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行政改革と国会改革

経済産業省の官僚時代、「新しい霞ヶ関を創る若手の会」(通称:プロジェクトK)という省庁横断的な若手官僚からなる集まりを主宰し、組織・人事・業務の3方面から具体的な霞が関改革案をまとめたことがある。

会の趣旨は、「霞が関に跋扈する不毛な議論や無駄な業務を減らし、長期衰退状態にある日本を建て直すべく、より質の高い政策を作れるようにしよう」というものであったが、公務員制度改革や霞が関における司令塔機能の強化など、提言した内容は、数年の歳月を経て、形を多少変えつつ、かなり実現してきているという気がする。

ただ、当時から、どうしても乗り越えられなかった壁が国会の改革だ。「霞が関(=中央省庁・行政府)の改革と、国会(=立法府)の話は別物では?」と思われる読者諸賢も少なからずいらっしゃると思うが、両者はかなり密接につながっているというのが当時も今も変わらない私の見立てだ。

現に、例えば、「霞が関の仕事って具体的に何ですか?」という話になると、具体的には、国会・国会議員対応が話題になることが非常に多い。今も昔も、デートに遅れる際の恋人への言い訳や、帰宅が遅れる場合の配偶者への弁解として、官僚が頻繁に用いる言葉の上位に来るのが「国会対応が長引いて」とか「議員説明対応が急に入って」といった類の発言だ。

法案を例にとって、もう少し霞が関と国会(議員)との関係を構造的に書こう。例えば、ある法案を行政(霞が関)側で考案しても、それがそのまま内閣提出法案として国会で審議されて通るわけではない。政権与党との水面下・あるいは党の部会等会合を通じた調整の中で原案が修正され、いわば、闇の中で何度も原案が「捻じ曲げ」られる。そうした案をベースに、与党が多数で通るのが分かっている法案を国会で審議するわけだ。

国会(議員)のプロセスが不要だと言っているわけではない。日本は民主主義国家であり、法案は文字通り「立法府」で作られるので必要なのは当然だ。ただ、過度に前半の「闇の与党調整プロセス」が長く、後半の「オープンな国会プロセス」が形式化しているのは確かである。そして、両方のプロセスで主に苦労するのは官僚だ。前半の闇のプロセスを少しでも簡略化し、国会では、官僚ではなく議員同士(厳密には議員や国会のスタッフも含む)が、意味のある建設的議論を通じて原案を修正していくことが本来は望ましい。

例えばこうした改革を実現するだけで、官僚の仕事は格段に効率化され、やりがいも増し、霞が関において、より本質的な調査や、各種原案の実質的・科学的な比較検討などを行えるようになることは間違いないと思う。

こうした構造的事情もあり、上記のプロジェクトKでの議論当時から、「国会の本質的改革なくして、行政改革は無理」といった意見も強かった。ただ、「改革対象の焦点がぼける」ということで、結局、ほぼ完全に霞が関側で対応できる内容に絞った形で(国会は改革の対象に含めず)、「霞が関構造改革案」を議論し、発表することとなった。が、私自身、若干の残尿感を抱いたことは事実だ。

そんな中、昨今、まだあまり目立たない形ではあるが、国会改革の議論が若手を中心に盛んになってきていることは誠に喜ばしい。与野党の若手議員を中心に「平成のうちに」衆議院改革実現会議が昨年夏に国会の改革案を発表したことを皮切りに、各所で色々な議論が巻き起こっている。文字通り「平成のうちに」実現するのは難しそうな情勢だが、右会議は、「やりやすさ」を中心に検討を進めたと思われる内容を発表しており、IT化、党首討論、質問通告のあり方などを提言している。

そのほか、実現性の問題はあるが、国民民主党、立憲民主党などが、具体的な国会改革案を取りまとめて公表している。驚くのは、割と各議員が個人として自由に国会改革についての発言をしていることだ。

例えば、去る2月25日(月)の夜に、政策分析ネットワークと上記のプロジェクトK、それに、青山社中の3者の合同イベントとして行政改革や国会改革について与野党を超えて4名の国会議員をパネラーに迎えて議論が行われた(国会改革についてのセッションのモデレーターは私が務めた)。自由民主党から小林史明議員、村井英樹議員、国民民主党から泉健太議員、立憲民主党から道下大樹議員がパネラーとして参加されたが、村井さんの提案であり、上述の「平成のうちに」の基本線になっている「国会の議論を1)党首討論(国家の大きな方向性)、2)委員会審議(法案や個別政策案)、3)特別調査会(スキャンダルのチェック)、の3つに分けること」については、与野党を超えてほぼ異論なく話が進んだことに驚愕した。

圧巻だったのは、野党の議員である泉議員が、「野党は、国会の審議を無暗に止めて法案等の成立を遅らせても仕方ない。与党が通した案が本当に良かったかどうかが問われるのがその後の選挙なので、その事後チェックに委ねたらいい」という趣旨の発言をしていたことだった。野党がこういう姿勢を取るとしたら、行政も無駄な時間を使わずに済むことは必然だ。

ペーパーレス化はもちろん、会議システムや分身ロボットの活用(海外出張等をしても国会参加が可能)といった新たなテクノロジーの導入から、審議日程の決め方に至るまで、最近、若手の議員が色々と活発に発言している。官僚を活かすも殺すも国会・国会議員次第ということを意識して、迅速に改革を進めていただきたいと強く思う。

筆頭代表CEO 朝比奈 一郎

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