのサービス産業に留学生を中心とした外国人が労働者として入ってきました。明確にあらゆる人の生活導線の中に外国人が入ってきたので、多くの人が目に見えて変わったと実感していると思います。でも、統計を見るともっと前からこの国で暮らす外国人はどんどん増えていたんです。

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