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都心で急増する"金遣いの荒い若者"の正体

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■「よく働き、よく遊ぶ」という傾向にある

高級腕時計やハイブランドの服・靴の所有欲も、総じて高い傾向にあります。無論、懐に余裕があるからこそではあるのですが、「高価なアイテムは自分のテンションを上げるためのコスト。アガるものを買う」(IT・男)は彼らに共通する消費の動機を象徴的に示しています。一億総スマホ時代になり、時計を持つ必要がなくなっているのに、アクティブ・ミレニアルズは時計にも興味があるのです。

アクティブ・ミレニアルズは高給と引き換えにハードワークをこなしている人が多いため、「よく働き、よく遊ぶ」傾向にあります。昨今の若者が、“チル(英語の「Chill out」が語源の若者言葉で、「まったりする」「くつろぐ」といった意味)”を志向するのとは対照的に、余暇も活動的なのがアクティブ・ミレニアルズ。ON(仕事)とOFFの切り替えという意味では、一般的な若者のOFFが“チル”を意味するのに対し、アクティブ・ミレニアルズのOFFはもっとアクティブな消費活動なのです。

■【特徴3】将来不安がない

不況下の日本で多感な時期を過ごしてきた「さとり世代」は、将来への不安から堅実な生活や消費を営んでいました。しかしアクティブ・ミレニアルズには驚くほど将来への不安がなく、未来に対してポジティブです。「実家が裕福で当座は路頭に迷う心配がない人」が一定数含まれていること影響していますが、それ以外にも理由は大きく2つあります。

ひとつは、親や友達とのつながりが非常に強く、実際的・精神的両面でのセーフティーネットが強固であること。「会社が嫌になって辞めたとしても、親や親戚の紹介でなんとかなると思う」(銀行・男)、「起業している友達もいるので、いずれ一緒にやるという道もある。将来も特に心配していない」(IT・男)といった声が、それを表しています。

もうひとつが、自分の能力に圧倒的な自信があること。「どこにでも転職できる自信がある」(広告代理店・女)、「今の会社は副業OKだし、お金なんていつでもなんぼでも作れる」(IT・男)といった声からは、限りない自信がにじみ出ていました。

■「その気になればいつでも稼げる」という自信

よって、多くのアクティブ・ミレニアルズが、高給をもらっているにもかかわらず現在所属している大企業にも一切執着がありません。彼らの中には「せっかく入ったこの会社に一生しがみついていく」という意識はないのです。育ちに恵まれている人が多いからか、「今まで楽しく過ごしてきたし、今後、仮に景気が悪くなっても明るくすごしていけると思う」(証券・男)といった根拠のないポジティブシンキングもよく口にします。

なお、積極的な資産運用をしている人がいる一方で、収入が高いわりにまったく貯金をしていない(=将来不安を感じていない)という人も、一定数いました。IT系企業勤務で月収40万円の男性(恵比寿にひとり暮らし)は「貯金はほぼゼロ。給料は毎月ほぼ使い切る。交際費が最も大きい」とのこと。これも「その気になればいつでも稼げる、貯められる」という大きな自信の表れです。

■【特徴4】インスタより親や友達の影響を受ける

現在の若者トレンドはインスタ(Instagram)の大きな影響下にあると言っても過言ではありませんが、アクティブ・ミレニアルズは自分の価値観がしっかりと確立しており、インスタをはじめとしたSNSのトレンドにはあまり流されない傾向にあります。

一般的な若者が、テレビなどのマスメディアに露出する同世代のメディアスターに影響を受けやすいのとは異なり、アクティブ・ミレニアルズはそのような“大衆性”を避けようとしますし、そもそもテレビをあまり見ません。センスやトレンドの手本は、やや尖ったアーティストや、日本ではまだあまり知られていない海外のラッパー。昨今増殖したSNS上の安っぽい“インフルエンサー”はむしろ軽蔑する傾向にあるようです。

アクティブ・ミレニアルズは、国内でわかりやすく知名度の高いタレントに憧れません。この点、いまだ浴びるようにテレビを視聴してそこから影響を受け、著名なスポーツ選手やアーティストなどを憧れの対象としてカリスマ視するマイルドヤンキーとは対照的です。

■「インスタはつまんない奴がやってる」

各種SNSが登場から数年たってあまねくすべての若者に浸透し、当たり前の情報ツールとなった今、その先を行くアクティブ・ミレニアルズは、既にトレンド把握ツールとしてのSNSを見限っているように感じます。

「どんなすごい旅行に行ってもインスタに載せない奴が一番カッコいい」(IT・男)、「インスタはつまんない奴がやってる」(IT・男)と、インスタからは離れ気味。複数のアクティブ・ミレニアルズが「もはや、“いいね!”目的の写真投稿はやらない」と言い切っていたのは、印象的です。

では、彼らは誰の影響を受けるのか。それは③でも言及した「つながりの強い親や友達」です。会ったことも話したこともないメディアスターやインスタグラマーではなく、価値観や経済状況が似通っている親や友人に信頼を寄せ、センスやトレンドの影響を受ける。今やクラシカルな消費志向とも言える「車の所有」が彼らに浸透しているのは、バブル世代として車道楽の人が多かった親の影響もあると思われます。

そこまで親の影響を受けるのは、この世代の若者に特有の「親と仲がいい」が根底にありますが、SNSの影響を凌駕するほどの仲の良さは、アクティブ・ミレニアルズならでは。結果、親との関係が良いゆえ妄信的に外部の誰かに憧れたりはしない一方、親の意向に逆らえないという弊害も。「就職先は保険会社。特に志望していなかったが、おばあちゃんの代からの知り合い経由だからと親に強く勧められた就職口で、逆らえなかった」(保険・女)という人もいました。

■パリピの上位概念的な存在「フィクサー」とほぼ一致

最初に申し上げたように、彼らは人口比率こそ20代の3%前後と少ないですが、その上位層(とくに高収入で、経済状況が同程度の友人数が多い)は、トレンドの発信元や消費の発端となるインフルエンサー(大衆に影響を与える人)としての資質をもっています。彼らの消費志向を把握することは、世の若者トレンドを先んじて把握することと同じなのです。

私は2016年4月に『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』(新潮社)という著書で、かつて日本で仮装ハロウィンや自撮り棒を流行らせた若者のトレンドセッター(流行の仕掛け人)として、パリピ(パーティーピープル)と呼ばれる大学生たちの実態と流行の伝播についてまとめました。

同書ではパリピの上位概念的な存在として、帰国子女や私大の内部進学者、富裕層の子弟で構成される「フィクサー」と呼ばれるトレンド発祥クラスタにも言及しています。お気づきかもしれませんが、アクティブ・ミレニアルズの上位層は、インフルエンス力の高い「フィクサー」とほぼ一致しているのです。

■マーケターは「一億総中流」という幻想を捨てよ

また、今回取り上げたアクティブ・ミレニアルズの親たちは、現在40~50代です。20年前に「格差社会」と騒がれたときに社会人となり、恵まれた環境で子供をもうけた人がほとんどです。つまりアクティブ・ミレニアルズとは、「格差社会」の第1世代の子供たちなのです。

彼らは、日本社会で始まった階層化の象徴です。いまはSNSで誰もがつながる時代ですが、彼らは「稼いでいない友達は、周囲にあまりいない」と言います。彼らは階層の上位におり、あくまで同じ階層の中で幅広い交際関係を築いているのです。

今後、日本企業には、こうした階層の「上澄み」に向けたマーケティングを行うことが求められるでしょう。それは「一億総中流」という幻想に縛られてきた日本のマーケティングにおいて、良くも悪くも新たな幕開けと言えるかもしれません。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)

サイバーエージェント次世代生活研究所 所長

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年12月よりサイバーエージェント次世代生活研究所・所長。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」、日本テレビ「バンキシャ」レギュラーとして出演中。

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(サイバーエージェント次世代生活研究所 所長 原田 曜平 構成=稲田豊史 写真=iStock.com)

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