- 2019年03月13日 06:15
「働かないおじさん」はなぜ働かないか
2/2■ゼロから学びを始めるのは困難
おじさんたちに、学び直しで成果を出す可能性がないわけではありません。先ほど生産性の45歳ピークの話をしましたが、これは記憶力のピークです。最近の学習科学では、物事を概念化する能力や、人に何かを伝える能力はまだまだ伸びると言われています。45歳を超えても、概念化によって何かを創造する力や、うまく人に伝えて組織を動かす力は衰えないのです。
企業側も定年延長や雇用延長が広がる中で、シニア層の生産性を向上させることは人事の重要課題です。
ただし、いったん学びをやめてしまった状態からもう一度学び始めるのは、億劫になったり、学び方がよく分からなかったりと、かなり障壁が高いでしょう。自転車に例えると感じがつかめると思います。すでに漕いでいる状態ならそのまま漕ぎ進めるのは楽なのに、いったん止まってから再び走り出すときは初動負荷がかかり、それなりに力を要します。
おじさんたちが学び始めれば、働かないおじさんは減ると思いますが、そう簡単ではないのです。
■おじさんたちに高給を支払う余裕はなくなる
働かないおじさん本人は、自分が給料ほど働いていないことを自覚しています。転職すれば必ず収入が減ると知っているので、今の会社に居続けるわけです。そうしたおじさんのことをホステージ(囚われの状態)と呼ぶこともあります。
おじさんたちにも言い分があります。若いころはむしろ賃金の過少支払いが起きていて、今はそれを取り戻しているのだという主張です。生産性カーブが賃金カーブを上回っている部分が過少支払い分に当たります。
私の未来予測を言えば、今後、45歳以上の過剰支払いはなくなると思います。高齢化が進み、70歳まで就業する時代が来るでしょうから、人件費のパイが大きくならない限り、企業は過剰支払いする余裕がなくなるからです。給与体系は、そのときの実績に応じて支払う「ペイ・フォー・パフォーマンス」に徐々に変わっていきます。
優秀な社員のモチベーションを落とさないように、年齢と賃金の関係は、30歳から35歳までは全員同じで、そこから賃金の伸び率が「上がる人」「変わらない人」「下がる人」の3タイプに分かれていくと予想しています。
若い人はすでに、自分が45歳以上になっても過剰支払いが起きそうもないことを感じています。若手にしてみれば、おじさんの「若いころの働きすぎの分を取り戻す」という言い分はなかなか受け入れられないでしょう。
■働かないおじさんの自然消滅は10年先?
これから日本企業にもペイ・フォー・パフォーマンスの考え方が広がると予想されます。そうなれば働かないおじさんは自然に減少していくはずです。
企業は自然減を待たず、手を打つでしょう。すでに社員が40歳、45歳になると、研修などで「将来どうするか」を考えさせる機会を設けている企業も増えています。そして先々、収入が3分の1減ることを告げています。
それでも、日本企業は西欧企業ほどドラスチックに働きの悪い社員を解雇したり、厚遇をはく奪したりしないでしょうから、働かないおじさんがいなくなるのはまだ10年か15年先になると思います。
■女性もおっさん化のリスク
働かないおじさんは、仕事が忙しい若手・中堅の女性社員からすれば、目障りな存在かもしれません。しかし女性も学ぶことを止めれば「おっさん化」する危険があります。
「おっさん化」とは、男性が歳を取ることを言うのではなく、好奇心がなくなり、新しいことに挑戦する意欲をなくし、ただこれまでの成功体験に固執する、そういう状態を指すのです。おっさん化に性別は関係ありません。
女性は働かないおじさんを反面教師として、自分がおっさん化していないかに気を付け、学び続けたほうがいいと思います。私も「オレおっさんだから」と死んでも口にしないように心がけています。しんどいですけど(笑)。「おっさんだから新しい流行なんて知らないよ」とか、「おっさんだから仕事もほどほどしかできないよ」とか、「おっさん」は何かにチャレンジしないことの免罪符になってしまいます。それでは人は成長しません。
(立教大学経営学部 教授 中原 淳 構成=Top Communication)
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。



