- 2019年03月06日 16:51
東京五輪控えた宿泊施設の枯渇危機、切り札は地元共生型ホテル?
2018年、インバウンド訪日客が3,000万人を超えた。東京五輪を控え、ますますインバウンドの増加が見込まれる。そうしたなか、懸念されているのが宿泊施設の枯渇だ。この問題を少しでも解消するべく、デベロッパーの動きが活発になってきた。
まず、野村不動産。同社はこれまでホテル事業には参画していなかったが、2018年11月に「ノーガホテル上野」を始動。東上野という、少しニッチな場所にホテルをかまえた。だが、上野地区は観光資源が豊富。上野駅の西側には上野恩賜公園を中心に、パンダを飼育する動物園や世界文化遺産となった国立西洋美術、藤堂高虎や天海僧正による上野寛永寺がある。そして少し足を伸ばせば、浅草寺にもアクセスしやすい。
特に浅草寺はインバウンドに人気のスポットで、連日、雷門の前で外国人が写真撮影を行っている。さらに、もう少しするとサクラの季節だ。上野恩賜公園や隅田川のサクラを目指して来日する外国人であふれることは間違いない。以前、上野公園で花見をするという同僚たちに合流する際、まったく身動きが取れなかったのを憶えている。
ここに野村不動産のねらいが見え隠れする。前述したように、同社がホテル事業に参入するのはこれが第一弾だ。失敗はしたくないだけに、観光資源が豊富で、インバウンドの集まりやすい地でノウハウを蓄積するというのは自然な流れだ。なお、今後もノーガホテルブランドを各地で展開する予定だ。
ホテル・レジデンス・スモールオフィスからなる複合施設
一方、安田不動産はコンセプトのユニークさで勝負をかける。東京・日本橋浜町にオープンした「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」は、その名前のとおり、ホテルとレジデンス、スモールオフィスが一体化した施設だ。
ホテル・レジデンス・オフィスが一体化した複合ビルは東京の中心地に集まっているが、その多くは高層ビルによる高級路線だ。だが、HAMACHO HOTEL&APARTMENTSは地上15階と、高層ビルに入居する高級路線のホテルに比べれば若干見劣りする。そしてオフィススペースも少人数で利用する規模のものが中心。ただ、そのぶん敷居が低く、利用しやすいというイメージが強い。
そして何よりも、ホテル客とレジデンスに住む客とのコミュニケーションを重視しているのが特徴だ。ホテルのエンタランスは共用で、宿泊客とレジデンスの住人が交流できるようになっている。さらにチョコレートショップ「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」を設け、このスペースでチョコレート職人による「手しごと」を見学できる。そしてチョコレートショップに併設されるカフェでは、ワークショップが開催され、宿泊客と地元住民のコミュニケーションを図る。
共通するのは地元産業との連携
そして両ホテルには共通する特徴がある。それはホテル立地付近の地域との連携を大切にしていること。ノーガホテル上野は、東上野に立地していると前述したが、この地域は職人の街でもある。江戸切り子や銀食器といった職人の手によるプロダクツをホテルで利用・購入できる。
またHAMACHO HOTELも地域住民とゲストの交流の場とすることを掲げている。nel CRAFT CHOCOLATE TOKYOのほか、宿泊客や街の人に提供するパンの工房も備えている。こうした食品により「日本橋浜町自家製」を掲げ、特色にしているのだ。
インバウンド観光客による「爆買い」はひとまず落ち着いた。その頃に売れたのは家電製品やブランド品だった。家電は日本製品の性能が高いことが彼らの消費を促し、ブランド品は日本のショップに対する信頼性が高かったため売れた。それが少しずつシフトし、「地元でしか買えないもの、地元でしか食せないもの」が外国人に受け始めている。
さらに言えば、両ホテルには宿泊料金にも共通点がみられる。例えばダブルルームの場合、だいたい15,000~30,000円だ(シーズンやプランによって変動、スイートルームはのぞく)。つまり、2人で宿泊すれば、1人あたり10,000円を切る宿泊費で済ませることもできる。
旺盛なインバウンド需要によって、今やビジネスホテルでさえ1泊1部屋10,000円以上ということも珍しくはない。そう考えると狭いシングルのビジネスホテルよりも、ミドルクラスのダブルに泊まるという選択肢も悪くはない。もっとも、伴侶や恋人、友人などと宿泊し、宿代を折半しないとコストパフォーマンス的にはビジネスホテルに劣るが……。
いずれにせよ、両ホテルは客室数100~200とそれほどの規模ではない。ただ、訪日外国人を刺激しそうな“地元の産物”などと連携することで、特色を打ち出そうとしている。宿泊施設の枯渇を見据えたホテル開業は続くだろうが、訪日客のニーズの変化もはじまっているなか、地域密着型を特徴とした今回の両ホテルのように、コンセプトを際立たせた宿泊施設が増えていきそうに思われる。
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