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特集:日本経済の緊急再点検

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足元の景気に黄色信号が点滅しています。きっかけは先週2月28日発表の1月鉱工業生産から。中国経済の減速に伴う輸出の不振などにより、生産を抑制する動きが急速に広がっているようです。個人消費と民間設備投資は意外と好調なのですが、今後の米中貿易戦争の広がり次第では、景気失速の怖れも無視できません。

今週3月7日には、政府が1月の景気動向指数の一致指数の基調判断を「下方への局面変化」に下方修正し、警戒感が一気に広がりました。これは前回2014年の消費増税以来のこと。今回は景気にまつわる「嫌な予感」の正体を探ってみたいと思います。

●日本経済は「生産」と「輸出」から見よ

以前、エコノミスト同士の会話にこんな問題が出たことがある。

「景気指標を1つしか見られないとしたら、どの指標を選ぶべきか?」

そのとき、ほぼコンセンサスとなった答えは、「米国ならば雇用統計、日本ならば鉱工業生産」であった。移民が作った国であり、個人消費が何より大事な米国経済においては、雇用の動向がもっとも重要な指標となる。日本経済の場合はモノづくりがいちばん大切で、第2次産業の浮き沈みに沿って景気変動が生じる。日米の経済を比較するときに、これは意外と重要なポイントであるかもしれない。

筆者も日本経済を見るときに、もっとも重視するのが鉱工業生産である。できれば貿易動向も押さえておきたい。わが国の輸出と生産は連動していて、案外と今でも「生産は輸出次第」である。その意味で、1月の貿易動向(2/20、速報)と鉱工業生産(2/28、速報)はともに衝撃的な落ち込み方であった。


1月の鉱工業生産は前月比▲3.7%低下となった。指数は昨年10月の105.9から3カ月連続のマイナスで、1月は100.8と振出しに戻ってしまった。生産のマイナス寄与度が大きかったのは自動車工業、電機・情報通信機械工業、生産用機械工業など、日本のモノづくりの基幹産業ばかりである。これはもう警戒警報発令と言っていい。

経済産業省の予測では、2月鉱工業生産は+5.0%、3月は▲1.6%となり、少しは戻すことになっている。しかしこの通り機械的に計算してみても、足元の1-3月期の生産指数は前期比▲1.4%となってしまう。経験的に言って、GDPも同じくらい凹む公算が大である。

3月8日朝に公表された2018年10-12月期GDPの2次速報は、1次速報の1.4%(年率)が1.9%に上方修正された。これは法人統計季報で見る企業の設備投資が堅調であったから。しかるに2018年の成長率は1-3月期が▲0.4%、4-6月期が+1.9%、7-9月期は▲2.4%、10-12月期は+1.9%となり、足元の19年1-3月期がまたまたマイナスでは、「長期にわたる足踏み状態」ということになる。マイナス成長が2期続くわけではないから、「テクニカル・リセッション」とはならないものの、「持続的な成長」とも言い難くなる。

生産の落ち込みは、1月の輸出不振をそのまま反映している。1月の輸出額は5.5兆円で前年同期比▲8.4%であった。特に中国向けの落ち込みが激しく、同▲17.4%。アジア全体でも▲13.1%となり、ハイテク関連を中心に総崩れになっていることが見て取れる。

2018暦年の数字でみると、日本の輸出額に占める中国向けシェアは19.5%と米国向けの19.0%とほぼ同じである。ただし、香港+台湾+シンガポール+韓国という中国経済の影響を受けやすいアジア圏向けを合計すると、これまた20.7%とほぼ同額となる1。つまり直接・間接を合わせると、日本の輸出の約4割が中国経済減速の影響を受けることになる。日本はけっして安全地帯ではないのである。

●景気は1月に腰折れしていた?

本誌の昨年12月14日号「2019年の日本経済をどう見るべきか」では、「内閣府の基調判断が丸1年変わっていない」ことを指摘した。それ以前は、「景気は、緩やかな回復基調が続いている」であったものが、2018年1月から「景気は、緩やかに回復している」に上方修正され、そのまま1年間、ずっと変わらなかった。とうとう今年2月には14か月連続となった。これだけ長く同じ文言が使われたことは初めてであろう。

しかし3月は久々の下方修正ではないだろうか。2月の月例経済報告は、前月に比べて生産と企業業績の評価を引き下げている。その後に1月の衝撃的な鉱工業生産が公表されたことを考えると、3月は更に引き下げなければならないことになる。

果たして内閣府はどんな判断を示すのか。国会での予算審議が大詰めを迎える時期に、景気の悪化を認めることは政治的なリスクを伴いそうだ。何しろ今国会で審議しているのは、10月1日からの消費税アップを盛り込んだ予算案である。すなわち、3月末は増税を延期するラストチャンスということになる。実際問題として、そのタイミングで「増税抜き」の予算案を政府が再提出できるとは考えにくいのだが、その時期には既に統一地方選挙第1陣の公示も終わっている。野党に格好の攻撃目標を与えることは避けられない。


だが景気が1月頃に腰折れした、と考えると、株価が昨年9~10月に天井をつけていることと整合的である。経験的に言って、株価は景気が「山」となる半年前くらいにピークをつけることが多いからだ。その場合、日経平均株価は昨年12月下旬をボトムに上昇中であったが、今後は調整局面に入るということになるだろう。

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