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「黒人男性を殺そうと思った」発言で物議かもすシンドラーのリスト主演男優・リーアム・ニーソンは“正直すぎた”のか?

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Getty Images

『シンドラーのリスト』主演実力派スターの失言

今月上旬、英領北アイルランド出身の俳優リーアム・ニーソンがその「失言」によって非難の嵐に見舞われた。過去に「黒人を殺そうと思った」と述べたことで、「人種差別主義者」というレッテルが貼られてしまった。

ちなみに、人権擁護、多様性を社会の共通の価値観とするアメリカや筆者が住むイギリスでは、「人種差別者」と呼ばれることは「最低の人間」と判定されたことに近い。

そんなレッテルが貼られてしまうなんて、筆者も含め、多くの人が「あの」ニーソンが?と驚いた。

彼の名前を知らない人も、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『シンドラーのリスト』(1993年)の主人公オスカー・シンドラーを演じた俳優と言えば、まずは納得するだろう。

シンドラーは第2次世界大戦中に1000人を超えるユダヤ人をナチスによる虐殺から救った人物で、ニーソンはシンドラー役で米アカデミー賞主演男優賞を獲得している。

その後、アイルランドの英国からの独立運動を指導した大物政治家マイケル・コリンズ役の『マイケル・コリンズ』(1996年)、『スター・ウオーズエピソード1/ファントム・メナス』(1999年)の主役、『ナルニア国物語』シリーズ(2005年から10年)ではナルニアを創造し、手助けするライオン(の声)など堂々とした役柄を当てられる一方で、ラブコメ『ラブ・アクチュアリー』(2003年)では息子の恋愛を一生懸命支援する武骨な父親を演じた。

プライベートでは、女優でもある妻スターシャ・リチャードソンとおしどり夫妻として有名だったが、2009年、リチャードソンはスキー中の転倒で急死した。

押しも押されぬ、実力派の大スター、最愛の妻を失った憂いを持つ男優・・・そんなイメージを持つ人が多い。しかし、今回の事件で一転して人種差別疑惑が発生したことで、これまでの評判に大きな傷がつきそうだ。

新作映画へのインタビュー記事が波紋

きっかけは、英「インディペンデント」紙のインタビュー記事(2月4日)だ。

新作『コールド・パースート』で、息子を殺害されて復讐する父親を演じたニーソンは、記者に役作りについて聞かれた。「怒りの行動に出る父をどうやって演じたのか?」

ニーソンは、「40年以上前に起きたある事件」を話し出した。北アイルランドに住む女性の友人がレイプされたという。誰にレイプされたのか?。彼女は特定できなかったが、ニーソンが人種を聞くと、「黒人だった」と答えた。

そこでニーソンはこん棒を手にして、黒人市民が多く住む地域に向かった。「『黒人のろくでなし』の誰かがパブから出てきて、自分にかかってこないかと待ちかまえていた」。もし攻撃を受けたら、相手を「殺せる」と思ったという。

1週間ほど、ニーソンは黒人街にこん棒をもって出かけた。

その後、関連した暴力事件は発生せず、時が過ぎた。

ニーソンは、復讐ドラマである新作映画と関連付けて、自分に親しい人が暴力の犠牲者となったとき「原始的な衝動」が起きることを説明しようとした。

しかし、2月4日にインディペンデント紙の記事が出た後、「黒人を殺そうと思った」という発言は人種差別的であるとして、『コールド・パースート』公開直前のアメリカで、非難の大合唱となった。ニーソンは「当時の行動を恥ずかしく思っている」と述べていたが、すでに時は遅し。

翌5日、ニーソンは米ABCの朝の番組に出演し、発言の趣旨について改めて説明したが、バッシングは収まらず、この日の夜に予定されていた封切り前のイベントは中止。8日、トーク・ショー「ザ・レイトショー」への出演も、取りやめとなった。

21日、『コールド・パースート』がイギリスでも封切りとなったが、筆者が複数の映画評を見たところでは、星5つが最高のスコアのところ、2つか3つが多い。映画が「殺害された息子のために復讐をする父親のドラマ」で、「敵」の命を奪ってゆくニーソン演じる主人公に「黒人を殺したいと思った」というニーソン自身の姿がダブってしまう点が、映画のドラマとしての良し悪し以外に、後味の悪いものにしているようだ。

ニーソンの新作映画に星2つの評価を付けた、デイリー・テレグラフの映画評(2月22日付、筆者撮影)

「黒人を殺そうと思った」発言に賛否

ニーソンの発言を批判的に見た人と支持した人の声を紹介してみる。

まず、特定の人種を「殺したいと思った」のは穏やかではない。

「ニーソンは、もちろん人種差別主義者だ。黒人男性を無差別に殺したいと思って通りを歩いていたのだから」(ロサンゼルス・タイムズ紙のカーラ・ホール氏)。「今、どれほど彼は変わったのか?」

「こん棒を手にして黒人街を歩き回っていたとは。なんて恐ろしく・・悲しいのだろう」(英デイリー・メール紙のエバ・シンプソン氏)。

「たった一人の黒人青年の犯罪をすべての黒人男性の罪と見なすのは、人種差別的だし、間違っている」(英スペクテーター誌、ブレダン・オニール氏)。

一方、一緒に映画界で働いたことがある黒人女優ウィーピー・ゴールドバーグは「ニーソンは人種差別主義者ではない。長年一緒に働いてきたから、わかる」。

元サッカー選手で人種差別撲滅運動を行っている、ジョン・バーンズ氏は肯定的に見る。「ニーソンは自分が間違っていたことに気づいた」からだ(BBCのラジオで)。これをきっかけに人種差別問題について「もっともっと会話をするべきだ」とバーンズ氏は考える。過去の行動が間違っていたと発言したこともプラスだという。「メダルを差し上げたいくらいだ」。

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