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"80歳の古だぬき"二階氏が権力もつ理由

ルールは変えるためにあるということか。自民党の二階俊博幹事長が「党総裁は連続3期まで」と定めた党則の改正に動きだした。二階氏は「2期まで」だった党則改正の流れをつくり、安倍3選を実現させた張本人。二階氏がいなければ安倍氏は今、首相でなかったかもしれない。二階氏の新たな動きに、永田町が揺れている――。

記者会見する自民党の二階俊博幹事長=3月12日、国会内(写真=時事通信フォト)

■記事配信の1時間後に、予測は現実になった

「自民党員が決めることですからね。今から申し上げるわけには参りませんが、今のご活躍からすれば、党内外、特に海外からのご支援も十分あるわけですから。この状況においては、十分にあり得ることだと思います。『余人を持って代えがたい』と言うのは問題ないと考えています」

3月12日午前、国会内で開いた記者会見で記者団から安倍氏4選の可能性を問われると、二階氏は、とうとうと語ってみせた。「今から申し上げるわけには参らない」という前置きはついているが、どう考えても4選支持表明だ。二階氏が公の席で安倍氏の4選に言及したのは初めてのことだ。

プレジデントオンラインでは、この日午前9時に「『緑のたぬき』小池都知事は再選できるか」という記事をアップ。その中で、小池氏再選の仕掛け人である二階氏が「『小池再選』の先に、さらににらんでいるものがある。『安倍4選』だ」と予測している。記事を配信した約1時間後に、予測が現実のものとなったことになる。

■多数の人が予想することを、誰よりも早く口にする

二階氏は政局の潮目をみるのが抜群にうまい。田中角栄、竹下登の両首相経験者、金丸信元党副総裁、そして小沢一郎現自由党共同代表らの側近として政治経験を積んできた。80歳になって風貌は隠居のお年寄りのようになったが、長年培った政局観は衰えていない。昭和時代の先輩政治家を思い起こさせる手法は、古くさいが、そういう手法を知らない今の政治家たちにとっては新鮮で大胆に映る。

二階氏の鉄則は「誰よりも早く、勝ち馬に乗る」こと。安倍氏の再選支持をいち早く表明。党則を変えて安倍3選を可能にする流れをつくったのも二階氏。そして3月に入ってからは小池氏の再選に「全面協力」すると言っている。

多数の人が「そうなるだろう」と思っていることも、誰よりも早く口にすることで目立ち、その功労者のようにみえる。だから誰よりも早く「安倍4選」を口にすることは、ある程度予想できた。

■党内の偽らざる感想は「いくら何でも早すぎる」

この日の発言を受けて党内では「二階さんらしい話」「彼は何を言っても許されるから」「驚くような話ではない」という声が聞こえてくる。ただし、安倍氏の総裁任期が切れるのは2年半先の2021年9月。「いくら何でも早すぎる」というのも、党内の偽らざる感想だろう。

二階氏は今、少々焦っている。党内では二階氏について「会議中に居眠りをしている」とか「脈絡のない話をすることがある」など「老害」を強調するネガティブキャンペーンが張られる。80歳の幹事長に対し世代交代を求める声も公然と出ている。

その動きに抗していくには、二階氏主導で政治テーマを作り続けていくしかない。だからこそ小池氏へのラブコール、安倍氏の4選支持という発信を連発しているのだ。長らく民主党に籍を置き自民党を攻撃し続けてきた細野豪志氏を二階派入りさせたのも、自転車の事故が原因で引退表明した谷垣禎一前総裁の政界復帰を重ねて働き掛けているのも「二階氏発の発信」を意識した行動と考えていいだろう。

■もし4選可能になれば、安倍氏は24年9月まで首相に

もちろんハレーションも起きる。しかし、それは想定内。党内で論争を起こし、結果として自分が主張した通りになれば、求心力を維持できると二階氏は考えている。ズバリ言えば安倍4選論は、幹事長として延命策のひとつなのだ。

当然ながら「ポスト安倍」候補たちは面白くない。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長らは、もともと18年に安倍氏が引退し、自分が総理・総裁の座につくスケジュールを描いていた。今ごろは官邸の主になっているはずだった。それが3選可能になったことで、目標は3年後の21年に先延ばしになった。

もし4選可能になれば、安倍氏は24年9月まで首相を続けることができる。24年というと石破氏も岸田氏も67歳。もう首相としての適齢期ではなくなっている。

追い掛けても追い掛けても目標が逃げていく。まるで「逃げ水」のようだ。

安倍氏は4選を認めるべきだという意見が出ることは大歓迎だ。安倍氏自身はまだ、4選を目指すと決めてはいない。今のところは21年に退任することを基本に考えている。その安倍氏にとって1番警戒するのは、任期が近づくことによって自身がレイムダック(死に体)になっていくことだ。

■1度でなく2度も「党の憲法」をいじっていいのか

残任期間が短くなれば公然と後任選びが始まる。だれも現職首相のことなど見なくなり、求心力は低下する。しかし「4選があるかもしれない」となると話は変わる。少なくとも21年の任期満了まで「安倍1強」を続けることが可能になるのだ。そうなれば、本当に4選をうかがう選択肢も出てくる。

最後に、再び自民党則を変えて総裁4選を可能にするような荒業が現実的なのか、という問題に触れておきたい。1度だけでなく2度までも「党の憲法」でもある党則をいじっていいのか。読者の多くも「いくらなんでも可能性は低いのでは」と思っているのではないか。

しかし、ここではあえて「可能性は十分ある」と書いておきたい。

■首相の任期を政党の規則で縛るのはおかしい

3選を可能にするための16年の議論を紹介しておきたい。この時は、3選について道を開こうということでは早々と方向性が出たのだが、具体的には2案が出た。ひとつめは連続「3期9年」まで認めるという案。そしてもうひとつは、多選制限を撤廃するという案。つまり、どれだけでも長く続けられるという案だ。

多選制限の撤廃は、乱暴に見えるが、必ずしもそうではない。行政府の長である首相の任期を政党の規則で縛るのはおかしいという議論は政治学者の中でもあるのだ。だから党内で4選容認、もしくは多選制限の撤廃を主張する声が多数を占めることは、大いにあり得る。だからこそ二階氏が観測気球を揚げた。

小池氏は「緑のたぬき」と呼ばれることがある。かつて自身が立ち上げた希望の党のシンボルカラーが緑だったからだ。この表現を拝借すれば二階氏は元祖・「古だぬき」といったところか。都庁の「緑のたぬき」と自民党本部の「古だぬき」。2人(2匹?)のたぬきの腹芸は、当分の間目が離せない。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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