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なぜ英国はEU離脱でこんなにモメるのか

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混迷を極めている英国のEU(欧州連合)からの離脱が、期限である3月29日より延長される可能性が高くなってきた。この問題について、3月21日の首脳会談(サミット)で協議するという。現在、英国のEU離脱派と残留派は拮抗しており、国民投票を再実施すべきという声もある。高度な政治的判断が必要な問題を国民に丸投げしていいのだろうか――。

2019年3月14日、英議会下院の審議に臨むメイ首相(写真=AFP/時事通信フォト)

2019年3月14日、英議会下院の審議に臨むメイ首相(写真=AFP/時事通信フォト)

離脱の長期延期の可能性が浮上

混迷を極めている英国のEU(欧州連合)からの離脱について、その期限(ロンドン時間3月29日午後11時)が延長される可能性が極めて高くなってきた。3月14日に英下院がメイ首相の発議による離脱の期限延長案を可決したことを受けて、EUは21日の首脳会議(サミット)でこの問題を協議するという。

以前からEUも円滑な離脱を望んでおり、トゥスク大統領もSNSを通じて離脱の延期への支持を表明するなどフォローに努めてきた。そのためEUはサミットでの協議を踏まえて、新たに何らかの条件を提示する可能性があるものの、基本的には英国の要請を受諾する見通しである。

争点は離脱の期限をいつまで延長するかに移った。当初英国は、下院が3月21日までにEUと18年11月に合意した協定案に基づく離脱を可決した場合、EUに対して6月30日まで離脱の期限延長を要請するつもりだった。一方で否決された場合、年単位での離脱の延期を要請する予定であった。

メイ首相は与党・保守党内の反対勢力である離脱強硬派に対して、長期の離脱延期を回避したいなら離脱協定案への賛成に回るようにプレッシャーをかけた。ところが3月18日に下院議長が、これまで2度議会で否決された審議をもう一度下院で議論することは法律上できないという見解を示した。

そのため、3度目の正直が成立する見通しは立たなくなった。急転直下、可決されたとしても、英国が本当に6月末までにEUから離脱できるか定かではない。6月末が近づくにつれて再延期の機運が高まる可能性の方が高いだろう。離脱が長期延期となる可能性は日増しに高まっている。

そもそもなぜ離脱を決めたのか

そもそもなぜ英国はEU離脱を決めたのか。16年6月の国民投票で52%の人々が離脱を選択する背景にはどのような力学が働いたのだろうか。欧州への根深い不信感の原因について、少し整理してみたい。

20世紀に世界は二度の大戦を経験するが、いずれも欧州大陸、特にドイツを中心に行われた。当時世界の覇権国であった英国はこの二度の大戦への参戦に消極的だったが、結局は巻き込まれてしまった経緯がある。英国は勝利を重ねたものの国力の疲弊は著しく、米国に覇権を取って代わられることになった。

それ以前の欧州の歴史においても、英国は欧州大陸からは距離を置いていたが、二度の世界大戦での国力の疲弊が、英国民に根深い大陸への不信感を植え付けた。その後自力での再生を目指した英国であったが、結局それは叶わず、73年にEU(当時はEC)へ加盟して大陸に合流した。

ところで英国の通貨はポンドであるが、EU加盟後の英国はユーロの導入を目指したことがある。サッチャー政権の末期である1990年11月、将来的なユーロ加盟に向けた準備として、英国はポンドとユーロの前身である決済通貨「欧州通貨単位(ECU)」との間で固定相場制度を導入したのだ。

ポンド暴落でも手を差し伸べなかったドイツ

ただタイミングが悪く、当時の英国は景気後退期にあり、本来なら金融緩和が必要な局面だった。にもかかわらず、固定相場制度を維持するために中央銀行のイングランド銀行は利下げを行わなかった。そのため経済の実勢に比べるとポンドは割高となり、その歪みを投資家が突いてポンドに売りを浴びせた。

当初イングランド銀行は為替介入で投機筋による攻撃に対抗したが、結局抗えずに変動相場制度に移行した。そのことでポンドは暴落し、通貨危機に陥った。その際、ECUを司る通貨の番人であったドイツは救いの手を何も差し伸べなかった。このことが英国の大陸に対する不信感を一段と強くしたのである。

そうして募っていったEUへの不信感が爆発したのが、16年6月のEU離脱の是非を問う国民投票だった。この国民投票は、メイ首相の前任であるキャメロン氏が15年の総選挙で掲げた公約に端を発する。当時キャメロン氏は保守党を率いていたが、総選挙でも過半数は獲得できずに国民投票は実施されないとタカをくくっていた。

ところがキャメロン氏の読みは大いに外れ、15年の総選挙で保守党は過半数を獲得して大勝した。その結果、キャメロン氏は国民投票を実施せざるを得なくなり、ふたを開けると投票者の52%が離脱を支持するという番狂わせが起きてしまったのである。それだけ英国の人々の大陸への不信感は強かったわけだ。

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