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世界ではマイナー"ガラパゴス東大"の凋落

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最新版の「世界大学ランキング」によれば、全世界1万8000校のうち、1位はオックスフォード大、2位はケンブリッジ大、3位はスタンフォード大で、日本の大学では東京大の43位(アジア圏で6位)が最高だった。なぜ東大は世界ではマイナーな存在にとどまっているのか――。

※本稿は、『プレジデントFamily2019春号』の掲載記事を再編集したものです。

“東大を頂点として不変”の日本だけが取り残されている


『プレジデントFamily2019春号』より

昨年秋、「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)世界大学ランキング2018-2019(※)」(ベスト60のランキングを次ページ以降に掲載)が発表された。日本のトップは東京大学の43位。かつてはアジアのトップの地位を維持していたものの、近年は22位の清華大学(中国)、23位のシンガポール国立大学(NUS)、31位の北京大学といったアジア勢の後塵を拝している。

※THE世界大学ランキングは、「論文引用」(過去5年間の学術論文の被引用数)、「研究力」(研究者1人あたりの研究費・論文数と研究者へのアンケート調査)、「教育力」(研究者へのアンケート調査、学生数と教員の比率、学生の博士号取得率など)、「国際性」(学生・教員に占める外国籍の割合)などによりランキングを作成。

「最近は英米だけでなく、アジアも含む世界中の大学が優秀な学生や研究費獲得の激しい競争にさらされている。日本の大学の多くがそのことに気付きながらも手をこまねいている」と、同志社大学の寺田貴教授は語る。寺田氏はNUSで7年間、国際関係論で准教授を務めた経験をもつ。

「英語圏では以前から、大学間での優秀な教授の引き抜きはありましたが、その流れが激化している印象です。近年は欧米に加え、中国やシンガポールなどが、潤沢な予算をかけ、世界中から一流の頭脳を集めています。教授たちに国際的な学会誌に英語論文をどんどん出版させて、大学の順位や知名度を上げるように推奨している大学もあります」

「日本の研究者は、努力してもしなくても給料は横並び」

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の機構長で、カリフォルニア大学バークレー校(15位)、カリフォルニア工科大学(5位)で教授を歴任した大栗博司氏も次のように指摘する。

「日本では、大学の序列は“東大を頂点として不変”という印象が強いですが、海外ではAIの研究はオックスフォード大学(1位)、経済学であればシカゴ大学(10位)といったように分野ごとでトップが異なりますし、順位の変動も激しいです。

アメリカ国内でも、アイビーリーグがトップ大学群を構成して常に競争していますし、MIT(マサチューセッツ工科大学・4位)やカリフォルニア工科大学のような研究に強い単科大学、教養教育に強いリベラルアーツ・カレッジなど、それぞれが特色を打ち出してしのぎを削っています。どの大学も優れた研究・教育環境をつくり、優秀な人材を呼び込むことに必死です」

かつてユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(14位)で教鞭をとり、現在は計量経済学の分野で東京大学とアリゾナ大学の教授を兼務する市村英彦氏は「日本の大学は平等主義が強い」と批判する。

「日本の研究者は、努力してもしなくても給料は横並び。それに雑用が多い環境も研究の足を引っ張っています。入試の試験監督から問題作成、アルバイトの時間管理や物品購入の承認に至るまで、細かな雑務もすべて一律負担です。

一方、アメリカやイギリスの大学では、事務や入試には専門職員がおり、教員は研究と教育に専念できます。研究環境に魅力を感じて海外に流出した人材は少なくありません」

欧米の大学に水をあけられているのは、研究だけではない


世界大学ランキング1位オックスフォード大学の中庭(写真=iStock.com/peterspiro)

欧米の大学に水をあけられているのは、研究だけではない。学生への教育の分野でも大きな差があると前出の寺田氏は断言する。

「私は大学院からオーストラリア国立大学で学びましたが、在学中に論文を書くための指導を徹底して受けられました。年間論文のノルマが15本、これを一度書いて終わりではなく、提出と訂正を繰り返し、完成に近づけます。

専門の教員から、特に論理の接続が甘い箇所、英語の文法の誤りを徹底的に直されました。マンツーマンでアドバイスをもらっては書き直すという作業を締め切りギリギリまで繰り返すことで、論文執筆に必要な論理性を学ぶことができました」

国際金融の分野で一橋大学、東京大学の教授を経て、現在はコロンビア大学(16位)の教授として活躍する伊藤隆敏氏も次のように語る。

「アメリカでは一流の教授による数百人規模の大講義とは別に、約30人に分けられた少人数クラスがあります。このクラスごとに、大学院生のティーチング・アシスタントが付き、授業の補習や宿題の手ほどきをする仕組みがあり、基礎力を一定のレベルまで引き上げてくれます。こうした環境で過ごす4年間で得るものは、非常に大きいといえるでしょう」

東大の約11倍 コロンビア大学費約611万円の「コスパ」

こうした環境を支えているのは、潤沢な資金だ。英米のトップ大学は数兆円規模の基金を持っている。

「金融の専門家を雇い、運用だけで毎年数千億円もの利益を得ています。この利益の一部が高度な実験設備や優れた研究者の採用、経済的に恵まれない学生への奨学金などに充てられています」(伊藤氏)

一般的にアメリカやイギリスの学費は高額だ。東大の授業料は年額で53万5800円。これに対し、例えばコロンビア大学は約611万円で東大の約11倍もかかる。

「学費が高額とはいえ、奨学金が充実しているため、富裕層しか進学できないということはありません。例えば、ハーバード大学(6位)では、世帯年収6万5000ドル以下であれば、学費はかかりません。その代わり卒業生が稼ぎ、寄付をしてくれる。だから大学も学生を大事にするという好循環が生まれています」と伊藤氏は語る。

潤沢な資金とともに、アメリカやイギリスの大学の研究・教育を支えているのが、学生の多様性だ。

「学生の多様性は日本ではあまり重視されていませんが、研究の現場では多様な見方の人が集まっていることで新たな視点が開けることが多いため、非常に重要な要素です。文化も育った環境も、受けた教育も異なる人々が世界各国から集まることで、物事を多角的に捉えられるようになります。

また、多様性のある環境では、文化的背景や価値観が異なる相手に対し、ゼロから自分の意見を根拠立てて説明しないとわかってもらえないので、自然と思考力、論理力が鍛えられます」(大栗氏)

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