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フィリピンにマハティール警告

ドゥテルテ大統領とマハティール首相 2018年 出典:フィリピン共和国 residential Communications Operations Office

大塚智彦(Pan Asia News 記者)

【まとめ】

・マハティール首相は中国「一帯一路」政策に関しドゥテルテ大統領へ忠告。

・ドゥテルテ大統領は自国の出稼ぎ労働者待遇を鑑み、中国人労働者に寛容。

・中国政府も「一帯一路は債務の罠」発言に警戒感強める。

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フィリピンを3月6、7日に訪問したマレーシアのマハティール首相がドゥテルテ大統領のフィリピンに対して、中国が進める「一帯一路」政策に必要以上に関わると「債務の罠(わな)」にはまって、深刻な問題になる、と警告した。

さらにフィリピンが抱える約20万人の中国人労働者に関しても「政治的均衡を乱すことに繋がりかねない」と見方を示して規制など何らかの対策を講じるように助言していたことも明らかになった。

マレーシアで2018年5月に政権を掌握して以来、中国との大型インフラ整備構想を見直すなど対中政策を方針転換しているマハティール首相が東南アジアのベテラン指導者として中国経済に過度に依存するようなフィリピンの政策に対して「一言釘を刺した」形となった。

3月7日にドゥテルテ大統領との首脳会談に臨んだマハティール首相は、南シナ海での航行の自由を確認して中国の覇権拡張に共同で対処することなどで意見の一致をみた。さらにフィリピン南部ミンダナオ島などでのイスラム自治政府樹立に関しても仲介役を務めた立場などからフィリピンにおけるイスラム教徒の今後などについて意見を交換した。

▲写真 イスラム教徒ミンダナオ自治地域の遠景 出典:Flickr; Shubert Ciencia

首脳会談前にフィリピンのテレビABS-CBNのインタビューに応じたマハティール首相は、フィリピン政府が新たな高速道路、鉄道、空港、港湾施設、橋梁などのインフラ整備に中国の投資家などからの総額1080万ドル相当の資金援助を向こう10年間受けることに関連して「債務が返済できずに2つの港が中国の管理下になったスリランカのようにフィリピンも中国の“債務の罠”にはまりこむ危険性がある」と警告して、中国が推し進める一帯一路政策には決して気を許すべきではないとの考えを示した。

こうした警告に対するドゥテルテ大統領の反応は伝えられていないが、カルロス・ドミンゲス財務相は「フィリピンは(スリランカのようには)ならないだろう。なぜならドゥテルテ大統領の任期が終わる2022年までにフィリピンの中国に対する総債務額は全体の4.5%に過ぎないからだ」と反論して、「債務の罠」にははまらないとの見解を示した。

■ 大量流入の中国人労働者問題でも牽制

さらにマハティール首相は、ドゥテルテ大統領が就任した2016年以来、主に首都マニラに流入した中国人労働者が約20万人に達していることに触れて「外国人労働者の大量在留は経済問題に影響を与え、ひいては政治的均衡をも乱しかねない」と警戒を呼びかけ、中国人労働者問題に寛容な政策を続けるフィリピン政府を牽制した。

約20万人の中国人労働者の多くは中国人ユーザー対象のオンラインゲーム企業に雇用され、労働許可や在留許可のない不法労働者がそのほとんどだといわれている。

ドゥテルテ大統領は「不法滞在、不法労働の中国人にあえて厳罰で臨まない」姿勢をみせている。

その背景には出稼ぎ大国として海外出稼ぎで働く多くのフィリピン人も同じような境遇にあることを念頭に「中国人に厳しく対処すると海外のフィリピン人出稼ぎ労働者の環境も厳しくなる」ことへの懸念があるといわれえている。

こうした実態にマハティール首相は「外国からの直接投資は国内に多数の外国人を住まわせるものであってはならない。どの国の出身者であっても、多数が国内に居住し、滞在すれば経済に影響を与え、政治的均衡も乱しかねない」と指摘した。

その上でフィリピンとしては外国人労働者の規制や制限をしないと、土地価格上昇、フィリピン人の失業者増加、税収減などにも影響がでると懸念を伝えた。

■ 中国政府がマハティール発言に反発

中国政府はこうしたマハティール首相の一連の発言に警戒感を強めており、3月8日には王毅外相が記者会見で「一帯一路政策は決して債務の罠などではなく、迅速な発展をパートナーに促すものである」と反論した。

▲写真 王毅外相 出典:ロシア大統領府

さらに「中国が進める一帯一路政策は債務の罠であるというのは事実ではなく、パートナーとなった国々の発展を加速し利益を得ることが可能になる」とその意義を改めて強調し、マハティール首相発言の火消しに躍起となった。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の老練政治家で対中国でも歯に衣着せずに言いたいことをはっきりと言う姿勢を貫いているマハティール首相は、対米から対中に経済や外交の基軸を移しているかのようなドゥテルテ大統領に中国への警戒を伝えたかったのではないかとみられている。

首脳会談での詳しいやり取りは伝わってこないが、そうしたマハティール首相の姿勢にドゥテルテ大統領としても「中国の罠には決してはまらない」との信念を伝えた可能性が高いとの見方が有力だ。

反発や疑念にも関わらず虎視眈々と「一帯一路」を推し進める中国の王毅外相、深謀遠慮の老練政治家マハティール首相、そしてしたたかで権謀術数とも称される独自路線のドゥテルテ大統領、3者の思惑が激しく交錯したマハティール首相のフィリピン訪問だったといえるだろう。

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