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乳児用の「液体ミルク」国内販売へ 震災きっかけに開発

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飲みのこし問題の一方、「足りない」との声も

1日に頻回、昼夜問わず行う授乳。液体ミルクを導入することで、母乳を中心にした育児であれば母親の睡眠不足、粉ミルクであれば頻回作る手間が解消されるメリットがある。

液体ミルクの発売にあたり、冒頭の災害時対応に加え、こうした育児の負荷軽減に期待する声は大きい。その一方、いわゆる「コスパ」の面でいえば、既存の手段に比べやや分が悪い。

「アイクレオ 赤ちゃんミルク」の容量は125mlで、1本200円(税抜き)。同シリーズの粉ミルク「アイクレオ バランスミルク」スティックタイプは1本あたり100mlのミルクになるためほぼ同様の内容量となるが、スティックは1本あたり約50円前後。液体ミルクの値段はそれと比較すると約4倍だ。出産直後は1日10回近くは授乳することを考えると、粉ミルクを飲める状態にする手間と、4倍の価格のどちらをとるかという話になるだろう。

体験会に子供と参加した彌重江理さんは、「液体ミルクを授乳室に置いた自販機で販売する予定は?」など、江崎グリコ側に意欲的に問いを投げかけていた。だが、すでに使用している粉ミルクと比較して値段が高いことを挙げ、「使うのは緊急時やお出かけの時だけになると思います」とも語った。

体験会で使われたのは、殺菌済みの使い捨て哺乳瓶。液体ミルクそのものが割高な状況では、日常の授乳に毎度用いるのはあまり現実的ではなく、緊急時・外出時の利用が現状ではスタンダードなのかもしれない

解禁の報せを受け、SNSなどでは「もったいないからと飲み残しを再度与えることになりかねないのでは」と憂う声もあった。江崎グリコの製品説明では「飲み残しは廃棄」とされている。やはり抵抗力の低い新生児には雑菌感染のリスクがあるため非推奨という。

飲み残しと言っても、赤ちゃんが口をつけてない、パックに残ったものであれば、牛乳のように冷蔵庫に入れて…ということも考えられるかもしれないが、パックに残ったものについても再利用は非推奨となる。

「冷蔵庫の中にも菌は存在します。紙パックはキャップがないので、一度開栓したら残りも保存せず使い切るようお願いいたします」(江崎グリコ 永富氏)

一方、体験会に足を運んだ、いわゆる「首のすわった」赤ちゃんを育てている母親・父親からは、「125mlでは足りないかもしれない」「1パック200mlくらいあれば」という声もあった。

成長すれば飲む量も増えるため、個包装の量についてはメーカーも試行錯誤が必要と思われるが、永富氏からは「不足する場合は粉ミルクなどを追加であげるか、液体ミルクを2本開封してあげてください」という説明がなされていた。

今後、別の容器で販売する可能性は?

諸外国の液体ミルクには、ペット容器入りで飲み口を付けてそのまま与えられるタイプも多くあるが、今回発売された「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は哺乳瓶への移し替えを前提とした紙パックタイプ。この形態になったのは、「世界的に一番実績があり、ゴミの処理がしやすい」(江崎グリコ 永富氏)ためという。

被災地等での利用にはニップル(吸い口)つきでそのまま使える容器がより便利と思われるが、先述の飲み残しを与えてしまうリスクから、その形態は見送ったということだ。今後、液体ミルクの認知度が国内で上昇し、当たり前になってからであれば、こうした容器の新製品が出てくるのかもしれない。

体験会の場に展示されていた売り場の設営イメージ。地方自治体の被災時向け物資としては、10パックがまとまった箱(棚上段左側)での納入がされているという

また、今回の小容量タイプだけでなく、諸外国にはもっと大きな容量でパッキングされた再栓可能な製品もあり、一定時間であれば蓋をして冷蔵保存、再利用ができるものもあるという。そうした形態の製品は今後拡充するかと尋ねたところ、「保育園や病院など、一度に大量に用いる施設でそういったニーズがあるのは把握しており、社内で検討している」(江崎グリコ 永富氏)とのことだった。

「完母」信仰の強い日本、液体ミルクは広がるか

近年、母乳のもつ赤ちゃんへの効能が注目され、一切市販のミルクを使用しない「完全母乳育児(通称:完母)」が推奨される風潮が加速している。しかしながら、体質や体調、就労状況など、さまざまな要因で母乳だけでの育児が難しい人もおり、そうした人に「完母」を強いるのは強いストレスとなることが問題視されている。つい最近、厚労省が母乳の効果を再検討し、アレルギー疾患予防効果は「なかった」と指針を更新。ミルクを選択する保護者を尊重すべきとの方針を示した。

液体ミルクに関して言えば、昼夜問わず行う授乳の手間を簡便化するメリットは非常に大きい。価格面と認知度の低さがネックになっているものの、後者の解決は徐々に進んで行きそうだ。価格面についても、ニーズが確立し、流通量が増えれば、値段が低下する可能性も見えてくるかもしれない。

個人差を尊重した多様な育児環境の醸成に、液体ミルクが一役買うのか。その動向を注視していきたい。

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