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【読書感想】「承認欲求」の呪縛

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 著者は、いまの日本の社会で「承認欲求の呪縛」を乗り越えて、不正を告発することの難しさについても述べています。

 内部告発者は公益に対する貢献者であっても、会社や職場という共同体にとっては「裏切り者」である。そのため、たとえ制度によって保護され、処遇の面では直接不利益をこうむらなくても、上司をはじめ周囲からの信頼を失う。とくに告発によって会社や同僚の利益を損なう場合には、孤立無援になるのを覚悟しなければならない。

 忘れてならないのは、普通の会社員や公務員の場合、準拠集団すなわち自分の能力や人格を評価してくれるところ、プライドのよりどころは職場だけだということである。公益のためにそれを敵に回して告発せよということが、どれだけハードルが高く、非現実的かを考えてみるべきではなかろうか。

 ところが最近になって、わが国でもレスリング、ボクシング、体操、重量挙げなどアマチュアのスポーツ界で指導者のパワハラを内部告発するうごきが相次いだ。官僚の記者に対するセクハラ発言や、市町村長の職員に対するセクハラが被害者から告発されるケースもあった。

 堰を切ったように起こりはじめた内部告発の動きを目にして、ようやく日本の組織も変わってきたのかと思いきや、外国人留学生たちから意外なコメントが返ってきた。

「私たちはハラスメントを受けたらその場で抗議する。なぜ日本人はその場でおかしいとか、やめてほしいとか言わないのか」と。たしかに、その場で抗議していたらあとで告発する必要はなかったかもしれない。だとしたら、やはり「承認欲求の呪縛」がいまらに解かれていないことになる。

 繰り返し述べているように、日本の組織は外の世界から隔てられた「共同体」の性格が強く、メンバーは内部の規範や人間関係を強く意識し、そこで承認を失うことを極度に恐れる。その事実を忘れると諸々の対策は効果がないばかりか、かえって逆効果になりかねないということだ。


 対策としては、複数のまったく違う構成員の集団に所属することによって、ひとつの組織への依存を下げることや、多様な価値観に触れること、などがあるのですが、ある組織の中で、懸命に活動していたり、重んじられる存在になっていればいるほど、そういう「リスクの分散」が難しいのが日本の社会なのです。
 いろんなことをやっている人は「どっちつかず」だと言われることも多いですし。
 
 読めば読むほど「うまく認めるのも、認められるのも難しい」と思わずにはいられない本でした。
 

認められたい

認められたい

承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

「認められたい」の正体 承認不安の時代 (講談社現代新書)

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