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退職金は"年金受け取りより一時金"なワケ

■老後資金の「もうひとつのベース」退職金

公的年金の繰り下げ受給は本当に得かなど、年金の話題が気になる人も多いようです。

老後資金で大きく差がつくのがもうひとつのベースである退職金ですが、退職金を退職時に一括で受け取るのと、年金として受け取るのとでは、どちらが得でしょうか。

図は退職金2000万円を60歳時に全額一時金で受け取る場合と、年金として10年間で分割して受け取る場合について額面と手取りの試算をしたものです。60代前半は年収350万円で働き65歳からは公的年金220万円を受給する想定です。


まず70歳までの額面金額を見ると、一時金受け取りでは4850万円(給与や公的年金を含む)。対して年金受け取りは210万円多い5060万円です。年金受け取りでは、退職金の原資が2%(運用率は会社により異なる)で運用され、その運用益が支給額に上乗せされるからです。

■税金と社会保険料で変わる「手取り収入」

「額が多いなら年金受け取りがよさそうだ」と思いがちですが、「手取り収入」を見ると一時金受け取りのほうが130万円も多くなります。


写真=iStock.com/sculpies

その理由は「税金」と「社会保険料」にあります。

退職金を一時金で受け取ると退職所得として課税対象になりますが、「退職所得控除」が適用され、例えば勤続38年では2060万円までが非課税です。また退職所得には社会保険料がかかりません。

一方、年金受け取りでは税、社会保険料が大きく影響します。退職金の年金受け取りは、税金面で公的年金と同じ扱いです。年金収入には非課税の枠が設けられ、64歳までは年70万円まで、65歳以降は年120万円までは税金がかかりません。65歳以降は厚生年金の支給が開始するので、それだけで非課税枠をオーバー。退職金の年金受け取りで所得が増えれば税負担が重くなるだけではなく、社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)の負担も重くなります。

図のケースの場合、年金受け取りの税・社会保険料(年額)は一時金受け取りに比べて60代前半で21万円、60代後半は47万円多くなり、手取りは一時金受け取りのほうが多くなるのです。

そのほか、年金受け取りにして年収が増えると、医療費の自己負担額が多くなるというデメリットもあります。健康保険には医療費の自己負担に上限があり、それを超えた分が給付される高額療養費制度があります。60代後半で収入が公的年金だけなら1カ月の医療費の自己負担上限は5万7600円ですが、収入が多いと8万円を超えます。

こうしたことを考えると、退職金は年金受け取りより一時金受け取りが有利といえそうです。

2019年の一手:「税金」と「社会保険料」で得する一時金受け取り

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深田晶恵(ふかた・あきえ)
ファイナンシャルプランナー
独立系FP会社・生活設計塾クルー取締役。「すぐに実行できるアドバイスを心がける」がモットー。著書は『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』など多数。

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(ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵 構成=高橋晴美 写真=iStock.com)

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