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バカッターが発生する9つの理由・決定版

SNSに自分や仲間の愚行を公開してウケを狙う「バカッター」「バイトテロ」という行為。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「バカッターが発生する理由は9つに集約できる。すでに結論は出ており、もうバカのやることをいちいち話題にする必要はない」という――。

■バカッターについて「識者」にコメントを求める意味、ある?


※写真はイメージです(写真=iStock.com/eli_asenova)

2019年に入ってから、数々の「バカッター」「バイトテロ」が登場したと報じられている。以前、その手の出来事が世間を賑わせたのは2013年ごろだったと言われているが、当時は写真による投稿が中心だった。しかし最近は、インスタグラムなどを用いた動画モノが主役になっているというのが“進化”である。

こうしたバカッター騒動が発生すると途端に取材オファーが増えるのが、私のようなネットウォッチを仕事にしている暇人だ。多くはテレビや新聞からの取材依頼なのだが、もうこの件については改めて取材をしたり、「識者」(笑)から新たにコメントを取ったりしたところで、正直なところあまり意味がないと思っている。

私自身、これまで何度もコメントを求められ、そのたびに同じような説明を繰り返してきた。いい加減、徒労感が募ってきたし、いつまでたってもなくならないバカッターには本当に辟易している。

■本稿の言説、好きに流用してください

そこで今回、バカッターやバイトテロに関する私の意見を「決定版」としてここにまとめることにした。これからは一切、バカッター騒動、バイトテロ騒動についてコメントしたくないので、今後、私の意見を使いたい場合は本稿を引用してもらって構わない。

あたかも私に取材をしたかのように体裁を整え、「ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、今回の件について『○○○』と語る」などと、本稿の言説を流用しても文句は言わない。私に取材謝礼として5000円程度のコメント料を支払う必要もない。

なにしろバカッター騒動なんて愚行は、議論する余地もないほど浅薄なものであり、本来、「識者」のコメントなど不要なのである。情報をまとめる記者や編集者、テレビやラジオの制作スタッフだって、本当はわかっているはずだ。

バカッターにしてもバイトテロにしても、次の一言で説明はつく。

バカだから。

これで終わりだ。

いちいち「なぜ若者は画像や動画をネットに投稿するのですか?」とか、「どうしてここまで報道され、世間から非難もされているのに、あえてあのような愚行を世界中に晒すのですか?」などと尋ねられるのだが、ファイナルアンサーとしては「バカだから」と言うほかない。

そもそも「バカ」+「ツイッター」で「バカッター」なのである。こんな端的で素晴らしい造語が2013年に誕生していることからもわかるように、すでに本質は喝破されているのだ。

■バカッターの発生源は世代交代している

本論に入る前にひとつ言及しておきたいのだが、「今年、2013年以来6年ぶりにバカッター騒動が発生した」といった指摘は誤りである。実は2017年にもバカッター騒動は発生している。ちなみに2013年の記念すべきバカッター第1弾は、高知県のローソンでオーナーのバカ息子が店舗のアイスケースに入っている画像だったが、2017年の夏も暑かったせいか、アイスケースに入るバカが登場した。

なぜ4年程度の潜伏期間があったのかというと、大抵の場合、バカッター騒動を起こす者は高校生か大学生、ないしは20代前半の若者であることに起因している。2013年、取り上げるネタのなかったテレビ局がしきりとバカッター騒動を報じたので、さすがに当時の高校生や大学生は「こういったことをやってはいけないのだな」という思いを強くしたのだろう。さらに、そのころは高校、大学、専門学校、バイト先でバカ画像を投稿しないよう指導もされていたという。だからこそその後の4年間、バカ写真・動画がSNSにアップされることはあまり発生せず、広く拡散されることもなかったのだと思われる。

しかし、2013年ごろにニュースやワイドショーを見る習慣のなかった小中学生が高校生や大学生となり、当時の教訓を知らないまま、バカッターに手を染めてしまったのではないだろうか。つまり、世代交代が起きたのである。また、教師や大学当局の職員、バイト先の上司も「あぁ、もうみんな賢くなったな。さすがに『冷蔵庫に入った写真を投稿してはいけません』なんて注意は、もういらないのかな」と考え、若者に対しての指導を2013年ごろほど熱心にはしなくなったのかもしれない。

■ネットのバカネタに頼ってばかりのテレビ局

また、こうしたバカッター騒動については、テレビ局が「流すネタがないから」という理由で大々的に拡散する面があることも理解しておくほうがいい。だいたい最近のテレビ局は、ネットのバカ騒動に番組の尺を埋める役割を求め過ぎだ。

お前ら、数あるメディアのなかで最も高額の広告費をスポンサーに課しているくせに、自分の足でネタを探し出す気概もなく、手っ取り早いネットのバカネタ頼りって安易にも程があるだろ。「ネットで発生したバカ騒動なんて、放送免許を政府から与えられた公共的存在である我々は報じない」という気概を持て!

それでは「なぜバカッターは発生するのか?」について、これから結論づけていこうと思う。前述した「バカだから」が究極の真理ではあるが、以下がそれに付随する意見である。なお、ITジャーナリスト・三上洋氏は「インスタグラムの機能『ストーリー』が24時間で消えるため、あまり危機感を持たなかったのでは」といった論をテレビの生出演で述べていたが、これも重要な理由のひとつだろう。

■SNSが存在する、この時代を呪え

バカッター、バイトテロが発生する理由について、私は次のように考えている。

【理由1】暇だから

バイトをしていると、ときおり“暇な時間”が発生する。私は学生時代、某洋菓子チェーンでウェイターのバイトをしたことがあったのだが、その店舗はとにかく暇だった。

ひとたび客が来ようものなら、そこにいるバイト5人が「あのお客さんに水を出すのは自分だ!」とばかりに先を急ぎ、「ちゃんと仕事をしている」風を装うという、奇妙な競争が発生していた。皆が水をコップに注ぎ入れ、お盆に置こうとするのだが、最初に水を入れ終えたバイトがドヤ顔で客に水を運び、「私が仕事をしたのだ」と誇ることができるのである。

私がバイトをしていたのは1990年代前半だが、こうした店は客を待たせないために、念のためそれなりの人数をバイトとして雇っていることが多かった。すると、客がいない時間には従業員が手持ち無沙汰になり、つい余計なことをしてしまう。現在は、当時に比べたら無駄に従業員が多い店は減ったのかもしれないが、それでも暇な時間は発生しているだろう。そこで、暇に飽かして余計なことをするのである。

当時もバイト中にバカ話や猥談などはさんざんしていたし、仲間の笑いを取るためにバカな行動をすることがあった。なかには、商品や食材をないがしろにするような行為をする者もいた。ただ、これを世間様に公開する術がなかったのである。だから炎上しなかった。いつの時代も、暇は余計なバカ行為を生み出す。SNSがある今の時代を呪うがいい。

とはいえ、改めて考えてみると、我々が若いころにしていたバカ行為は、現代ほど過激ではなかったようにも思う。SNSという披露の場があると「自分の目の前にいる人だけでなく、もっと多くの人を驚かせてやろう」といった欲が生まれ、愚行のレベルもより過激になりがちなのではなかろうか。よって「我々も若いころは同じような愚行をしていた」は、厳密に言うなら「我々だって若いころは愚行をしていたが、今の彼らよりは穏やかなものが大半だった」と評すべきだろう。その程度の愚行では、現代では炎上どころか、ちょっとした拡散すら期待できないかもしれない。

付け足しておくと、2013年のバカッター騒動の際は、夏休みの時期に投稿が集中していた。これは、休み期間中で暇だったが故に、友人らに自分の現状を面白おかしく伝えたくなったのではなかろうか。「オレはこんなに楽しくやってるぞ!」と伝えるべく、意外性のある写真を送りたくなったと推察する。

■リアルは「心地よい場所」、ネットは「修羅の国」

【理由2】ネットのことをよくわかっていないから

バカ画像やバカ動画を投稿する者は「SNSといっても、相互フォローしている実際の“知り合い”以外はどうせ見ないよね」みたいな感覚を持っているのではないだろうか。LINEのグループ機能のようなものだと誤解をしていたのかもしれない。

オッサン・オバサン世代からすれば、ネットというものは1990年代後半から2000年代前半にかけて「世界中の誰とでも自由に繋がることができる、夢のツール」的に広まった新しいテクノロジーであり、「だからこそ、プライバシーは自分で守らなければならない」という啓蒙にも触れてきている。そのため「ひとたびネットに個人情報が流出してしまったらヤバいことになる」という慎重さを持っている人が多い。

これまで、さまざまな「身バレ」からの失職騒動などが発生してきたことを、我々中高年はよく知っている。だからこそ、徹底的に自分の身元がバレないような形でブログや掲示板などを利用してきた。近年のSNS普及以降も、基本的には「ネットは便利だけど、使い方を間違うと危ない」という意識で接している。対して、物心ついたときからネットが当たり前の存在だった若者からすれば、“ネットとリアルの境目”という視点が曖昧なのかもしれない。

私自身、ツイッターでは傍若無人に罵倒をしたり、汚い言葉を使ったりするキャラなのだが、実際に会った場合「意外とまともな方なんですね」などと言われることが多い。これは「ネットとリアルの人格の使い分け」ができているからである。

ところが若者は、あまりにもネットが当たり前のツールであったが故に、ネットとリアルが同じ空間であるかのように錯覚してしまい、結果、愚かな投稿をしてしまう。本当は「リアル=自分にとって心地よい場所」「ネット=修羅の国」なのであるが、この事実を、バカッターをやらかす若者はわかっていない。

■「趣味の悪さ」「創造力の欠如」もバカッターの原因に

【理由3】「炎上させることが趣味」という悪趣味なヤツがいるから

世の中には不思議な趣味を持つ人々がいて、ネット上に転がっている過去の映像や画像を炎上目的で探し出し、突然SNSで公開して当事者を炎上させたりすることがある。ここ数年を振り返っても、「牛乳石鹸」「ブレンディ」のネット動画が公開からかなりの時間を経て炎上した。余談だが、牛乳石鹸の動画には、あの新井浩文が登場している。

今年発生した一連のバカッター騒動についても、ビッグエコーの「唐揚げ用の鶏を床にスリスリ」や、バーミヤンの「中華鍋から上がる炎でタバコに火をつける」は2018年にアップされた動画だ。それを悪趣味な輩が2019年になって改めて投稿し、あたかも最新動画のように扱って拡散させたのだ。こうした趣味を持つ者は「いいね」やRTの数が増えていく様を見るのが快感で、SNS上でバカッター動画・画像探しをすることは、あたかも“宝探し”のような感覚になっているのかもしれない。

【理由4】自分の仕事と社会の関係に気付いていないから

以前「遅刻頻発の社員を駅前で謝罪させる」という動画をYouTubeに公開したIT系ベンチャー企業の社長がいた。当然ながら「パワハラ」「ブラック企業」だとして炎上したのだが、件の社長は「あくまでも社内の問題」だと捉えていた節がある。バカッター騒動にしても「所詮はバイト中のちょっとしたおフザけ」と考えて、事が大きくなるなど想像していなかったのではないか。

社長とバイトスタッフでは立場や社会的責任の重さに違いがあるものの、「社内の論理」「身内の論理」しか見ていなかったという点では同じである。前者の社長については、動画を社内イントラで公開するだけでは抑止力にならない、懲罰効果が薄い、などと考えたのかもしれないが、いまのご時世で「パワハラ・ブラック企業認定」の恐怖を感じないのはあまりに迂闊である。

■つまらない人間の悪ふざけほど興醒めするものはない

【理由5】自分のことを面白い人間だと誤解しているから

だいたい、世間の大多数を楽しませるような動画や画像を撮ることができる人間なんて、少数派なのである。私もイベントや講演などに登壇し、人前でしゃべる機会はあるが、あくまでも数十人からせいぜい100人程度を対象にして、テーマに関する基礎知識や前提となる「文脈」を理解している人しか楽しませる自信はない。だから、恐ろしくてYouTubeチャンネルを開設しようなどと考えるはずもない。

それなのに、バカッターをしでかす人間は、自分が面白い人間だと思い込んでいるのか、まったく面白くない興醒め動画を嬉々として投稿してしまう。

先日、セブン‐イレブンのバイト店員が商品のおでんを口に入れて、ふざけるというバカ動画が炎上したが、店員の中高時代の同級生だという人物がツイッターで実に的確な指摘をしていた。要約すると「こいつは昔からつまらなかった」「つまらないヤツには早いうちに、そのつまらなさを指摘しておけば抑止力になる」といったことだ。見事な分析である。

■撮影、録音される可能性のある場所では「品行方正」が合理的

【理由6】人生に対して危機感を持っていないから

バカッターを投稿してしまうのは、要するに「人生に危機感を持っていない」「バカなことをしても失うものはないと思っている」ということなのだろう。もしくは何も考えていないだけなのかもしれない。

正直、いまの私は失いたくないものが多過ぎる。たとえば街中でキレてしまい、動画を撮られでもしたら、それこそすべてを失ってしまうかもしれない。そう考えただけで恐怖である。仮に、相手側に非があったとしても、私が「このクソッタレが、うんこ食ってろボケが、アァ! てめぇ、この低能のアホめ!」などと喚きたてる様子が撮影されてしまったら、「【発狂する中年クソオヤジ】うんこ食うワケねーだろwww」といった動画がネットで公開され、全面的に私が悪者になるに違いない。前後の文脈は関係なく、私がキレている部分のみがクローズアップされ、視聴者にとって真実になるのである。

こうした危機感を持っているがために、とにかく撮影されたり録音されたりする可能性のある場所では品行方正を心掛けている。それは「これまでの45年の人生で積み上げてきたものを、バカ動画一発で失うのはあまりにも割が悪い」と考えるからだ。であれば、録音・録画機材が存在するかもしれない場所では愚行をしない、という判断をするのが合理的だ。

■広い世界に目を向ければ、自然と我が身を振り返るもの

【理由7】仲間内でマウンティングをするしかない世界に生きているから

広い世界を知り、そこで活躍する人に目を向けるようになればなるほど「成功体験」のレベルが上がってくるもの。それこそ「東証一部上場企業の役員になる」「起業して会社を成長させ、経営者として一目置かれる存在になる」「MLBに移籍し、年俸20億円を獲得する」など、さまざまな野望や憧れを抱くことだろう。そして、これら広い世界における成功指標というものは、多くの人から受け入れられ、称賛を浴びるものでもある。

また、広い世界を冷静に見つめる姿勢は、一方で自分が置かれている現実を冷静に見つめることにも繋がってくるものだ。その結果、身の丈を知り、謙虚にもなれる。

しかし、バカッターに身を投じてしまう者は、とにかく視野が狭い。せいぜいSNSの「いいね!」の数が多いことや、コメント数が多いこと程度で「オレってイケてる!」と悦に入り、くだらないマウンティングに明け暮れてしまう。「山田の野郎はこの前の投稿で8の『いいね!』がついた。よし、オレは10を目標にするぞ!」なんてことを思い、山田よりも過激な動画を投稿したりするのだ。

あのなぁ、友達の山田に「いいね!」の数でちょっと勝ったところで、お前の価値は上がらないから! もっと言うと、その山田とかいうヤツ、お前の人生において、あと数年もすれば大して意味のない存在になるから! そんなヤツに張り合うのはおやめなさい――若い人には、声を大にしてそう言いたい。10代後半~20代前半の人間関係なんて、30代になればほぼ消滅する。いつまでも過去に囚われて生きる、発展性のない人間を除いては。

■リアルな人生での「成功」を目指すべし

【理由8】成功体験がないから

リアルな人生で成功体験があると、ネットで「いいね!」をもらうことなど、本当にどうでもよくなる。

SNSがあるせいで、若者が狭い仲間内だけの世界でイケているか、いないかを競い合ってしまう――そんな“24時間採点社会”に身を投じざるを得ない状況には「ご愁傷様です」と憐憫の情を抱かないこともない。ただ、それがツラいのであれば、早く大人になればいいのだ。

まともな大人であれば、SNSでのマウンティングごときに何の意味もないことがわかっている。そんなことよりも、自分の目の前にある仕事を完遂して評価を得ること、家族と幸せに暮らすことのほうがはるかに大切であり、それを実現することも自分にとってはひとつの「成功」の形だと認識できているからだ。別に大金持ちになったり、有名人になったりすることだけが成功ではない。

人生でそれなりに成功する体験を得ると、SNSの「いいね!」の数なんて大した問題ではなくなるし、不特定多数から「面白いですね」なんて言われなくても充実した日々を過ごせるようになる。

だから、さっさと成功して、余計な写真や動画をネットに投稿しなくても自尊心が満たされる人生を送れるようになろう。

■自己顕示欲を出しても、嫌われるだけ

【理由9】自己顕示欲が強いから

これまでの総括的な話ではあるが、自己顕示欲がバカ投稿を生むのは間違いないだろう。だが、自己顕示欲を出しても、結局は嫌われることのほうが多い。なぜ嫌われるかについては、ここではあえて言及しない。これまで生きてきたなかで、自己顕示欲を丸出しにする友人・知人に出会ったことがあるはずだ。彼らの姿を思い浮かべれば、おのずと答えは見えてくる。

■「バカッター発生の理由」を語る識者への違和感

ここまで9つの「バカッター、バイトテロが発生してしまう理由」を述べてきたわけだが、今年の一連の騒動に関連して、かなり違和感を抱いた事柄がある点も付け加えておこう。

それは「バカッター発生の背景に『ブラック企業への反乱』とか『非正規雇用の待遇の悪さへの怒り』といった思いがあり、その発露がSNSでの悪ふざけ投稿なのである」といった論考に持ち込もうとする識者が登場した件である。結局、おのれの主義主張に基づいて政府批判、大企業批判をしたいがために、ゴージャスバカの面々がやらかした愚行を体よく利用しているだけなのではないか。

そうした論を唱える彼らには、以下のような質問をぶつけてみたい。大多数の人が「なるほど」と納得できるような回答があるなら、ぜひご教示いただけないだろうか。

■「バカッターの背景には、報われない労働者の怒りがある」などと説く方々に質問

【Q1】バカッターをする人間は、高校生や大学生など「小遣い稼ぎ」が目的でアルバイトに従事している人も多いだろう。彼らも貧困であり、生活苦のあまり一連の騒動を起こしたのか? そのあたりの背景を示す調査結果はあるのか?

【Q2】99%を超えると思われる「バカッターをしない非正規雇用労働者」はなぜ、こうした動画や写真を投稿しないのか? いろいろと抑圧されながらも、自身の生活や仕事を守るため、本当はバカッター画像・動画の投稿をしたいのに、我慢しているだけなのか?

【Q3】そもそも非正規労働を選ぶ人は皆、一様に不幸なのか? なお、総務省が先ごろ発表した「労働力調査」(2018年平均〔速報〕)によれば、「非正規の職員・従業員についた主な理由」として最も多く挙げられているのが「自分の都合のよい時間に働きたいから」で29.9%だった。次いで「家計の補助・学費等を得たいから」が19.7%、「その他」が13.2%と並び、「正規の職員・従業員の仕事がないから」は12.8%だった。

【Q4】不満を持った労働者は世の中に数多く存在しているだろうが、なぜバカッターは若者により投稿されるケースばかりなのか? 「待遇の悪さ」が理由なのであれば、中小企業でパート事務員をしているような中高年や、介護職のアルバイトに従事しているような中高年からバカッターが次々と投じられても不思議ではない。結局のところ、若者には常識や分別が足りず、未熟なために起きたということであって、待遇は関係ないのではないか?

【Q5】バカッター騒動は「従業員が悪ふざけをして」発生したケースもあるが、回転ずしの客が鼻の穴に醤油さしを突っ込んだり、レーンを流れるすしに大量のワサビを塗ったりなど、従業員以外の人間が起こしたケースも多い。その他、焼き肉店の客が店のジョッキを割ったり、焼き肉のタレを飲んでグリルの中に吐き出したりするなど、「客が飲食店で愚行に興じ、その模様をネットに投稿した結果、炎上」という例はいくつも挙げられる。これらにも「非正規雇用問題」「貧困問題」が関わっているのか? 「ブラック企業では人員が足りず、監視の目が届かない。しかも正規社員がその場にはいないことが多い」といった論点のすり替えはやめていただきたい。あくまでも「バカッターを投稿する客の問題」として論じてほしい。

以上、バカッター問題、バイトテロ問題について、私が考えるところはほぼすべてここに著したと思う。「もうバカッター絡みの話題には関わりたくない」という個人的な思いに加えて、「この話題について、メディアはもはや取り上げる必要などないのでは」という問題意識もあり、少々話が長くなってしまった。

私がバカッターについて語るのは、本稿が最後になることを願っている。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・バカッターもバイトテロも、発生する理由は結局のところ「バカだから」に尽きる。
・バカッター、バイトテロについて、そろそろ過剰に注目するのはやめたらどうか。だって「バカ」が「バカなこと」をしているだけなのだから。
・テレビ局は番組尺を埋めるのに困ると、すぐにネットから話題をパクってくる。ネットのバカネタになんて頼るな。自分たちの足でもっとマシなネタをとってこい。

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中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎 写真=iStock.com)

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