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なぜ天皇陛下は"センチュリー"に乗るのか

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「新聞も読める」フラットな乗り心地

パワートレインは5L‐V8(2UR‐FSE)+モーターを組み合わせたハイブリッドに変更。先代レクサスLS600hに搭載されていたユニットがベースとなっている。「センチュリー専用だった2代目のV12と比べると格下げだ!」と言う人もいるが、高出力化(280ps/480Nm→381ps/510Nm+224ps/300Nm)はもちろん、燃費性能(7.6→13.6km/L)や環境性能も大幅にレベルアップ。

ちなみに実績あるパワートレインの信頼性が活かされており、2代目のような二系統化はされておらず一系統に集約されている。ちなみにLS600hはAWDだったがセンチュリーはFRである。

プラットフォームはパワートレイン同様に先代LS600h用を最適化して用いる。レクサスLSに採用のTNGA GA‐Lプラットフォームを使わない理由は、GA‐Lプラットフォームが5L‐V8(2UR‐FSE)+モーターの搭載に対応していないためだ。ただし、TNGA開発で得た知見がフルに盛り込まれている。

車体は剛性を上げながらも振動吸収性にも優れる構造接着剤を採用。塗布量はコストよりも効果を重視し、他のクルマの1.5~2倍の長さだ。また、サスペンションは空気バネやショックアブソーバー、ブッシュ、リンク類など乗り心地に影響する部分はすべて新規で開発。タイヤも乗り心地に特化してチューニングされたブリヂストン製レグノGR001を履く。

その結果、乗り心地のゆったり感や滑らかな走り出し、上質な振動吸収性、新聞も読めるフラットな乗り心地といった快適性に加えて、運転しやすさの向上も実現しており、走行安定性も飛躍的にレベルアップ。

ちなみに走行シーンに合わせて4つのモード(エコ/ノーマル/スポーツ/スポーツ+)がセレクト可能なドライブモードセレクトも採用。スポーツ+では見た目から全く想像もできないような軽快なフットワークも披露する。

「普通の人は買えない」という都市伝説

もちろん、センチュリーの真骨頂である静粛性は、ハイブリッド化に加えて振動/エンジン通過音の遮断や、徹底した吸遮音対策、アクティブノイズコントロールなどの採用も相まって、定常走行時はエンジン始動すら気が付かないレベルに仕上がっている。

現代のクルマにはマストアイテムとなる衝突回避支援システムも抜かりなしで、ミリ波レーダーと単眼カメラを併用し、昼間なら歩行者検知も可能な「トヨタセーフティセンス」を採用。タイミングの問題で最新のスペックではないものの、しかるべきタイミングでアップデートが実施されるのは間違いない。恐らく、将来的には高度運転支援も視野に入っているだろう。

価格は1960万円。2代目より約700万円高くなっているものの、20年分の進化や50台という月販目標台数(2代目は200台だった)などを考えると妥当だろう。ちなみにセンチュリーは、「普通の人は買えない」という都市伝説があるようだが、実際は誰でも購入できる。

なおセンチュリーは日本専用車だが、歴代モデルにはごく少数の輸出実績があったという。個人的には3代目は「メイド・イン・ジャパン」を象徴する1台として、左ハンドル仕様を設定するなど、世界にもっとアピールすべきだと思う。

なぜ新天皇の祝賀パレードに採用されたのか

新型センチュリーにはスペシャルなモデルもある。その1台がトヨタ自動車豊田章男社長専用車の「センチュリーGRMN」である。

今年の箱根駅伝の大会本部車として活躍する姿がTVにも映っていたが、トヨタのモータースポーツ活動やスポーツモデル開発を担う「GRカンパニー」が製作。ショーファードリブンカーのノーマルに対し、内外装や走りの部分にドライバーズカーとしての要素をプラスした世界に2台しかない特別仕様だ。

もう1台は2019年10月22日に行われる新天皇の祝賀パレードに使用するモデルである。現時点で明らかになっているのは、「センチュリーを使用」「予算は8000万」というだけ。オープンカーに改造された特別なモデルになるだろう。

国内外の自動車メーカーに打診をしたようだが、安全性や環境性能のよさ、後部座席に乗る新天皇・皇后両陛下のお姿が沿道から見やすいこと、車列を組む他の車より大きなサイズ、といった理由からセンチュリーが選ばれた。むしろこうした要件をすべて満たすベース車両はセンチュリーしかないということだろう。

もちろん日本を象徴する祝典には、「日本製のクルマ」を使いたいという想いもあったはずだ。高級セダンからは各社が撤退してしまったが、日本製のセンチュリーがちょうどリニューアルされたのは、まさに絶好のタイミングだったといえる。

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山本 シンヤ(やまもと・しんや)
自動車研究家
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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(自動車研究家 山本 シンヤ 写真=時事通信フォト)

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