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特集:日本経済の緊急再点検

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●「戦後最長」の景気拡大ではなかった?

非常にタイミングの悪いことに、政府は今年に入ってから「現在の景気拡大局面は戦後最長」と宣言したばかりである。2012年12月から始まった景気拡大局面は、2019年1月で74か月目となり、前回の「いざなみ景気」(第14循環)を上回ったことになる2

とはいえ、厚労省による毎月勤労統計の不適切調査が発覚し、政府統計には疑問が寄せられている。そうでなくても、現在の景気の体感温度は高くない。「景気回復を実感していない」という声は非常に多いのである。

○戦後の代表的な景気拡大局面
* 神武景気 1954年12月~1957年6月(31か月)=第3循環
* 岩戸景気 1958年7月~1961年12月(42か月)=第4循環
* いざなぎ景気 1965年11月~1970年7月(57か月)=第6循環
* バブル景気 1986年11月~1991年2月(52か月)=第11循環
* いざなみ景気 2002年2月~2008年2月(73か月)=第14循環
* アベノミクス景気 2012年12月~継続中?(75か月?)=第16循環

ただし「景気実感」を語るには、いささかの留保が必要だ。過去の拡大局面を比較してみると、20世紀の景気拡大局面と21世紀のそれではあまりにも違い過ぎるのだ。

今も人口に膾炙する「いざなぎ景気」(第6循環)とは、高度成長期の57か月間で、東京五輪から大阪万博までの時期に当たる。「3C」景気(カー、カラー、クーラー)などという言葉があったほどで、名目では毎年2桁成長が続いていた。当時の日本は今でいう新興国のようなものだから、現在とは全く別物と考えるべきであろう。


その点、今回超えたことになっている「いざなみ景気」(第14循環)は、2002年1月~2008年2月である。小泉政権下の輸出主導型の回復で、就業者数の伸びを伴わず、他方では「ヒルズ族」のような若い富裕層が登場したので、「格差が広がった」と評判が悪かった。また景気回復は東海や関東、近畿など、輸出企業の多い地域に偏っていた。

それに比べれば、現在の「アベノミクス景気」は名目GDPの成長があり、就業者数が増えている分だけ「まだマシ」と言っていいだろう。

ともあれ、21世紀の景気拡大局面は成長率が非常に低く、「回復」実感を伴わない。ゆえに皆が覚えてくれるような名前もつきにくい。個人的には第14循環を「小泉景気」、今回の第16循環を「安倍景気」と命名すればいいと思うのだが、その場合はほぼ確実に「それは小泉”不”景気と安倍”不”景気の間違いだろう」というツッコミが入ることだろう。ところが両期間の間に入るのは、「リーマンショック」(2008年)と「東日本大震災」(2011年)という不幸の極みなのである!

●景気拡大の持続確率は半々か

ただし物事は考えようである。今日の景気の山谷が弱いのであれば、外需によるショックを受けたときの落ち込みも、それほど深くはならないのではないか。

実際、今次の景気拡大局面は、①2014年夏には消費増税の影響で、②2016年には中国経済の減速により、2度「腰折れ」しかけたことがある。それでも何とか拡大が持続しているのは、景気の山谷が見えにくくなっているからであろう。

真面目な話、景気サイクルが生じる主因である「金利と物価」の変動は、今ではほとんどなくなっている。経済のサービス化が進んだおかげで、「在庫サイクル」も弱まっている。となれば、2019年の日本経済が3度目の試練に耐えて、弱々しい景気拡大が続く、というシナリオも十分に考えられよう。

あらためて現在の景気を再点検してみると、個人消費と民間設備投資は意外と強い。

例えば本日発表の景気ウォッチャー調査も、現状判断DIは前月比で微増となっている(1月45.6→2月47.5、+1.9)。コメント欄を見ると、「久しぶりにファッション衣料が売れている」(南関東)、「バレンタイン商戦も好調に推移」(東海)、「ゴールデンウィークの10連休も控え」(甲信越)、「外国人観光客対応のための求人が増加する」(北海道)などと明るいものが目につく。

ひとつには間近に迫った改元が、心理的なプラスに働いている可能性がある。考えてみれば昨年後半以降、「平成最後の××」というフレーズを何度聞いたことか。どうやら日本国民は「時代の変わり目」を楽しんでいて、その気持ちは2月23日の皇太子殿下59歳の誕生日、24日の天皇陛下在位30周年などを機に高まっているように見える。そのことはたぶん、景気にはプラスに作用するのだろう。ましてこの後、4月1日に新元号が公表されたら、一気に世の中は慶祝ムードになっていくのではないだろうか。

民間設備投資もそれほど悪くない。近年の日本企業は、「3月の年度末に向けて、決算を少しずつ上方修正していく」という保守的な行動パターンが定着している。おそらく社内に、かなりのバッファーを持っているのであろう。

米国や欧州で、金融政策がハト派に向かっているにもかかわらず、為替がそれほど円高に向かっていないことも、安心材料となっている。逆にこの先、急激に円高が進むようだと、企業を取り巻く環境が一変することも十分に考えられる。

しかし、最大の不透明要因は「中国経済」ということになるだろう。

2016年の景気減速局面において、中国はおそらく翌年の党大会を意識して、思い切りインフラ関連投資のアクセルを踏んだ。そのお陰で景気は浮揚し、17年はアジア経済全体が好調に推移した。しかし18年の年央からはそれが弱まり、日本を含むアジア経済全体が減速し始めている。

それでは中国はこれからどうするのか。今週から始まった全人代では、目標とする成長率を6.0~6.5%と低めに定め、大型減税(2兆元=33兆円)や社会保険料削減を打ち出している。しかし、固定投資は増やさない覚悟を決めているようである。景気テコ入れのためのインフラ投資は不良債権を増やし、財政赤字を拡大するだけになりかねない。すなわち、「毒を飲んで渇きを癒す」ことになってしまう。

問題はその先に、米中通商協議の大詰めが控えていることだ。トランプ大統領相手の出方は難しい。3月後半は英国のEU離脱も大詰めとなる。もっともこうしたイベントリスクが多いのは、今に始まったことではないのである。

○今後の主要政治日程

本号の結論として、アベノミクス景気の持続可能性はざっくり50対50と見ておくこととにしたい。外的なショックで景気が腰折れする、というパターンは今さらめずらしくはないが、内需の堅調さが外的なショックを補う、というシナリオもあり得る点が目新しいといえるだろう。


1 これら4カ国・地域向けの1月輸出は、すべてマイナス2桁の伸びとなっている。
2 「いざなぎ景気」よりも長い、ということで付いた名前だが、定着したとは言い難い。「いざなぎ越え景気」などとも呼ばれる。「古事記」から命名するのは、そろそろ卒業したいものである。

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