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メディアの「リスク報道」はなぜ歪む!?  ~小さなリスクに警鐘をならし、大きな実害を生む本末転倒~

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"リスクの伝道師"SFSSの山崎です。本ブログでは、毎月食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月はメディアによるリスク報道のバイアスがもたらす社会的弊害について解説したいと思います。まずは、小島正美氏(食生活ジャーナリストの会代表幹事/元毎日新聞編集委員)が最近出版された書籍をご紹介したい:

 『メディア・バイアスの正体を明かす』
  小島正美著、エネルギーフォーラム新書刊

  http://www.energy-forum.co.jp/eccube/html/products/detail.php?product_id=395

 第1章 子宮頸がんワクチン報道の大いなる失敗
 第2章 遺伝子組み換え作物報道はなぜいつも偏るのか
 第3章 トンデモ報道の法則と特徴
 第4章 メディアの「リスク報道」と安全・安心の科学
 第5章 世の中を動かす力は何か

 科学報道に関する読み物のわりに非常に読みやすく、小島氏の綿密な科学報道への姿勢とメディアの「リスク報道」のあり方に対する厳しいオピニオンが次々と展開される流れに思わず引き込まれる内容となっているので、ご一読いただきたい書籍だ。各論として採り上げられたテーマ/リスクは、HPVワクチン・遺伝子組み換え作物・食品添加物・残留農薬など、これまで一部のメディアがそのリスクを過大に誇張して世の中に伝えたことで、多くの消費者市民がリスク誤認による不安を抱えた事態が続いており、まさに社会問題と言える事件ばかりと言ってよいだろう。

 HPVワクチンについては、村中璃子さんが子宮頸がんのリスク低減に有効な手段として予防接種を呼びかけるメディア活動を孤軍奮闘で続けておられたが、国際的科学ジャーナリストを表彰する英国の「ジョン・マドックス賞」が授与されたことを、日本の大手新聞社がなかなか報じなかった事態について、「新聞の死」と呼んで厳しく批判している。大手メディアがこれを報じなかった理由として、過去に信州大学が発表したワクチンの副作用を暗示する稚拙な動物実験データを大袈裟に報じてしまったことをあえて訂正したくないから、もしくはワクチン反対派の市民団体(副作用被害者団体)に忖度したからではないか、などの考察がされている。

 メディア(とくに社会部の記者)はどうしても弱者に寄り添う傾向にあり、それが公益性を重視したメディアの使命だとの強い意志をもつことで、科学的事実やリスクの大小が見えなくなるのだろう。またメディアは不安を煽る「リスク報道」については誇張して大きく伝えるが、もしその情報が誤りだったとわかっても、その訂正記事は非常に小さな扱いとなることが多い。これでは大きく煽られた市民の不安は和らぐはずもない。あと訂正記事が出ればまだよいほうで、特定のハザードに対するリスク評価に関して専門家のコメントが相反する場合には、一切訂正もされずネット上で流しっぱなしということも多く、これらは社会悪としか言いようがない。

 HPVワクチンのケースなど、市民に浸透してしまったワクチンの副作用に関する誇張されたリスク情報のせいでワクチン接種率があがらなければ、将来HPV感染による子宮頸がんの発症を抑えることができないため、毎年3千人程度の女性が死亡し続けるだろうというリスク予測だという。これは「リスクのトレードオフ」の典型事例と考えてよい:すなわち、許容範囲の小さなリスクを過大視して回避することで、許容できないはるかに大きなリスク(死亡リスク)に遭うという悲劇を生むのだ。

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