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嗜好品、医療用として大きなビジネスチャンスに…先進国でも”大麻解禁”の流れ、日本はどうすべき?



 多くの国で禁止されてきた薬物・大麻。しかし今、「ゴールドラッシュ」になぞらえた「グリーンラッシュ」という言葉が登場するほどビジネスチャンスが急速に広がっているのだという。

 その背景には、近年の研究結果から依存度がタバコや酒より高いことはないこと、摂取しても脳の萎縮はないことが分かってきており、世界保健機関(WHO)もガンや認知症の治療や緩和ケアにおける効果の可能性を認め、昨年には57年ぶりに大麻の安全性について規制の再検討を行うとしている。この動きを受け、先進7か国ではまずカナダが大麻全面解禁を発表。そしてアメリカでも州によって条件は違うものの、すでに30の州で使用が合法化されている。

 アメリカでは「まるでアップルストアのような大麻業界の先駆者的な存在」と、気軽に大麻を購入できる"大麻セレクトショップ"「MedMen」が人気を呼び、関連製品を自宅まで配達してくれるデリバリー大麻サービス「Eaze」が誕生するなど、市場が活発化。大麻の研究開発を行う学部を設置する大学まで現れた。

 北米における嗜好品産業の市場規模を比較すると「1位・ビール111億ドル」「2位・タバコ80.3億ドル」「3位・嗜好用大麻50~55億ドル」「4位・ゲーム36億ドル」「5位・ドーナツ19.9億ドル」と、すでに大麻が大きな市場となっていることがわかる。この急拡大を、アメリカ大手メディアは「スマートフォン市場の成長速度をすでに追い抜いている」と評している。

 東京工業大学教授の柳瀬博一氏は「アメリカの大手タバコメーカーや酒メーカーのほとんどがこのジャンルに出資していて、カナダの企業に出資するという流れも起きている。2020年代前半に3兆円マーケットになるとも言われている。8日から始まるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)という、日本からもソニーやパナソニックなど大手メーカーやベンチャーが参加するカンファレンスにも、今年初めて合法大麻のブースが出る。それほどの目玉産業だ」と話す。



 医療現場にも、その効用を高く評価する人もいる。元国立がん研究センター第一次予防研究室室長の福田一典医師は「アメリカではがん専門医の8~9割が大麻使用を支持している。緩和ケアのがん患者は、抗がん剤であれば吐き気とか嘔吐によって食欲がなくなって体重が減り、抑うつ気分になって睡眠障害になってしまうが、大麻はそれらを解決する。しかも脳腫瘍の場合、抗がん剤と併用すると生存率が上がるというデータも出てきている」と話す。

 そんな中、日本でも医療現場の大麻の使用をめぐり、国を相手どった裁判が行われた。



 2015年12月、自宅で大麻を栽培したとして大麻取締法の罪に問われた山本正光さん(当時56歳)。末期がんで余命半年を宣告された山本さんは、インターネットで"大麻ががん細胞を死滅させる"という情報を見て、藁にもすがる思いで厚生労働省や製薬会社に相談した。しかし国内では不可能だと断られてしまったため、自宅での大麻栽培に踏切、使用したところ、腫瘍マーカーの数値が10分の1以下に低下したという。

 「現代医療に見放された中、自分の命を守るためにやむなく行なった。医療目的で大麻を使うことは許されるべき。これは憲法で保障された生存権の行使である」と無罪を訴えた山本さんだったが、2016年7月、最終弁論を前に息を引き取った。

 大麻解禁賛成派の早稲田大学名誉教授で生物学者の池田清彦氏は「大麻を合法化しているのはほとんどが先進国なので、やはり色々な特許が先に取られてしまう。日本がこの先10~20年経って大麻を合法化しても、外国に金を払わないと使えないとなるとかなりの損失になる。そういうことも考えないとまずい。少なくとも日本として独自の研究を始めなければ絶対にまずい」と話す。



 我が国においては、古くは数千年前から布素材や紙、食用、燃料、痛みにきくハーブとして使用されていて、神道の道具としても使用された大麻。しかし1948年に大麻取締法が制定されてからは、使用や研究に制限があるのが現状だ。

 池田氏は「カナダで色々な問題は起きているし、若いうちから吸うと勉強ができなくなるといったデータもあるので、タバコと同じで解禁している国でも未成年は禁止されている」とした上で、「依存性でみればタバコやアルコールの方が上だ。タバコは始めると習慣性が強くて辞められなくなるけど、大麻は習慣性がないから止められる。また、例えば痛み止めのロキソニンもアレルギーが出る人がいるし、人体に害のない薬物はない。害があるからといって止めていたらほとんどの薬が使えなくなる。大麻のカンナビノールという成分についても、今は技術が進んでいて成分を分けることができる。政権を担っている人たち、衆参両議院が大麻解禁しようと思い始めれば、あっという間に変わると思う」と主張する。



 他方、規制を緩めることのリスクを指摘する声もある。元麻薬取締官の高濱良次氏は「大麻の成分によっては人体に与える影響が計り知れないものがあるだけに(国は)解禁というのはありえないとするスタンスを貫いている」と話す。



 大麻解禁反対派で多くの大麻や薬物に関する著書もある日本薬科大学教授の船山信次氏は「実は危険ドラッグの出発点は大麻だった。アメリカでは連邦法で大麻が規制されていたので、同じ作用の薬物を作ってそこら辺の葉っぱにまぶして"合法大麻"、"ニセ大麻"を作って吸った。最初は大麻でも、次第に効果の強いものを求めていってしまって、やがて他の薬物に手を出すことにつながる可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 さらに船山氏は医療用大麻の効果についても「それほどの効果は望めないと思う。薬は誰が飲んでもある程度の副作用はある。でもそれ以上の作用があるから飲む。それは統計的にも作用が証明されないといけない。大麻の性格は相当分かってきていて、副作用は必ずある。幻覚作用が出るに見合うだけの作用があるのだろうか。創薬研究者の目は節穴じゃないので、もし大麻がそんなに良かったら既にやっている。私は寡聞にしてあまり良い情報を持っていない。アメリカではごく自由に医療用大麻を使用できるが、良いデータはない」と指摘。安易な解禁に懸念を示した。

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