- 2019年03月19日 15:15
なぜ「嵐」のファンは大野智を許せるのか
1/2国民的アイドルグループ「嵐」が2020年いっぱいで活動休止する。最大の理由はリーダーの大野智さんが「自由な生活がしてみたい」と言い出したことだ。組織人事コンサルタントの小倉広氏は「大野君の脱退宣言が『ワガママ』と受け取られない理由を考えると、嵐というグループの本質が見えてきた」という――。

大野君の人気にビックリした
人気アイドルグループの嵐が2020年いっぱいで活動を休止することになった。
メンバーの大野智さん(以下、親しみを込めて大野君と書く)が「一度、何事にも縛られず、自由な生活がしてみたい」と言い出したのがその理由だという。一般的に考えれば、リーダーとしてはいささかワガママな休止理由に聞こえる
それにもかかわらず、ほとんどのファンがそんな大野君を熱烈に擁護しているのを聞き、僕はとても驚いた。しかも、そのコメントが、単なる擁護や疑似恋愛の対象を越えて、実に深い人間愛に満ちているように見えたのだ。
アイドル事情に乏しい僕にとって、大野君はほかの4人のメンバーよりも特徴がボンヤリとしていてつかみ所がなかった。だから、彼がこんなにも熱烈にファンから「好かれている」ことに僕は気づかなかった。そして職業柄、深く興味を持ったのである。
センスと能力があれば愛されるのか
僕はアドラー派の心理カウンセラー、組織人事コンサルタント、企業研修講師をなりわいとしている。
そのため、チームとしての嵐、それを束ねる一見、無気力なようにさえ見えるリーダー大野君の印象について興味があり、周囲の女性たちにさりげなく聞いてみた。すると、予想通りに続々と熱いコメントが返ってくるではないか。
いわく、ダンスが(桁外れに)うまい、歌がうまい、習字がうまい、絵がうまい、コメントがおもしろい、場を読む力がある、リーダーとしてまとめ役がすごい、脱力しているのに才能がある、釣りなど趣味が多彩……。
そうだったのか。どうやら、大野君は才能とセンスが大いにあるようだ。しかし、それは、本当に好かれる理由になるのだろうか。
僕は長年心理学の勉強を続けているが、その観点から見ると、能力があるだけの人は意外に好かれにくい、と思っている。むしろ、嫌われたり、うとまれたりしやすい。
なぜならば、一方の優越は他方の劣等を呼び覚ますからだ。人は誰しも劣等の地位に長くとどまることを好まない。その比較対象がアイドル歌手のような縁遠い世界の人間であっても、多くの人にとってそれは同じだ。
では、なぜ、大野君は、才能とセンスがあるのに、あんなにも幅広い人から好かれるのだろうか?
もしかしたら、それは、能力やセンスが優れているのが原因、というわけではないのかもしれない。僕は、考え方を少し切り替えてみた。
ワガママなのに好かれる構造
能力やセンスなどの長所がある、から好かれるのではなく、逆に、短所があるから好かれる、と考えることはできまいか? 大野君は、何かが「ある」から、ではなく、何かが「ない」から好かれるのではないか?
人は何かしらが欠落し、欠点がある方が好かれやすい。それを隠さずに、他者へ見せることができると欠点が愛嬌に昇華される。そして好かれる。
女子から寄せられたコメントで、大野君の「ない」ものを見てみると、ぼんやりとそれが浮かび上がってくる。
いわく、大野君はワガママでマイペースだ。マネジャーの言いつけに背いて勝手に釣りに行って、一人だけ真っ黒に日焼けしている。高校をたった一日で辞めた。若手ジャニーズが自分を売り込む番組の出演を数回で辞めた。リーダーなのにまったくしゃべらないでボーッとしている。振り付けを考える時にスタジオでメンバーを待たせてあぐらをかいて一人で考える。そして極めつけは、いきなり嵐の活動を休止したい、と言い出す……などなど。
そうか。大野君は、ワガママなのか。しかし、それは愛嬌にもつながるけれど、一歩間違うと相当嫌われるぞ。
にもかかわらず、大野君はやっぱり好かれている。ワガママなのに好かれる、ってなぜだ? 「ない」から好かれるって、どういうことだろう?
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