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「平成23年度における公債の発行の特例に関する法律」 賛成討論

 自由民主党・無所属の会を代表して、政府の「平成23年度における公債の発行の特例に関する法律案」に対して賛成の立場で討論を行うものである。

 予算は政府の姿勢そのものであり、それを裏付ける財源もまた同様である。しかるに、平成23年度においては、予算は成立しているにもかかわらず、その執行を可能とする37兆円の公債特例法案がいまだに成立していないという異常な事態が8月11日の今日まで続いている。これは菅内閣自体が極めて異様な政権であったことを証明するものに他ならない。

 国民にとって誠実な政府とは何か。それは、選挙を常に強く意識し、国家・国民の利益よりも、政党の利益を優先させるような姿勢を決してとることなく、ポピュリズムに堕することのない政府である、と私は確信する。

 二年前の丁度今頃を議員各位は今一度想起していただきたい。あの酷暑の中で行われた総選挙において、民主党公認候補者は有権者に対して一体何を訴えたのか。「子ども手当は一律2万6千円支給する、高速道路は全国無料化する、高校は無償化する、農家には売れた金額と生産に掛かったコストの差を戸別補償する」と訴えたはずだ。そして「マニフェスト実現に必要な予算は2010年度で7.1兆円、2011年度で12.6兆円、2012年度で13.2兆円、2013年度で16.8兆円である。この財源など無駄を省けばいくらでも出てくる。消費税率アップなど議論する必要もない」と豪語し、政権を獲得した。あれから2年、その実現はどのように図られたのか。その総括も、反省も、国民に対する明確な謝罪もいまだに行なわれていない。

 昨年の参議院選挙において、民主党のマニフェストには国民から大きな疑問が投げかけられ、参議院の与野党の議席数は逆転した。この国民の審判を謙虚に踏まえれば、平成23年度当初予算編成においてマニフェストを大幅に見直すことにより、野党の理解が得られる内容とし、特例公債の発行額も縮減されるのが当然であったはずなのに、菅内閣は一顧だにしなかったのみならず、3月11日に未曽有の大震災・大津波が発生してもなお、我が党が要求した予算の組み替えに応ずることはなかった。そして、「マニフェストは相当程度達成されている。いまだに衆議院四年の任期の半ばであり、あと二年待って欲しい。公債特例法案の成立が遅れているのはこれを政争の具としている野党の責任である」などと虚言を弄し、強弁を繰り返してきたのではなかったか。

 菅内閣の本質は、「面倒なことは先送り、悪いことはすべて他人の所為」という姿勢に尽きる。それが最も明らかな形で現れたのがこの公債特例法案成立の遅れであり、発災から丁度五か月となる今日においてなお、復興はおろか、復旧すら遅々として進まない被災地の現状であり、抑止力について深く考え、よく学びもしないままに軽はずみな言辞を弄して沖縄の信頼を失い、解決の目途が全く立たない普天間基地の移設問題である。

 我々は一貫して「ばら撒き政策」、即ちそれぞれの人々や地域の特性を一切捨象するが故に政策効果に乏しく、財政危機の今日にも拘らず巨額の予算を必要とし、その財源の当ても全くない、マニフェスト主要政策の修正・撤回を求めてきた。

 今回我々が公債特例法案に賛成する決断に至ったのは、一連の自民・公明・民主三党の協議の結果、子ども手当は撤回され、来年度からは児童手当の復活、拡充が実現すること、高速道路無料化の社会実験は平成二十四年度予算に計上されないこと、高校無償化と農家戸別所得補償については、制度のあり方につき政策効果の検証を基に必要な見直しが検討されることについて合意を見るとともに、歳出の見直しについては、「今年度における歳出の削減を前提に、今年度第三次補正予算ならびに来年度予算の編成プロセスなどにあたって、誠実に対処すること」が確認されたからである。

 もちろんこれで決して充分ではなく、今後さらに詰めていかなくてはならない課題は数多く存在する。自民党は、既に行っている民主党の主要政策の政策効果の検証を更に精緻に行い、必要な見直しの実現に向けて最大限の努力を行うものである。高速道路料金は受益者負担の原則を貫くことが当然である。
一律支援を行うことにより、美名のもとに格差解消の本質を見失った高校無償化は見直すべきである。農家戸別所得補償は、重点化の視点をさらに充実させるとともに、条件不利地域に対する日本型の直接支払の実現を図るべきであり、基盤整備費を所得補償の財源に充てるなどというブレーキとアクセルを同時に踏むがごとき支離滅裂な政策は見直さなくてならないのもまた当然のことと考える。

 最後にこれだけは申し上げておく。民主党は「マニフェストは国民との契約である」と高らかに宣言したはずだ。それを大きく見直すのであれば、一方の契約の当事者であり、主権者たる国民・有権者に対して、何故これを見直すに至ったのか、明確かつ真摯な説明と謝罪が必要なはずであり、本来なら今一度国民の信を問うべきものである。三党協議の際、このことを再三にわたり指摘してきたにもかかわらず、幹事長が通り一遍のお詫びをしただけで済まそうとする姿勢は、極めて不誠実であると断ぜざるを得ない。七月中に行なわれるはずであった民主党のマニフェスト検証作業も、いまだその方向性が示されていないことも極めて問題である。

 菅総理がようやく退陣を明言し、今国会中に民主党代表選挙が行われ、新内閣が発足する運びとなっている。民主党の小沢元代表は昨日の講演で、「公約の実現が難しくて出来ないというのなら『もう辞めなさい』となってしまう。何としても国民との契約を実現しなくてはいけない」と述べたと伝えられる。「難しくてできない」のではなく「そもそも出来もしないことを約束した」ことが問題であるとの認識が決定的に欠如している。来たる民主党代表選挙においては、復興財源のあり方とともに、このマニフェストの見直しと、今後の野党との関係が大きな争点となるのであろう。本来選挙で国民に信を問うべき事態であるにもかかわらず、被災地の現状、予断を許さない国際経済情勢をも勘案して、なぜ我々が賛成するに至ったかを、代表選の結果がこれからの日本国の命運を決定づけることになることを認識して、民主党の諸君は深く考えるべきである。

 勿論我々は、マニフェストだけで選挙に敗れ、下野するに至ったとは考えていない。自民党は永く政権の座にあったことにより、いつしか国民に対する怖れと感謝の念を失ったと国民は感じ、自民党に対する拒絶感が横溢していたことは間違いない事実であり、私は政権内部に居た者としてその責任を痛感している。

前回総選挙の結果は「自民党が駄目だから民主党」という国民の選択でもあった。来たる総選挙では「民主党が駄目だから自民党」という選択を国民に求めるようなことがあってはならない。そのような「駄目比べ」を繰り返していたのでは本当に日本国が終わってしまう。自民党は、謙虚に、真摯に政策を練磨し、心ある諸君と共に日本の再興を実現するために政権を再び託して頂ける日が一日も早く到来するべく全力で邁進することを申し上げて私の討論とする。 以上

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