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目が笑わない俳優は演技なのか本物か?…ピエール瀧に見える深い闇 - 劇作家・朝倉薫

BLOGOS編集部

出版界から音楽界、そして芸能界を渡り歩いてきたが、金と女と薬で潰れる奴には悲しい共通点がある。言いたくはないが、その多くの原因は不義理と増長だ。助けてくれるはずの人々から見放され、奈落に突き落とされる。

先日、ミュージシャン、俳優、CMタレントなどマルチな才能で活躍中のピエール瀧がコカインで逮捕された。ドラマ、CM、映画、ライブ、関係各位のショックも計り知れないが、もっとも不幸なのは関わった作品のファンたちだろう。

今時は出演者が逮捕されるだけで作品の公開中止、配信停止、過去に遡って回収絶版が当然のことになっている。所属するソニー・ミュージックレーベルズもCD、映像商品の出荷停止、店頭在庫回収、音源、映像のデジタル配信停止を即時決定した。

実に残酷な話だな、と芸能界の古狐は肩をすくめるのみだ。

ぼく自身、何度も身近に修羅場がありながら何故かこの身体をすり抜けた。70余年も生きて来たというのに、一度も違法薬物に触れたことがないのは、まるでパラレルワールドから来たような気分だ。あのバブル全盛の時代にさえ、ぼくはパーティーの二次会になぜか呼ばれず、置いてけぼりを食らった。ふてくされてフリーの徹夜麻雀に明け暮れていると、ラジオのニュースから知り合いが逮捕されたことを知るようなこともあった。

生まれた頃にはちょうどヒロポンが違法になり、酒、タバコ、ギャンブルが公営になった。60年代、ヒッピームーブメント華やかりしころ、海外のアーティストに憧れたぼくらは貧乏アパートで土手のすかんぽを乾かして新聞紙に包んで吸ってみたり、市販の風邪薬を粉にしてアルミホイルに乗せて炙ってみては「効かねえなあ」と笑い合っていた。

あるときなど、バナナの皮からスジを取り、乾かして吸ってる友人がいた。「こいつは大麻よりヤバイぜ」と口元を歪めて笑ったあいつは、今では立派に会社を定年退職し、facebookで孫の自慢をしている。

目が笑っていない人の「闇」

長く生きているといろんな人間に出会うが、にこやかに笑いながら目が全く笑っていない人には、どうも警戒心を抱いてしまう。詐欺師やゴト師、暴力を生業とする者に、そういう人が多いからだろうか。そういう本物とは関わり合いになるだけで損をする。笑わせようと思っておどけて見せても、決して本心を見せてはくれないからだ。

では、俳優はどうだろう。彼らは演技で心の闇を演じてみせる。時には本物よりも深い闇を演じ、それは芸術となる。だから北野たけし監督は好んで目が笑わない俳優を起用するのだろうし、演技派として重宝されるのだろうが、それがただの本物だったとすれば、ずいぶんと浅い闇を見せられたような気がして悲しい。

野球選手の清原和博にしても、覚醒剤に手を出すはるか昔の子ども時代から非凡な才能を発揮していた。歌手のASKAにしたってそうだ。海外でも若くして亡くなったミュージシャンの多くが覚醒剤やコカインに手を出して、その人生を終わらせた。違法薬物は体を壊し、努力で築き上げたキャリアや人間関係まで潰してしまう。

違法薬物などなくとも、彼らは素晴らしい作品や業績を成し遂げていたのだ。

若い人にはくれぐれも言いたい、麻薬で才能は開かない! 有名人が逮捕されている影で、何人もの才能のない人々が違法薬物で有名人と同じように人生を台無しにしているのだよ! もし君に近づき笑顔で違法薬物などを勧める人がいたら、その目が笑っているかどうかをよく確かめた方がいい。

「芸能人は違法薬物を嗜むもの」は古い

世界では次々と大麻が解禁されている。一方で違法薬物への取り締まりは厳しくなっている。アーティストは違法薬物を嗜むもの、といったような古き良き時代はもう夢物語の中にしかない。

華やかさの裏側で、人生には常に漠然とした不安がつきまとう。持つべきは良き友だというが、全ては自分次第だ。自分が良き友かどうかは他人が決めることだが、良き友になろうと思う気持ちは大事かもしれない。

人生に正解があるとすれば、口元だけではなく目も笑えるような穏やかな人生を送ることだろう。だが、ぼくの寿命が尽きるのと、日本で大麻が解禁されるのとでは、どうやら前者が先のようだ。残念ながらそろそろ免許を返上する年だが、もちろんいつでも腹にダイナマイトを巻いてトラックを走らせ、国会議事堂へ突っ込む準備はできている。

土手のすかんぽでむせていた貧乏学生時代を思い出せば、違法薬物などはまだまだぼくには必要ないようだ。

朝倉薫(あさくら・かおる)
劇作家、演出家、劇団主宰、音楽プロデューサー。
1948年8月2日、熊本生まれ。92年に音楽プロデューサー、雑誌編集から転身を図り劇団を立ち上げる。その後は作家、脚本、演出家として「沈まない船」「桃のプリンセス」「ガラス工場にセレナーデ」などの舞台を手がける。舞台はパイオニアLDC、ポニーキャニオンなどからビデオ化された。元祖アイドル声優だった桜井智は劇団員から育てた。現在も劇団「朝倉薫演劇団」を主宰する。

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