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あの「変装」を嫌がらないゴーン氏の余裕

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■巨額報酬は、資本主義の「暴走」と「ゆがみ」か

「保釈されたゴーン被告は日産会長として一時、年十億円を超す報酬をもらっていた。これに対し、株主総会で批判が出ていた」

「(日産の)経営再建に際し多くの系列会社が取引を停止され、社員も大量に去らざるを得なかった。多大な犠牲を払った上での再建だ。ルノーも再三困難に直面した。雇用不安を抱える従業員や株主らが、突出した報酬を批判するのは理解できる」

なるほど、ゴーン氏の「株主総会で批判され報酬」と「大きな犠牲を払った会社の建て直し」は問題である。ゴーン氏が富裕層であることは間違いない。東京社説は最後にこう訴える。

「ゴーン被告の巨額報酬は、格差の現実を改めて可視化し人々に提示した。それが資本主義のゆがみであるなら、たださねばならないだろう」

資本主義の「暴走」と「ゆがみ」。この2つの表現は実に分かりやすく現代社会を捉えていると思う。

■長く自由を奪うことで精神的に追いつめる

「人質司法」の問題については、に朝日新聞の社説(3月7日付)と産経新聞の社説(同)が詳しい。朝日社説はこう書いている。

「裁判所、検察官、弁護人の三者で争点や主張を整理する手続きが、まだ進んでいない段階での異例の措置だ」と指摘したうえで、こう書き進める。

「前会長の身体拘束がいつまで続くかに注目が集まり、外国メディアからは日本の刑事司法に対する批判も出ていた」

「そこには誤解や偏見も少なからずあったが、否認を続けると拘束が長くなるのはデータからも明らかだ。長く自由を奪うことで精神的に追いつめ、争う意欲を失わせる手段として、捜査当局が勾留手続きを利用してきたのは紛れもない事実だ」

■極端に言えば、戦前の特高警察のやり方と同じ

朝日社説は海外からの報道による日本の司法批判を正面から受け止め、「人質司法と呼ばれるこうした悪弊は、もっと早く是正されてしかるべきだった。しかしそれは果たせなかった。関係者はその教訓と責任を胸に、今回の事件を勾留実務の改革に結びつける契機にしてほしい」と改革を呼びかける。

検察の主張する罪を認めない限り、保釈せずに拘留を延々と続け、取り調べには弁護士を同席させない。被告人は精神的にも肉体的にも干上がってしまう。そこが検察の狙いなのだ。極端に言えば、戦前の特高警察のやり方と同じだ。

いくら起訴された被告人とはいえ、人権はある。人質司法の改革を求める朝日社説の訴えは分かる。ただ外国メディアの誤解や偏見をしっかり捉えて書いてほしかった。これでは事情を知らない読者は置いてけぼりだ。

■否認事件で保釈申請が認められるのは極めて異例

産経社説は保釈申請が認められたことに否定的だ。

「被告が起訴内容を否認している事件で、公判前整理手続きで論点が明確になる前に保釈申請が認められるのは、極めて異例だ。これを安易な先例とすべきではない」

朝日社説と同じく「異例」であると書くが、その後が「先例にするな」と大きく違う。見出しも「安易な先例化を危惧する」である。

■海外メディアの批判は、地裁の判断に影響を与えたのか

「弁護人を変更した3回目は国内住居に監視カメラを設置し、パソコンや携帯電話の使用を制限するなど、より厳しい条件を提示して保釈許可決定が出た」

「だが、証拠隠滅を回避する実効性を、弁護側が課す条件で判断することに問題はないのか」

「ゴーン被告はいまも日産の取締役であり、日産や事件の関係者に強大な影響力を行使できる立場にある。口裏合わせなどの可能性は否定できない」

「海外における資金の流れの全容解明は捜査の途上にあるとされ、ゴーン被告の保釈が今後の捜査や公判の維持に影響を与えることはないか、疑問が残る」

ここまでゴーン氏の保釈を問題視する産経社説は、バランス感覚を欠いていないだろうか。検察擁護の社説と受け取られても仕方がない書きぶりである。

新聞社の社説にはバランス感覚が必要だ。その感覚を失ってスタンスばかりを重視していると、やがては読者も失う。そこを理解してほしい。産経社説はこうも書く。

「長期の勾留に対してはゴーン被告自身の強い反発があり、主に海外のメディアからも強い批判があった。これらが地裁の判断に影響を与えたとすれば問題だろう」

なぜ海外メディアからの批判に耳を傾けてはいけないのか。いまの国内外の世論の動向を知ってこそ、裁判官は時代に沿った判断ができる。これからの司法には柔軟な思考が要求される。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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