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京都人は観光公害を我慢するしかないのか

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■年間1000万人ペースで中国人パスポート受給者が増える

日本政府観光局の「訪問客数の推移」によると、来日する中国人観光客も16年に過去最多の637万人となり、前年比で25%以上も増えたとされています。

アレックス・カー、清野由美『観光亡国論』(中公新書ラクレ)

中国人、特に団体客のマナーの悪さが群を抜いて目立つのは、数が圧倒的に多いので仕方がないのかもしれません。しかし、現在の中国ではパスポートを発給されている人は、まだ人口の数%に過ぎないといわれており、今後、年間1000万人の単位で受給者数が増えていくとされています。

中国人の次には、やはり人口が圧倒的なインド人の観光客も控えています。インバウンド数の伸びとともに「観光公害」は今後も、私たちの想像を超える規模で広がっていくことが予想できます。

 

■バブルの頃は日本人観光客も「爆買い」していた

ただし、「観光公害の原因は中国人である」などと決めつけることは間違っています。一国が経済成長を果たし、その国民が世界中を闊歩するようになると、世界各地で軋轢を起こすようになることは世の習いだからです。

ですので、外国人が日本をダメにしている、という安易な論調に乗ってはいけません。

アメリカ人は1950、60年代に、フランスやイタリアに観光に出かけ、傍若無人に振る舞ったことで、「醜いアメリカ人(アグリー・アメリカン)」として嫌われました。

その後は経済力を付けたドイツ人と日本人が、「アグリー・ジャーマン」「アグリー・ジャパニーズ」と呼ばれました。バブルのころは、日本人観光客もパリの高級ブランド店などで“爆買い”を行って、顰蹙(ひんしゅく)を買いました。

もちろん、受け入れ側のキャパシティをはるかに超えて増大する中国人観光客への対応は必要です。しかし、それは「中国人観光客が悪い」という話では決してありません。観光「立国」を果たすには、世界の誰をも受け入れた上で、その状況をコントロールする、という構えが重要なのです。

■観光「立国」と観光「亡国」のターニングポイント

ここで歴史を振り返ってみれば、日本という国は長い鎖国を経て、明治時代に開国しています。

世界から観光客が押し寄せて、国のシステムを脅かし始めた今は、明治時代以来の新しい「開国」のタイミングです。そして国が大きく変わろうというのであれば、当然ですが、そこには巨大な軋轢が生まれます。

果たしてそこで、適切な「マネージメント」と「コントロール」ができるかどうか。

うまくできた場合は、その後に本当に大切な、そして持続可能な観光「立国」が待っているでしょう。しかしそれができなければ観光「亡国」にもなりかねない。

日本は今、そうした歴史的なターニングポイントに立っているのです。

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アレックス・カー

東洋文化研究者

1952年、米国生まれ。NPO法人「篪庵(ちいおり)トラスト」理事長。イェール大学日本学部卒、オックスフォード大学にて中国学学士号、修士号取得。64年、父の赴任に伴い初来日。72年に慶應義塾大学へ留学し、73年に徳島県祖谷(いや)で約300年前の茅葺き屋根の古民家を購入。「篪庵」と名付ける。77年から京都府亀岡市に居を構え、90年代半ばからバンコクと京都を拠点に、講演、地域再生コンサル、執筆活動を行う。著書に『美しき日本の残像』(朝日文庫、94年新潮学芸賞)、『犬と鬼』(講談社)、『ニッポン景観論』(集英社)など。 清野由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

東京女子大学卒、慶應義塾大学大学院修了。ケンブリッジ大学客員研究員。出版社勤務を経て、92年よりフリーランスに。国内外の都市開発、デザイン、ビジネス、ライフスタイルを取材する一方、時代の先端を行く各界の人物記事を執筆。著書に『住む場所を選べば、生き方が変わる』(講談社)、『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論TOKYO』(いずれも隈研吾氏との共著、集英社新書)など。

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(東洋文化研究者 アレックス・カー、ジャーナリスト 清野 由美)

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