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3割が自殺念慮、10人に1人が未遂経験

主な原因に学校、家庭、健康問題
自殺と「いじめ」の関係、数字で裏付け

政府の自殺対策白書や警察庁の自殺統計によると、日本の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は19・5(2016年)と世界のワースト6位を記録しており、中でも15〜44歳の男性、15〜29歳の女性の死因トップを自殺が占めるなどG7の中でも若者の自殺が目立っている。2018年の統計でも、全国の自殺者数は2万598人と9年連続で減少しているものの、未成年者(15〜19歳)は543人とこの10年間、ほぼ横ばい状態にあり、若者の自殺対策が急務となっている。

そうした中、2016年から「いのち支える自殺対策プロジェクト」に取り組む日本財団が、若年層(18〜22歳)を対象に自殺意識を調査したところ、30%(男性26%、女性34%)が「本気で自殺したいと考えたことがある(自殺念慮)」と答え、11%(男性9%、女性13%)は実際に自殺未遂を経験。その原因として双方とも半数弱が「いじめ」を中心にした学校問題や家族の不和など家庭問題を挙げていることが分かった。

学校、家庭問題とも若者の自殺念慮・未遂との関係が指摘されて久しいが、現実には今ひとつ、はっきりしない面があった。調査チームの高橋義明・アドバイザリーボードリーダーは特に自殺のいじめの関係について「『いじめ』を原因とする19歳以下の自殺に関してはこれまで『学校問題の1%程度』といったデータしかなく、まとまった傾向が数字で示されるのは初めてではないか」と指摘しており、今後の対策を進める上で重要なデータになると見られる。

調査は昨年11、12月、インターネットで行われ、18、19歳662人と20〜22歳2464人から有効回答を得た。内容は多岐にわたるが、原因に関しては自殺念慮と自殺未遂それぞれが回答を寄せ、いずれも学校問題、家庭問題、健康問題、男女問題が上位を占めている。例えば自殺念慮を持つ人では48%が学校問題を原因に挙げ、うち49%はその理由として「いじめ」経験を指摘している。単純計算すると4人に1人弱(23%)の自殺念慮に「いじめ」が影響したことになる。同様に自殺未遂をすることになった理由でも「いじめ」が26%を占めており、「いじめ」対策の強化が自殺対策の大きな要素であることを裏付けている。

このほか22歳以下の男性の42・9%、女性の44・1%が今の社会に「希望が持てない」と回答、23歳以上の男性平均を10・2%、女性平均を7・3%上回っているほか、「自殺はしてはいけないとは思わない」とする回答も22歳以下では男女とも45%前後に上り、それぞれ23歳以上平均を14・7〜18・2%上回るなど、自殺に対する精神的な歯止めの弱さも浮き彫りにされている。

調査チームではこれらの点を踏まえ、若年層の高い自殺念慮・未遂の特徴として①「いざという時に何もしてくれない」、「希望が持てない」といった社会に対する悲観的イメージが高い②「自殺は個人の問題ではない」としながら、その一方で「自殺はしてはいけない」と考えていない③自分を価値ある存在として受け止める自己有用感が低いーいった点を指摘している。

年齢区分はやや異なるが自殺対策白書によると、わが国の20代男性の死因のうち50%、20代前半の女性の40%超を自殺が占める。若年層は高齢世代に比べ悪性新生物(がん)や心疾患、脳血管疾患など疾病が少なく、死因の中で自殺が相対的に高い数字を占めるのはそれなりに理解できる。しかし、今回の調査のように30%が本気で自殺を考え、11%が自殺未遂を経験したとなると尋常な数字とは思えない。

加えて2016年にスタートしたプロジェクト・本調査と比較すると、若年層の自殺念慮30%は本調査で対象となった20歳以上約4万人の平均値25・4%を5%近く上回る。さらに17、18両年の本調査で16年に自殺念慮を持つと答えた人を追跡調査したところ、67〜68%がその後の1年間に再び「本気で自殺を考えた」と答え、16年時点で1年以内に自殺未遂を経験した人の55%が17年、さらにそのうちの77%が18年に新たに自裁未遂を経験していた。

平和で比較的生活も安定している日本の若者に何故、こうした現象が起きるのか。個人の感想で言えば、若年層には自分が何を望み、何を目標にしたいのか、あるいは自分が社会の中でどこまで必要とされているのか(自己有用感)、実感できないまま、不安を共有する相談相手を持たないまま孤立感を深め、自殺念慮や自殺未遂を引き起こしている気がする。

相談相手として、男女とも「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」を挙げ、学校現場で進められる「スクールカウンセラー」が低い数字に留まっている点からも、まずは家族や友人、地域の人びとと気さくに話せる居場所づくりや、親子関係、友人関係の再生を通じ自己有用感の上昇を図る、などの対策が必要な気がする。

現実に実行可能で有効な対策となると思いつかないが、若者の「死にたい」という思いの裏には間違いなく「生きたい」という強い思いがある気がする。調査には詳細で膨大なデータが盛り込まれており、こうした点を含め専門家による本格的な分析と提案に期待したいと思う。

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