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「中国の経済成長率目標、下方修正」 ―“日本敵視”から“接近”、同じ轍を踏むべからず― - 屋山太郎

 3月初めに開かれた中国の「第13回全国人民代表大会」で、李克強首相が2019年の国内総生産(GDP)成長率目標を実質で、前年比「6.0%~6.5%」に設定した。18年の目標が「6.5%前後」とすると、今年は2年ぶりの引き下げとなる。成長率とは、あくまで予想であって、これが狂ったからと言って政府が責任を追及されるものではないだろう。ところが中国人評論家に限っては、成長率が命取りになるらしい。

 1年ほど前、多数の中国人評論家が中国本土に召喚されたことがある。ある大学教授は召喚期間が半年を過ぎた頃、戻ってきた。我々、常に聞く方に回っている側は「あいつはもう差し障りのあることは言わないだろう」と想像した。専門家の話を聞かせる講演会に行ったところ、教科書かメモに書いてあるような話しか言わない。次の講演者に最後の質問の場面でこう聞いた。

 「土木工事にお金を使って景気を煽るやり方は、日本では失敗しましたけどね」と。すると相手は「我々の事業規模は日本の10倍ありますからね」

 この御仁は、土木インフレは中国発だと書かれたくないのだ。

 中国経済専門のある教授はごく最近、「6%成長なんてあり得ない。実質は2%台ではないですか。ただしこの話は絶対にオフレコですよ。クビを刎(は)ねられますからね」

 実質2%台の伸びだとすると新規企業の参入はムリ。失業率は上がり、賃金は上がらない状況が何十年も進み、労使の間柄は刺々しくなるだろう。

 2008年のリーマンショックの時、中国は4~5兆元(約50~60兆円)の財政資金を投入して工事を起こし、経済を何とか建て直した。「まるで田中角栄の発想だな」と語り合ったのを覚えているが、角栄バクチは成功したのか。

 今、中国が世界に提案しているのは一帯一路といって、角栄バクチの比ではない。都市と都市を結んで、物流をよくしようという発想である。港湾や鉄道、駅に大規模な投資をするのは結構だが、借金の額も金利も高すぎて返せない。だから現場は工事国(中国)が引き取ってくれというケースが既に相当数出てきている。当初、日本やかつての西側諸国は事業に非協力的だったが、バランスよく局部的な景気回復策と位置付けて、有効利用することになったようだ。

 中国は日本との友好関係を希望しているが、中国、韓国という国を並みの国家と同等に扱ってはいけない。つい先日まで中国の王毅外相は露骨に日本を敵視していたが、全人代が終わった途端に、日本に接近してきた。日本の外相が相手にしなければ、王毅氏の手腕が問われるだけの話だ。

 中国には王毅氏のような人物があふれ返っている。その認識を記憶にとどめておけば、対中外交に失敗することはないだろう。

(平成31年3月20日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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