- 2019年03月18日 11:40
メディアの「リスク報道」はなぜ歪む!? ~小さなリスクに警鐘をならし、大きな実害を生む本末転倒~
2/2もしこのような本末転倒をメディアが助長している原因が、「リスクのトレードオフ」を知らないことだとしたら、それは公衆衛生上の大問題であり即刻修正されなければならない。小島氏に言わせると、現在の日本におけるHPVワクチン低接種率は「人体実験」だとのこと:ワクチン接種率の高い国との子宮頸がん発症率/死亡率の比較が近い将来可能になる(?!)とはなんと皮肉な現象か。
なお「リスクのトレードオフ」のロジックは、以下の実例で理解していただきたい(比較的小さなリスクを回避することで、さらに大きな実害に遭ってしまうケース):
- HPVワクチンの副作用(死亡例なし)を恐れて接種せず、子宮頸がんを発症して死亡!
- 飛行機事故の死亡リスクを恐れて、自動車長距離運転の末に交通事故で死亡!
- 野球で投手が四球を出すのを恐れて、ストライクをとりにいき決勝ホームランを被弾!
- 食品添加物の健康リスクを恐れて、添加物不使用の野菜を食べてO157で死亡!
- 残留農薬の健康リスクを恐れて、無農薬野菜に汚染した腐敗菌やカビで食中毒!
- 高齢者が加工肉の発がんリスクを恐れて、サルコペニアやフレイルで寝たきりに!
- 注射針をさされるのが怖くて採血を拒んでいたら、LDLが異常に高値で心筋梗塞により死亡!
もちろんだが、これら「リスクのトレードフ」に関して消費者市民に合理的選択の権利があるのは当然であり、上述のようなリスク情報をきいて「それでもHPVワクチンを接種しない」という選択をするのはかまわない。ワクチン未接種だったら必ず子宮頸がんを発症するというわけではないので、年間3000人程度の死亡ならワクチンは打たないとの選択肢をとってもよいわけだ。いくら肺がんの発症リスクが大きいですよと言ってもタバコを止めない方が多いのは、がんの発症が不確実であり、喫煙者にとってタバコのベネフィットが大きいからだ。
ただ、リスクの大きさが市民にわかりやすく伝わっていないのであれば、それは公衆衛生上のリスクコミュニケーションの失敗であり、健康行政による「学術啓発活動の不作為」=「未必の故意」との指摘が起ってもおかしくないと考える。市民が実際に健康被害を受けたときに、初めて健康リスクが実はこんなに大きかったんだと知らされても納得がいかないのではないか?
もし10年後に自分の肉親が子宮頸がんに罹患して子宮を切除手術することになったときに、医師からHPVワクチンを打っておけば予防できたかもしれないと告げられても、もう手遅れなのだ。いやいや、「HPVワクチン接種で重篤な副作用!」という○○新聞の記事を読んだので、うちの娘にはワクチンを打たないよう注意したのに、そんなに死亡リスクが大きいとわかっていれば絶対ワクチンを接種させたはず・・という親御さんの声が聞こえてきそうだ。子宮頸がんワクチンによるリスク低減の意義については、以前のブログでも解説しているのでご一読いただきたい:
◎リスク回避のポイントは『リスクのトレードオフ』
~子宮頸がんワクチン問題を考察する~(2017年12月18日)
https://blogos.com/article/266066/
以上、今回のブログではメディア・バイアスによる「リスク報道」の社会に与える悪影響について解説しました。SFSSでは、食の安全・安心にかかわるリスクコミュニケーションのあり方を議論するイベントを継続的に開催しておりますので、機会をみつけてご参加ください(参加費は3,000円/回ですが、どなたでも参加可能):
◎食のリスクコミュニケーション・フォーラム2019(4回シリーズ)
『消費者市民の安全・安心につながる食のリスコミとは』開催案内
【開催日】2019年4月21日(日)、6月23日(日)、8月25日(日)、10月27日(日)
【開催場所】東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール
http://www.nposfss.com/riscom2019/
【文責:山崎 毅 info@nposfss.com】
- 山崎 毅(食の安全と安心)
- 安全第一、安心は二番目であるべき



