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【読書感想】硫黄島-国策に翻弄された130年 ☆☆☆☆

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硫黄島-国策に翻弄された130年 (中公新書)

  • 作者: 石原俊
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/01/18
  • メディア: 新書
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  • 内容(「BOOK」データベースより)

    小笠原群島の南方に位置する硫黄島。日本帝国が膨張するなか、無人島だったこの地も一九世紀末に領有され、入植・開発が進み、三〇年ほどで千人規模の人口を有するようになった。だが、一九四五年に日米両軍の凄惨な戦いの場となり、その後は米軍、続いて海上自衛隊の管理下に置かれた。冷戦終結後の今なお島民たちは、帰島できずにいる。時の国策のしわ寄せを受けた島をアジア太平洋の近現代史に位置づけ、描きだす。

     「硫黄島」といえば、やはり、太平洋戦争での激戦地のイメージが強いのです。
     クリント・イーストウッド監督が2006年に『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』で、硫黄島での戦闘を日米双方の視点で映画化し、同時期には日本で硫黄島防衛の指揮をとった栗林忠道中将に関する本がベストセラーになりました。
     『硫黄島からの手紙』で、渡辺謙さんが「まだここは日本かーっ!」と叫んでいたのは、すごく耳に残っています。

     ただ、僕が「硫黄島」について知っているのは、あの激戦のことだけ、というのも事実なのです(あの映画以前は、それさえも年表のなかの一行でしかなかったのだけれど)。

     硫黄島と北硫黄島は19世紀末から1944年の強制疎開までの約半世紀間にわたって入植地として発展しており、両島合わせた人口は最大時に約1200人を数えた。そこに社会があったのである。


     この新書のなかで、著者は、硫黄島の発見から入植、太平洋戦争前の住民たちの生活ぶり、そして、軍事的な要衝にあったことから、基地として重要視され、日米の激戦のなかに、住民たちが巻き込まれていく様子を、当時の住民たちの証言をもとに描いていきます。

     本書は硫黄列島という小さな島々の社会史的経験を描いている。一方で、硫黄列島のたどった、一見するとミクロな歴史的経験からは、日本本土側にとって一方的に都合のよい歴史像、たとえば「立派に耐えた玉砕の島」といった地上戦イメージや、「焦土から復興へ」というお馴染みの戦後イメージを揺るがす、新たな20世紀像が浮かび上がってくる。

     したがって本書は、二つの目的をもって書かれている。一つは、硫黄列島の歴史を従来の「地上戦」一辺倒の言説から解放し、島民とその社会を軸とする近現代史として描き直すことである。もう一つは、日本帝国の典型的な「南洋」植民地として発達し、日米の総力戦の最前線として利用され、冷戦下で米国の軍事利用に差し出された硫黄列島の経験を、現在の日本の国境内部にとどまらないアジア太平洋の近現代史に、きちんと位置づけることである。

     激戦地として描かれる硫黄島には、両軍の兵士たちの姿はあっても、住民たちはほとんど出てこないのですが(映画『硫黄島からの手紙』のなかには、住民たちの様子が描かれたシーンが1カットあるそうです)、この島には住民がいて、多くの人は本土に「疎開」を余儀なくされ、軍に徴用された人たちの大部分は兵士たちとともに犠牲となりました。

     著者は、沖縄戦を「太平洋戦争で唯一の地上戦」と言及する人が多かったが、それは誤解であること、その後「住民を巻き込んだ唯一の地上戦である」と言い換えられることが多くなったけれども、それもまた、この硫黄島や太平洋の島々での戦闘の内実を無視している、と述べています。

     島民たちのなかには、日本軍からの命令ではなく、企業が私的に行った「偽徴用」の被害も受けた者もいました。

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