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【読書感想】学校ハラスメント 暴力・セクハラ・部活動ーなぜ教育は「行き過ぎる」か

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 学校の先生方との意見交換の場に参加するなかで、私が出会った、もっとも忌まわしい記憶の一つを紹介しよう。

 とある教員研修の場において、10名程度からなるグループで、「部活動のあり方」について議論が交わされた。一人の若手教員が、か細い声でこう嘆いた――「私は、〇〇科の教員です。教員採用試験を勉強して、〇〇を教えるために教員になりました。でも毎日、そして土日も部活で時間がつぶれます。自分はやったこともない競技を指導しなきゃいけないし、本当にしんどいです」。

 それを受けて、別の教員が手をあげてこう言い返した――「それは一部ですよ! 全部の部活がそんなふうに思われては困ります。僕自身は、たしかに部活がしんどいときもありますが、楽しんでやっています」。さらには、それにつづいて何人かの教員が部活動のすばらしさを語り、援護射撃をつづけた。

 私にとっては、本当に衝撃的な場面であった。

 学校の先生というのは、外部に対してはきれいごとを発信しているけれど、内部ではお互いに「これきついよね」「やってられないよね」と愚痴をこぼし合っているのだろうな、と僕は想像していたのですが、若手がようやく絞り出した「悲鳴」が、こんなふうに押しつぶされていくのか……

 僕自身が運動音痴というのもあって、部活の顧問とかは、スポーツが得意じゃない教師にとってはきついだろうし、そもそも、ただでさえ仕事が多いなかで、時間外や休日のサービス残業化しているのは酷いと思うのです。でも、やりたくない人はやらなくていい、というシステムにできるほど、人が余っていたり、希望者が多いわけでもない。

 そもそも、教師がこんな状況下で働いていて、生徒に「いじめをなくそう」「人の話をきちんと聴こう」などという資格があるのだろうか。

 学校外の大人が学校内で子どもを傷つけることについては、全校で防犯訓練が実施される。けれども、学校内の大人が子どもを傷つけるということについては、まるで知らないふり。

 学校教育において、教師というのは、とても崇高で立派な存在である。そうした位置づけが、教師から子どもへのハラスメントを、なきものにしている。

 そして本章の最後に強調したいのは、だからこそ教師においては、学校管理下で出逢う自身のハラスメント被害についても、それがなかったことにされてしまうということである。

 教育界では、崇高で立派な存在として、偉大なる教師像が描かれる。その対極に、被害を受けて傷つく教師像がある。まさか、偉大なる教師が、小さなことに傷つき涙しているなどと、誰が想像できようか。

 崇高で立派であるからこそ、悪いおこないをするはずがない。だから教師は、加害者カテゴリに最初から含まれない。

 教育界において教師は、ハラスメントの加害者としても被害者としても位置づけられない。加害者としての罪を免れうる特権は、同時に被害者としての認定をも妨げうるものとなる。 

 これは、コインの裏と表の関係にあり、結局のところこのコイン

教育界が教師を特別扱いしすぎてきたことによってできあがっている。

 加害者と被害者を想定することなく、ハラスメントそのものを直視していく。崇高で立派な教師像を解体し、学校の風通しをよくする。教師の特権が奪われることで、教師の安全と安心が確立されていく。

 ごく当たり前のことなのですが、「先生は聖人君子ではなく、ひとりの人間である」ことを大前提に、物事をみていき、システムを設計していかないと、結果的に、生徒だけではなく、先生のほうも追い詰められていくことになるのです。 

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