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なぜ右傾化する高齢者が目につくか―「特別扱いは悪」の思想

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二つのヒント

 このヒントが二つある。

 第一に、マルクス主義歴史学者で労働運動家ダニエル・ゲランの、パリ5月革命に関する観察だ。

「それは直接行動を、決然たる違法行為を、職場の占拠を武器とみなした。…それはすべてを、すべての既存の思想を、すべての既成の機構を告発した…あらゆる権威は辱められ、また、さらには嘲弄された」。

出典:ダニエル・ゲラン『現代アナキズムの論理』, p8-9.

 ゲランの『現代アナキズムの論理』はパリ5月革命の前後にフランスで広く読まれたが、彼の観察からは当時の若者が、大きな力で支配されることを拒絶した様子がうかがえる。ここに、権威や年長者に黙って従うのをよしとした戦前世代とは異なる革新性があった。

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 もう一つは、現代のネトウヨを取材してきたジャーナリスト安田浩一氏の、右傾化する高齢者に関する「かつては『見下ろす差別』が主流だったが、現在は『見上げる差別』が主流になっている」という考察だ。

 つまり、右傾化する高齢者(だけではないが)に目立つのは、「在日コリアンなどが特別な扱いを受けるのは不公平だ」という認識とみてよい。

ぶれない一線とは

 この二つの考察は、別々のことを言っているようでいて、ある点で近い。それは「特権階級に自分たちが虐げられている」という意識の強さだ。

 この視点からすると、1968年当時に批判の対象となった政治家、巨大企業、メディアなどはもちろん特権階級だが、「特別な扱いを認められている」がゆえに少数者もまたそこに収まる。この考え方には「特別扱いは悪」という思想が鮮明だ。

 右傾化する高齢者を含むこの世代は、少なくとも法的には自由な発言が認められる時代に生まれ育った一方で、多くの人がそこそこ豊かになれた「一億総中流」と呼ばれる時代を生きてきた。このような横並びが当たり前の時代感覚にさらされてきたことが、わずかな不平等にも不満を感じやすい土壌になっている(こうした思想の持ち主は、「もともとビハインドのある人のスタートラインを前にしなければフェアでない」という発想が限りなく薄く、どうかすると「ビハインドのある方が悪い」という思考になりやすいが、恐らく公共交通機関や病院の支払いで高齢者が優遇されることには何も思わないのかもしれない)。

いらすとや

 これに加えて、社会全体で差別に厳しくなったことが、かつてエリート支配を拒絶した人々に「反権威」のスイッチを入れやすくしたとみられる。「少数者には特別な配慮をするべき」、「差別的な言動をしてはいけない」という考え方があらゆる人を拘束するようになったことは、反差別が一種の権威になったことを意味するからだ。これはフェミニストを「全体主義者」と呼ぶ欧米の極右の思考パターンと共通する。

 こうして、かつての進歩的な若者が、あえて差別的な言動をする右傾化した高齢者に転身できたとするなら、そこには「あらゆる権威は辱められ、また、さらには嘲弄された」1968年との、ある種の一貫性を見出せるのである。

長い学生生活

 権威に一方的に従うのを拒絶すること自体は、近代的な「精神的自立」と評してよい。ただし、それは一歩間違えれば、自分自身の判断や考えを絶対視する独善につながる。

 こうして右傾化した高齢者の多くは、(他の世代より)時間的、金銭的な制約が少ないため、気に入らないネット記事を非難罵倒するコメントを長々と書き込んだり、勝手に義侠心に燃えて特定の弁護士の懲戒を求める書類を作成したり、場合によっては平日の昼間からヘイトデモに参加したりすることのハードルが低い。

 それはちょうど、余裕のある大学生だからこそ大学紛争に邁進できたのと同じだ。右傾化する高齢者は、50年の時を経て、長い学生生活を謳歌しているのかもしれない。

※Yahoo!ニュースからの転載

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